保育の日常を綴ったツイートで人気を博し、37万人ものフォロワーを持つ男性保育士「てぃ先生」。彼のツイートからは、心が和む子どもたちとのふれあいが伝わってくる。一方で、保育は現状、さまざまな問題を抱えている。

例えば厚生労働相は、平成28年4月から、保育士の資格を持たない人でも認可保育所で保育に携わることができる方針を打ち出した。目的は、児童数の少ない朝と夕方以降のみ無資格者を配置し、資格保育者の負担を軽減・保育の質を向上させること。雇う人材には「保育施設などで十分な業務経験を有する者」「子育て支援員研修を修了した者」「家庭的保育者」という条件がある。しかし、子どもを持つ両親や現役保育士などからは「無資格の人に子供を預けたくない」「保育士をバカにするな」といった批判の声が聞かれた。

そんななか、てぃ先生は「無資格者の保育への加入はアリだと思う」と断言。保育の現場に身を置くてぃ先生に、リアルな意見を聞いた。

より良い保育をするための措置を否定するのはおかしい

――てぃ先生は昨年末、Twitterで、厚労省が打ち出した無資格保育者の育児への加入について肯定的な意見を発信されました。その考えは今も変わりませんか?

てぃ先生:そうですね。今の保育の現状を良くするための政策なので、はなから否定する気はありません。厚労省が言っていることも理解できますし、課題も出てくるでしょうが、「とにかく一度、やってみたらどうか」と考えています。

――子供を持つ親たちの「無資格の人に子供を預けるのは心配」という声についてはどう思われますか。

てぃ先生:お子さんのご両親が心配されるのはわかります。そもそも大事なお子さんを「他人」に預けるのって不安ですよね。「保育士は資格という信頼の指標があるけど、無資格の人の場合はどこを信用すればいいのだろう」と不安になるのはしかたのないことかもしれません。

でも、中には肯定的な親御さんもいて、「先生たち大変そうだから、これで少しでも良くなるといいね」といった声をいただくこともありますよ。今回の政策は、まさにこの部分のメリットが大きいはず。

――「保育士をバカにするな」という現役保育士からの批判については?

この政策を否定している保育士たちは、そもそも内容をきちんと把握していない人が多いと思います。資格に意味がなくなる、というのは誤解です。まず、親御さんたちからの信頼があるし、資格を持っていないと、一番の核となる日中の保育業務に携われないわけですから。さらに言えば、資格を持っているということは、取得までに身につけてきた専門的な知識や経験があるはずですし、待遇などにも差が出てきます。意味がなくなるなんてことは絶対にないです。

無資格者を否定するのは、お父さんやお母さんを否定するのと同じ

――では、現時点で「無資格保育者の保育への加入」に問題点があるとしたら、どんなことでしょうか? 無資格者であっても、きちんと研修を受ければ問題なくお世話ができると思われますか?

てぃ先生:お父さんやお母さんだって資格なんてないけど、お世話してるじゃないですか。無資格者を否定することは、お父さんやお母さんを否定することと同じじゃないかなと僕は思います。

保育士の目線での懸念点は、「無資格者に預けるのは心配」という先入観があるため、何かトラブルが起きたときに「ほらね、やっぱり無責任じゃん」という雰囲気になってしまうのではないかと。そうなると、無資格の先生たちがいづらくなって辞めてしまうのでは、という心配はあります。

――現場で働いていて「手が足りない」と思うことは多いんですか?

てぃ先生:日中に手が足りないと思うことはほとんどありません。ただやはり、朝夕の時間帯や土曜はお子さんが極端に少なくても保育士は出なければならないので、その辺のフォローをしてほしいと思うことはありますね。文字通り、朝から晩まで保育園にいることになりますから。あとは、書類の作成や運動会の準備といった、子どもたちと接する以外の業務が大変なんですよ。それをする時間の確保のために無資格の先生に保育を手伝ってもらえたらいいなと思いますし、園全体で保育の質の底上げができると思います。

保育士の仕事にはボトルネックがある

――保育士さんの低賃金も課題として挙がっていて、ネットでは24歳2年目で手取りが12万円なんて意見もありました。てぃ先生も、保育士は賃金が低いと感じますか?

てぃ先生:保育士の給料は施設や企業によって大きく異なっていて、それこそ12万なんていうところもあれば、30歳で40万円もらっているとか、ボーナスを数ヶ月分もらっているところもあります。

ただ、誰しもが高給を狙える仕事ではない、というのは事実です。それはなぜか。一般企業で月に40万稼ごうと思ったら成果を上げたり数字を残したりするわけですが、保育士は業務の性質上、できる仕事に限界がありますよね。1人の保育士が同時に面倒を見られる子供の人数は規定で決まっていますし、大きく稼ぐには、自分が園長になって新しい施設を作るくらいしかないと思います。

もうひとつ、保育士の給料が安いと言う人たちに思うのは、たとえば25万〜30万くらいの月給を求めているとして、「みんながみんな、その金額にふさわしい価値のある仕事をしているのかな?」ということ。1人じゃだめなんです。保育業界全体の質を上げなければいけない。権利を主張する前に、講習を受けて保育の知識をつけるなどの努力をして、保育の質のグレードアップを図っていけば、自ずと希望するような道が見えてくるのではないかと思います。

【後編はこちら】保育園には「中間管理職」が足りない フォロワー37万人の保育士・てぃ先生が考える、現場の問題点

小林香織

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