37万人ものフォロワーを持つ男性保育士「てぃ先生」へのインタビュー後編。

保育士が退職する理由のひとつには「低賃金」があると言われている。実際、保育士の転職支援サービスを展開するウェルクスが、保育士や幼稚園教諭らに向けて「現在の年収に満足しているか」とのアンケートを行った結果、92%が「満足していない」と回答した(※2015年1~2月、5~6月にかけて実施。回答者数は200人で、内訳は「保育士」が87.5%、「幼稚園教諭」が10%、「その他保育教育関連等」が2.5%。平均年齢は32.8歳で、女性が97%を占める)。

てぃ先生は、こうした問題に何を思うのか。保育現場にまつわる問題点とともに、Twitterにて保育の日常を発信する意義を聞いた。
【前編はこちら】保育士の92%が「現在に満足していない」 フォロワー37万人のてぃ先生の仕事との向き合い方

保育士はサラリーマンと何も変わらない

――保育士さんは、前編で話した低賃金や待遇の問題から、離職率が相当高いと聞きます。実際に働いていて退職者が多いと感じることはありますか?

てぃ先生:やはり女性は結婚や出産をすると、辞める方が多いです。資格の強みとして、いったん辞めても子育てが落ち着いたら戻ってこられる、というのがあるので。そのほかの場合だと、低賃金というよりも人間関係が原因で辞めていく方が多いと思います。「同僚とウマが合わない」とか「園長先生や主任の先生と合わない」とか、そもそも「園の方針と合わない」とか。

正直、園に入るときって、書面に書かれている条件だけでは園の雰囲気はわからないんです。保育園は園の方針によって、子供との接し方が大きく変わり、たとえば子供が悪いことをしたら、「壁に向かって2分間ジッと立っていなさい」などと言うところもあります。働いてみて初めて実情を知り、自分と教育方針が合わないストレスを理由に辞める人は少なくないですね。

――人気の保育園だと、やっぱり競争率が激しくなるんですか?

てぃ先生:それはあると思います。一方で人気がないところは、1年中保育士を募集していますよね。なかには、就職して3ヶ月続いたら数万円の手当がもらえたり、紹介者がいる場合には紹介者にも手当金が支払われたりする園もあるぐらい。

――離職率の高さを物語っていますね。てぃ先生が保育士を目指したキッカケは、何だったんですか?

てぃ先生:サラリーマンになりたくなかったので、僕ができるサラリーマン以外の職業って何だろうと考えて、「子供が好きだから保育士になろうかな」というのが最初のキッカケ。でも保育園に入って「あれ、保育士ってサラリーマンじゃん」って気づきました(笑)。

保育園には「中間管理職」的な存在が不足している

――保育士として働いているなかで感じる保育園の問題点は、どんなところでしょうか?

てぃ先生:僕が保育士として勤めているなかで感じるのは、圧倒的に30歳前後の保育士が少ないということです。大体20代後半から30歳くらいまでの間に結婚して退職し、戻ってくるのは40歳前後とか。

そうすると、若い保育士とベテランの保育士の間にギャップが生まれてしまうんですよね。若い保育士は、園の方針に疑問を持ちながらガマンしてやっているのに対し、ベテランの保育士は文句を言いながらも保身的なので、園の方針に従っている。本来なら、その間の保育士が中間管理職の役割を果たして、両者をうまくまとめてくれるものだと思うんですが、そこがいないので人間関係がギクシャクしやすいような気がしています。

――一般企業でも、同じようなことが起こり得るかもしれませんね。

てぃ先生:でも、一般企業だと30代の男性はいますよね。働き盛りの。保育園は女性社会なので、男性がほとんどいないんです。

――なるほど。女性社会のなかにいて、やりづらさを感じることはありますか?

てぃ先生:まぁ、気は遣いますよね(笑)。男性保育士は、各園に1人はいたほうがいいんじゃないかなと思います。女性ばかりのなかに男性が1人いるだけで、空気が変わるじゃないですか。実際、職員会議や休憩室での雰囲気も男性がいると違いますしね。なんとなく、男性がいることでピシッとするというか。

あとは男性保育士が、抜けている30代の保育士の役割を果たすこともできるかなと。自然と周りの意見が男性に集まることが多いので、必然的にやらなきゃいけない立場になるんですけどね。でも、そういう人がいないと若い保育士さんは、どんどん辞めていってしまうので、僕は積極的に意見を聞いて共感するように心がけています。

Twitterを通して保育士は楽しい仕事だと伝えたい

――子どもたちの様子などを綴ったTwitterは、なんのために行っているんですか?

てぃ先生:世の中に出ている保育園のニュースって、暗い話題ばかりじゃないですか。子どもへの虐待とか、待機児童の問題とか、保育士の待遇が悪いとか。でも、子どもたちはかわいくて保育士の仕事は楽しいし、保育園はステキなところなので、1人ぐらい楽しい部分だけを伝えるコンテンツがあってもいいのかなと思いました。最近だと、「トイレに行くのがヤダ」と言って断固拒否していた子をうまく誘導できて嬉しかったですね(笑)。そんな些細な日々です。

――2014年にはツイートが書籍化されたり、翌年には保育の実話を基にしたマンガが発売されたりと、ここまで影響力を持つようになると、やっぱり意識の変化があるものですか?

てぃ先生:そうですね。Twitterを始めた当時は、ここまで大きくなると思っていなかったので、たまに怖くなります。やっぱり発言には気を遣うようになりました。

――フォロワーは若い女性が多いんでしょうか?

てぃ先生:返信を送ってきてくれる方は、若い女性が多いですね。男性はほとんどいないと思います。男性に向けて、「てぃ先生をフォローすると、子ども好きだと思われて女性にモテるかもしれないぞ」ってつぶやきたいんですが、それもどうかなと思ってやめました(笑)。

――子どもに好かれるコツって、何かありますか?

てぃ先生:否定しないことが一番だと思います。園でもよくあるんですが、子ども同士でケンカをしているとき、相手を叩いた子と叩かれて泣いている子がいたら、一方的に叩いた子供だけを叱ってはダメです。叩いた子には、叩くだけの理由があります。たとえば、あとで遊ぼうと思って棚の上に隠しておいたオモチャを別の子に取られてしまったとか、大人の頭では考えつかないような理由なんですよ。まずは怒らずに話を聞いて理解してあげることが大切。そうすることで、子供との信頼関係ができていきます。

小林香織

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