にんしんSOS東京インタビュー

望まない妊娠で子どもを殺害…助産師たちが相談窓口を開設「お母さんを犯罪者にしたくない」

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望まない妊娠で子どもを殺害…助産師たちが相談窓口を開設「お母さんを犯罪者にしたくない」

今年2月、静岡県で高校生の男女が自宅で出産した乳児を殺害し、逮捕される事件があった。犯行に及んだ理由は、「産まれた子どもをどうしていいか分からなかったため」だという。望まない妊娠によって子どもを殺害、遺棄してしまう事件は、今回だけに限らない。特に未成年の場合、家族にも言えず、妊娠したことを誰にも相談できないまま追い詰められ、事件化してしまうケースが目立つ。

本来祝福されるはずの出産で、不幸な事件が起こってしまうのは、あまりにもやるせない。「お母さんを犯罪者にしたくない」「子どもの遺棄をなくしたい」。そんな思いから、東京の助産師や社会福祉士たちが、望まない妊娠に悩む女性への支援を目的とした相談窓口「にんしんSOS東京」を立ち上げた。開設から約3カ月、これまでにどんな相談があったのか、にんしんSOS東京の理事を務める、株式会社トイトワ代表の伊東由宥子(社会福祉士)さんにお話を伺った。

熊本に寄せられる相談の約3割が関東からのもの

――にんしんSOS東京の開設のきっかけになった出来事とは、どのようなことなのでしょうか。

伊東由宥子さん(以下、伊東):現在、妊娠・出産への支援は、十分とは言うには程遠い状況です。赤ちゃんポストで話題になった熊本県の慈恵病院の、匿名で子どもを預かる「こうのとりのゆりかご」の取り組みは有名ですが、全国的にそういった窓口はまだまだ不足しています。慈恵病院を中心に、熊本には24時間体制の相談窓口が4か所あるのですが、相談者は関東や東北など、全国にまたがるそうです。同県に寄せられる妊娠相談件数は年間6,000件以上にのぼり、うち29%が関東からの相談になります。しかも、そのほとんどが東京であり、近隣で相談を受け付ける窓口の設置を急務に感じた東京の助産師たちが中心となって、にんしんSOS東京が立ち上げられました。

潜在数は実際の妊娠相談件数の3~5倍

――6,000件の約3割ということですと、関東では少なくとも年間1,800件が支援を必要としているということになりますね。相談までに至らない潜在数を含めると、どのくらいの数になると思いますか。

伊東:潜在数は、おそらく実際の相談件数をはるかに超えて、きっと3~5倍にのぼると考えています。にんしんSOS東京では窓口がスタートする前から、すでに相談者とのやりとりが始まっており、窓口を開設した12月で10件、1月で12件、2月で25件の相談がありました。これまでの相談者は10代が10人弱、20代、30代が各20人程度、40代、50代が数名でした。10代の中には高校生、大学生も含まれています。今後の計画としては、立ち上げ3年で年間1,800件の新規ケースに対応できるよう、国家資格を有する相談員を増やし、段階的に相談時間も伸ばしていく予定です。

受診や中絶の付き添い、行政手続きなどの同行支援も

――にんしんSOS東京では、どのような支援を受けることができるのでしょうか。

伊東:電話相談を16時から24時の間、年中無休で受け付けています。メールでの対応も行っていますが、複雑な背景があると思われる場合は電話相談を促し、できるだけ相談者と繋がるように心がけています。相談では何より本人の意向を大切にするスタンスで、こちらが解決するのではなく、本人が納得して道を選ぶまでしっかり寄り添い、自ら解決できるように関わります。

本人が希望する場合や必要なときは、同行支援も行います。病院や行政の窓口では、未成年だったり、上手く説明できなかったりすると、適当にあしらわれてしまうことがあるので、同行支援は重要なものと考えています。病院の窓口で出産費用の相談をする際に事情を説明したり、精神的・肉体的にダメージのある中絶手術の相談や受診に付き添ったりすることもあります。

過去には、夫のDVから逃れるため保護施設まで同行し、本人に代わって自宅の荷物を運び出したこともありました。家庭でネグレクトを受けていた10代の子の妊娠相談では、世帯分離の必要性があったので、行政の窓口で専門家として事情を説明し、手続きをとるなど、自立支援も手伝いました。病院や弁護士、行政の生活保護相談窓口、保健センター、社会福祉協議会、子ども家庭支援センター、警察、児童相談所など、さまざまな機関と連携をとりながら、相談者の問題を解決していきたいと思っています。

相談者の中には、行政や病院、警察などである種の2次被害にあう方もいます。病院などで適切な対応を受けられず、消極的になってしまうケースがあり、そういった場合にも同行支援で対応しています。

深刻な出産難民の問題も

――行政や病院での2次被害というのは、どういったものなのでしょうか。

伊東:産婦人科医不足からか、人気の病院だと妊娠8週目で分娩受付が終了してしまうところもあり、大きな総合病院のようなところでも16週~20週ごろまでで分娩予約を締め切ってしまう病院が多いようです。合併症があると断られたり、あるいは逆に、ハイリスク妊産婦を優先して受けているので健康な人はよそに行ってくださいと言われるなど、出産難民になる事態も少なくありません。

そもそも思いがけない妊娠では、妊娠発覚後しばらく産むのか産まないのかという根本的なところで悩む時間を要するため、こうした病院の分娩予約制度も、妊婦健診未受診の方を作ってしまう要因の1つになっています。産む産まないに悩むのは、シングルの方が多く、不倫で妊娠してしまった方や、結婚詐欺の被害に遭った方、知的障害のある方のケースもありましたが、結婚している方も中にはいらっしゃいました。

一方、10代の子の場合、病院で診察を受けるには保険証を持って行かなくてはならず、親に妊娠がばれるのを恐れて病院には行きません。周囲に知られず何とかしたいという思いの子が我々の元に相談に来るので、未受診のケースがほとんどなのです。

日本の性教育は不十分で抽象的すぎる

――妊娠したのに病院にも行けないというのは、問題だと思います。10代の子の妊娠にはどんなサポートが必要だと考えますか。

伊東: 妊娠出産は人生に大きく関わる出来事であるのにも関わらず、性の話を親とできない子が多く、にんしんSOS東京に相談にくる子たちは、妊娠しても親に相談できずに悩んでいるケースばかりです。10代の場合は特に問題をひとりで抱えてしまう傾向があり、そういった子たちに正しい情報と支援を届ける必要を感じます。

そして10代の子の妊娠でまず一番に問題なのが、性教育です。日本の学校教育における性教育は不十分で、あまりに抽象的すぎます。妊娠や出産に関する肝心なところを十分教えられていないので、大切なことを理解できておらず、間違った情報を鵜呑みにして、避妊についても適切な知識を持ち実行することができていません。思いがけない妊娠を防ぐためにはどうしたら良いのかを、10代の頃からしっかり考えられるように、にんしんSOS東京では、性教育のあり方についても取り組んでいきたいと考えています。

■関連リンク
にんしんSOS東京
電話番号:03-4285-9870
※相談時間は16:00~24:00(年中無休)
メール相談:こちらから

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