コマチ家具田野口淳子さんインタビュー

日本人はインテリアを諦めている ちゃぶ台と座布団の呪縛を解く、家具の思考術

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日本人はインテリアを諦めている ちゃぶ台と座布団の呪縛を解く、家具の思考術

部屋のトータルプロデュースを行う英国アンティーク家具専門店「コマチ家具」で専務取締役・インテリアデザイナーを務める田野口淳子さんへのインタビュー後編。前半では「素敵な空間は住む人を幸せにしてくれる」という田野口さんのインテリアへの思いや、病気をきっかけに、自分にとって一番居心地のいい場所を追い求め始めたという知られざるストーリーを聞いた。後半では、自慢の住まいがなかなか見つけられない“住まい難民”が多い理由や、大好きな空間を作るためのインテリア選びの心得を伺う。

【前編はこちら】和室が貴族のティールームに大変身 インテリア業界の駆け込み寺、コマチ家具に聞く

コマチ家具施工例ビフォー。ごく普通のマンションの玄関

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アフター。ステンドグラスはこの玄関に合わせたオリジナル

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インテリアを学習する機会が少なすぎる

――「自分の部屋が大好き!」という人は、なかなかいないように思います。私自身、乱雑な部屋を見てげんなりすることも多いですし……。

田野口淳子さん(以下、田野口)
:本当は皆さん、「自分のスタイル=個性」を持っているんです。「こうしたい」「こうありたい」という想いがある。ですから本当は、好みやライフスタイルに合わせて、コーディネートしないといけません。でも、やり方が分からないんですよ。それは、ジャパニーズスタイルの住まいと西洋スタイルの住まいの違いにあります。

ジャパニーズスタイルは非常にシンプルです。6畳、8畳、12畳という広さの中で、照明は真ん中にあります。座卓やこたつといった類の家具も、自然と照明の下に設置されますよね。その周りに座る人数分座布団を置けばOKですし、使ったら重ねておいてもよし、押入れにしまってもよし。とてもフレキシブルです。

一方、洋間の場合は、テーブルは真ん中だという決めつけはなく、壁につけるケースもあります。おまけに椅子をしまっておくことができませんから、椅子を置いたら、それでもういっぱいいっぱいだったりします。和室に比べて不便なんです。

ジャパニーズ・スタイルという呪縛

――和と洋で、インテリアの置き方が全く違うんですね。

田野口:日本人はジャパニーズスタイルに慣れきっていて、西洋スタイルの歴史が浅いので、「不便だけど、こんなもんだろう」と突き詰めません。間取りや家族の構成人数、部屋の広さなどに応じた決め方はしますが、自分の好みが介在する余地がないんですね。

ですから、私のインテリアレッスンの中では「テーブルの向こうに見える背景作り」などといったワンポイントを教えています。テーブルと椅子を見つつ、さらにその後ろに見える背景を考えるんです。背景が壁だけだと殺風景ですよね。

そうやって本当は自分で気がつくことができればよいのですが、インテリアは学習する機会が少ないので、なかなかそうはいかないんです。

――インテリアを学習する機会とは、どういうものでしょう?

田野口:ファッションでたとえると、購入するつもりがないにしても、興味があればお店の中に入って吟味し、好みに合えば買いますよね。それで学習できるんです。ファッション雑誌も豊富にありますし。

ところがインテリアは、人の家のものを見ることができません。恥ずかしくて、おいそれと人に自宅を見せる気にはなれませんから。加えて、ファッションは購入してみて「失敗したな」と感じたら、クローゼットにしまっておいて違うコーディネートや違うシーンで着れば済みますが、インテリアはしまえません。成功するか失敗するかの2通りです。おまけに高いときていますから、学習できないんです。本当に伸びない分野だなと思います。

「いいモノ」を見る目を養うこと

――家を「居心地のいい空間」にするインテリア選びのために、まず私達がやるべきことはなんでしょう?

田野口:とにかく、値段を気にせず色んなインテリアを見た方がいいと思います。食事処では料理をオーダーして食べないと店を出られませんが、家具屋さんはいくらでも見ることができますからね。その中で、「自分が何を素敵だと感じるか」を模索してください。買えるか買えないかは後回し。まずはいいモノを知って、「自分探し」をしてほしいと思います。

ただ、それだけだとまだ「テーブルがいい」「照明がいい」といったパーツの部分しか見ていないので、その後、または並行しながら「自分の部屋とどう合わせるか」という俯瞰的な目を養うことです。「まずは照明」「次はカーテン」という風に、意識を変えていくことで、部屋をトータルで見られるようになります。

また、10年後や20年後、自分も年を取っていくんだと思って、先々まで見据えてインテリアを選んだ方がいいと思います。たとえば、「仕立ては非常にいいけれどダサい服」と「作りはお粗末だけどかっこいい服」だったら、若い人はファッションだったら後者を選びますよね? でも、インテリアは何十年も使うものです。なので、少し背伸びをしてみるとよいかもしれませんね。

インテリアは人生を変える

――インテリアを見極める目を養い、大好きな空間を作れれば、人生が変わりそうですね。

田野口:はい。私がリフォームを担当させていただいたあるお得意様は、リフォームしたご自宅で「コシーナ・デ・ティナ」というスペインバルのレストランを開いておられます。

主寝室をリフォームして1年経った頃に、「リビングもリフォームしてほしい」と依頼され、1階のリビングダイニングと洗面所・トイレ・玄関などを素敵にリフォームさせていただいたのですが、それから1年後、今度は「ここでレストランをやりたい」とおっしゃったんです。もともと奥様がお店を開きたいという願望をお持ちだったそうで、お一人で切り盛りされているのでこじんまりとしていますし、駅からも離れているのですが、雰囲気のいい「癒しの空間」ということでとても繁盛していると聞いています。

「古い」も「狭い」も個性です。答えはひとつじゃない。「もうやだな」と諦めてずっとそこに住むのか、エネルギーも時間もお金もかかるかもしれないけれど、意識して部屋を変えていくのか。その判断が、自宅を好きになれるかの分水嶺なんです。それに気がついてもらえたら嬉しいなと思います。

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