仕事はしっかりこなせるのに、恋愛になると過度に感情的になってしまう。社会に出て、経済的自立をしたはずが、日々のストレスによってプライベートはむしろ依存が強まってしまった。そんな人は多くいる。

恋愛において、相手にぶつかりすぎる行為は多くの場合恋愛の寿命を縮めることになる。多くの恋愛を見てきたライターの亀山早苗さんは、「自分に自信がない20代に起こりやすい現象」と“恋愛だけメンヘラ”の症状を分析する。(編集部)

「試す女」から男は、いつかは逃げる

「恋は楽しい」と、誰もが思いがち。でも、実際、恋愛してみると、かえって感情の振れ幅が大きくなってつらくなる……。そんなふうに感じたことはないだろうか。

「20歳のころつきあった彼に二股をかけられていたんですよね。それ以来、彼ができると、不安でたまらなくなるんです。この人も私を騙しているんじゃないか、と。それでつい、彼を試すようなことをしてしまう。夜中に電話して、『寂しくて眠れない。今から来て』と言ってみたり、デート中に不意にいなくなってみたり。でも結局、『リカのわがままについていけない』と言われて……」

リカさん(仮名=以下同・27歳)は、そう話してくれた。彼女はとある金融機関に勤めるキャリア系女子。仕事では、自分の不安などまったく見せず、いつも前向きで、元気に働いているという。その分、恋愛では自分の不安定さをさらけ出す。

相手が自分を心から心配してくれるのか。ひいては、本当に愛してくれているのか。そこに自信がもてないのだろう。どんなに言葉を尽くされても、「100パーセント愛されているかどうか」を計ることはできない。だから、いろいろ試してしまう。こういった女性は少なからずいるようだ。

どんどん高くなる要求のハードル

ただ、「試すような行為」をされれば、多くの男性は腹を立てる。

「オレの気持ちをどうしてわかってもらえないんだろう」
「オレが信用できないのか」

ついには逆ギレする男が出てくるのも理解できる。

まだ恋愛が始まったばかりのころは、男もいい顔をしたいから女のわがままを受け入れる。ひとつハードルをクリアすると、女性はハードルをさらに上げてくる。そしてどこまでも高いハードルを男は跳べと言われ続ける。

男にとって、それは地獄の始まりだ。

「そんな女からは、いつか男は逃げますよ。我慢の限界があるから」
30代の男性は、昔を振り返ってそう言った。

恋愛が「人間関係」だということを忘れてしまう

相手のことを好きであれば、嫉妬心が出てくるのも当然。だが、その嫉妬心を自分の中でどんどん肥大化させてしまう女性がいる。

「彼が私の友だちとデキているんじゃないかと疑ったことがありました。いろんな断片的な情報をつなぎあわせ、ふたりのSNSを日々監視して、やっぱりこのふたり、絶対デキてると思い込んでしまった。彼が、友だちと焼き肉食べてるとメッセージをくれた日、彼女のSNSを見たら、『今日は焼き肉~』と肉の写真が上がっていたんですよね。そんなことがいくつかあって、私の中で点が線になった。あるとき、彼にそれを泣きながら言ったら、『なにそれ。おかしいんじゃないの』ときょとんとしてた」

ミエさん(28歳)の体験だ。彼にすべてを説明したら、彼は露骨にイヤな顔をしたという。

「鬱陶しい女だと思われたんでしょうね。それがまたショックで、自分で自分がわからなくなってしまった。会社帰りの彼を尾行したり、出張に行くという彼を仕事を休んで張り込みに行ったり。まるで探偵みたいでした。それが彼にバレて、とうとうフラれました。フラれた衝撃で、ますます精神的なバランスを失い、生理も来なくなって病院に通うはめに」

それから4年。今はようやく当時を振り返ることができるようになった。

「恋愛って“関係”なのに、私は関係を育もうとしなかった。目の前の彼より、SNSから流れて来る断片的な情報を勝手な思い込みでつなぎあわせて。嫉妬しているのは、彼のことが大好きだからだ、私には嫉妬する権利がある、なんて思っていました」

恋愛感情は、ときに理性を吹き飛ばす。もちろん、それほど相手を好きであることは悪いことではないのだが、自分の目で、感覚で「彼」という人間をきちんとつかまないと、無用な感情に押しつぶされてしまう。

昔の人はこんなことを言った。

「焼き餅は遠火で焼けよ 焼く人の 胸も焦がさず味わいもよし」

「ありのままを受け入れて」は間違っている?

「体の中に相手の体の一部を受け入れる側の女性は、彼に対して、自分のすべてをさらけ出してもいいのだと思ってしまうのでしょうか」

そう言った26歳の女性がいる。恋愛関係にある相手には本音で話したほうがいいとか、自分のありのままを受け入れてくれる相手でなければ恋愛しないほうがいいとか、いろいろな情報が行き交っているだけに、そんなふうに思ってしまうのだろう。

だが、恋愛も人間関係のひとつ。自分にさまざまな感情があるように、相手にもいろいろな気持ちがある。何もかも知りたいのが、恋愛感情のなせる欲求だが、人はおそらく、一生かかっても他人の気持ちなどわかりはしない。自分自身の気持ちさえ、ときおり把握できなくなるのだから。

「私は彼に私を全面的に認めて、受け入れてほしい。私はどんな彼も受け入れる。お互いにそれができるのが恋愛なんじゃないでしょうか」

シホさん(29歳)は、挑むようにそう言った。人間には承認欲求がある。誰かに認めてほしい、自分のすべてを受け止めてほしい、と。ただ、恋愛相手にそれを望むのはむずかしいかもしれない。また、全面的に認めていることをどうやって証明できるのだろうか。それは結果的に、また彼を試すことにつながっていくのではないだろうか。

「自立」と一言で片づけるのは簡単だが、それは何を指すのだろうか。経済的にひとりで暮らしていけることなのか、「おひとりさま」が楽しめることなのか。個人的には、「自分で自分を、ま、いいかとゆるく認められること」ではないかと思っている。

人間は、いつでもどこでも、実は「ありのまま」なのではないか。無理していい子ぶっている自分も、ひとりで毒を吐いている自分も、嫉妬に苦しむ自分も。どんな自分も、「ま、これはこれでしかたないよね」と思えれば、他人に向かって刃を投げつけるようなことをしたり、愛情を試したりはしないのではないだろうか。

恋愛は異文化交流

恋愛はジェットコースターに乗るようなもの。環境も価値観も違う相手との関係なのだから、ある種の異文化交流なのである。理解するには時間がかかる。その過程を楽しむのが恋愛なのだ。

彼に対して神経を尖らせると、それはそのまま自分に返ってくる。20代のうちは、自分に自信がなくて当然。だから恋愛においても、なかなか彼との心の隙間が埋まらないとか、彼に本当に愛されているかどうかわからないなどの悩みが焦りを生んでいく。だが、年齢を経るとわかると思う。人間なんて、いくつになっても自信などもてるものではないのだということが。そのとき、ゆるく自分を認められないと、他人に対して意地の悪い気持ちだけが育っていってしまうものなのだ。

仕事や友だち関係はちゃんとできるのに、恋愛だけメンヘラ。そんな状態に陥っているなら、もう一度、自分自身のありようを見つめ直してみたほうがいいかもしれない。

亀山早苗

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