『最高の花婿』フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督インタビュー

娘4人がみんな国際結婚で大騒動に… フランスの映画監督が“宗教問題”を語る

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娘4人がみんな国際結婚で大騒動に… フランスの映画監督が“宗教問題”を語る

日本でも珍しくない国際結婚。一見、華やかに見えますが、言葉、慣習、生まれ育った生活環境が違う者同士の結婚は大変な部分もあります。そんな国際結婚の苦労をコミカルに描いたのが、フランス映画『最高の花婿』です。

フランスの片田舎に住む夫婦には4人の娘がおり、そのうち3人は国際結婚。独身の末娘だけには、カトリック信者のフランス人と結婚してほしいと願っていましたが、彼女が連れて来た恋人は、コートジボワールの青年だった……という、娘たちが全員、国際結婚をしたために起こる大騒動をコミカルに描いた作品です。

『最高の花婿』より

『最高の花婿』より

この映画の監督&脚本のフィリップ・ドゥ・ショーヴロン氏は「世界で一番、国際結婚が多い国はフランス」という統計を目にして、この物語を書きあげたそうです。個人主義のイメージが強いフランス人が、外国人との結婚をどう受け止めるのか、国際結婚のいちばんの大きな壁、宗教が国際結婚にもたらす障壁とは……。ショーヴロン監督にお話しを伺いました。

フランスは世界でいちばん国際結婚が多い

――ショーヴロン監督は「世界で一番国際結婚が多いのがフランス」という統計を見て、映画化のヒントを得たそうですが、具体的な経緯を教えてください。

ショーヴロン監督(以下、ショーヴロン):ある統計資料によると、フランスは人種間混合結婚が世界一。また別の調査資料では、フランスでは20%が異なった民族、人種、宗教間での結婚という統計結果が出ているんだ。これがフランス以外のヨーロッパ諸国では3%に過ぎないんだよ。僕の実家は、映画の主人公であるヴェルヌイユ家と同じカトリック信者だが、僕の兄弟はアフリカ北部のマグレブ系の女性と結婚したし、実は僕自身もアフリカ系の女性と結婚する予定なんだ。

――おめでとうございます! でもなぜフランスは国際結婚が多いのでしょう?

ショーヴロン:フランスには移民を受け入れる土壌があるからね。例えば英国だと異人種コミュニティがあって、英国人と移民が一緒に学んだりする機会は少ないけれど、フランスは同化政策があるから、学校でも異人種同士と共に学ばせることに積極的だ。だから違う民族、違う宗教の者同士が恋人関係になったり、結婚したりする機会は多くなる。そういう理由があるだろうね。

宗教の違う相手を“異分子”と見てしまう

――やはり宗教の違う者同士の結婚は難しいのでしょうか? この映画でもユダヤ系の婿の家の慣例に従って割礼をするシーンで、娘のフランス人のご両親はとまどっていましたが。

ショーヴロン:僕が思うに、結婚そのものが大変なんだよ。他人同士が家庭を持つのだから。異人種、宗教の違いがあれば、もっと大変になって当然だよね。

2,30年前は、フランスでも国際結婚はこれほど多くなかったんだが、今や4人に1人が国際結婚しているくらい、珍しいことじゃなくなった。何でも受け入れてみようというオープンな家庭なら、国際結婚を乗り越えられるかもしれない。でもこの映画で描かれているような片田舎に住むブルジョアの家庭では難しいよ。ヴェルヌイユ家のお父さんとお母さんの時代には国際結婚なんて普通じゃなかったんだから。

フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督

――国際結婚における宗教問題は、フランスではよくあることなのですか?

ショーヴロン:まあ、あるね。やはりみんな“自分たちと似た人”と家族になりたいんだよ。宗教が違うと“異分子”という印象を持たれやすいからね。でも今は、宗教が違っても結婚しようとする恋人同士は多いかわけだから、受け入れる土壌はできているんだ。今後はそれほど躊躇しないかもしれない。でも、そこにいくらかの緊張感は生まれてくるとは思うよ。

国際結婚がうまくいくコツは“話をつきつめない”こと

『最高の花婿』より

――映画『最高の花婿』では、国際結婚を乗り越えるひとつの方法として、共に食事をすることを大切にしています。違いを徹底的に話し合って解決するのではなく、一緒に食事をしたり、困っていたら助けたりという人付き合いの基本的なことが重要だと描かれていますが、異文化コミュニケーションについて監督はどうお考えですか?

ショーヴロン:違う国の人との関係をうまくいかせるポイントはね、あまり深く話さないこと。つきつめていっちゃダメだよ、100%わかりあえるはずないんだから。あと政治の話もあまり深くしないほうがいいね。食事を大切にしているのは、食事を共にすると同胞意識が生まれるからだ。距離が縮まるだろう、そこがいい。アルコールが入ると頭脳が明晰になる場合もあるしね(笑)。

――確かに宗教や政治の話はしない方がいいとは言いますよね。

ショーヴロン:あとは異文化コミュニケーションで大切なのは笑いだね。この映画も、シリアスドラマとして描いていたら、観客は受け止められなかったかもしれない。もともと僕はコメディしか作れないが、笑いは人を結びつける力があるんだ。この映画は、どの国でも、同じシーンで笑いが起きて、そこがいいなあと思う。笑いは人種を超えて、人と人を結びつける力があるんだ。

人種差別をフェアに描いた

――またこの映画では、白人からみた差別だけでなく、黒人から見た差別も描いていて、とてもフェアな印象を受けました。

ショーヴロン:そこは実に重要だったね。差別はよくないとは思うけど、誰だってネガティブな感情は持っているだろう。白人が黒人に対して、また逆もあるはずなんだ。だから双方のお互いへのネガティブな感情も映画には入れたかった。

――この映画のような国際結婚がフランスで増えているということは、共感する人も多かったのでは? 監督の耳にそういったファンの声は届いていますか。

ショーヴロン:この映画の上映会のあと、ある夫婦は僕のところに来て感想を述べてくれたんだ。“自分たちの家族の問題と一緒です。私たちの物語のようでした”と。だから僕は「うまくいっていますか?」と聞いたら、その夫婦は「いまだ悪夢のようです……」と言っていたよ(笑)

人種の違いや宗教の違いから起こる騒動をコメディとして描き、フランスの国際結婚の“あるある”を詰め込んだ同作。監督の言うように、つきつめて考えれば考えるほど、互いの関係は平行線で、交わることは困難。「相手の国のことを何もかも理解しよう」と意気込むのではなく、お互いのいいところを認め、「同じギャグで笑えるなんて最高だよね」という軽いノリで、明るく関わっていったほうがいいのかもしれません。生真面目な日本人は、つきつめて考えがちですが、「これくらい肩の力を抜いて国際結婚に臨んでもいいかも」と感じられる作品でした。

■公開情報
映画『最高の花婿』公式サイト
2016年3月19日よりYEBIS GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
画層クレジット:(C)2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

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