2015年秋から渋谷区・世田谷区にて開始した「パートナーシップ証明書」を発行する制度。法律上の夫婦としては認められないが、住宅ローンや生命保険において(民間企業が対応する場合は)パートナーとしてのサービスが受けられるという利点がある。開始当時は、元タカラジェンヌの東小雪さんが認定第1号となったことがメディアで大きく報じられた。

証明書を発行するためには、「パートナーシップ合意契約」と「任意後見契約」を作成することが条件になる。この「任意後見契約」で、同性パートナーを指定した場合に、手術の同意までは委託されないことがわかった。どういった問題が生じるのか、東京都はどう対応したのか、ライターの渋井哲也さんが解説する。

LGBTの課題解決のための協議会は満員に

「市民と行政の協議会 東京都における性的指向および性自認に関する課題解決のために」が1月27日、都議会議事堂で開かれました。同協議会は超党派の都議会議員がよびかけたものです。市民側はLGBT法連合会などが実行委員会となりました。会場は立ち見が出るほど満員でした。

この会合では、市民側から質問や意見、提案が出されました。それに都側が答えるという形をとりました。この会合では、渋谷区や世田谷区が発行するパートナシップ証明書については直接は触れなかったのですが、気になった問題がありました。それは「任意後見人」のことです。

そもそも「任意後見人」とは何か

渋谷区では「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」で、戸籍上同じ性別の二者間の社会生活における関係を「パートナーシップ」と定義しています。その証明書の発行には、公正証書を二枚作成することが条件となっています。

一つは「パートナーシップ合意契約」です。その中には、必須条件として「両当事者が愛情と信頼に基づく真摯な関係であること」「両当事者が同居し、共同生活においてお互いに責任を持って協力し、及びその共同生活に必要な費用を分担する義務があること」を明記することになっています。

もう一つが「任意後見契約」です。認知症など本人の判断能力が十分ではなくなったとき、自宅などの不動案や預貯金、年金の管理、税金や公共料金の支払いなどを委託できます。また、要介護認定に関する手続きや介護サービスでの契約締結、入院手続き、生活費の送金など、介護や生活面についても委託できます。

任意後見人は、家族より優先されない

ただし、都側から「任意後見契約」ではカバーしきれない範囲があることが説明されました。参加者から「同性パートナーを成年後見人に指定した場合、(狭い意味での)「家族」よりも優先されるのか?」との質問が出されましたが、答えは「ノー」でした。

厚労省の「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、意思決定の代行者としての「家族」を「法的な意味での親族関係だけでなく、広い範囲の人」を指しています。しかし、都側は「成年後見人は手術や治療方針まで及んでいない。意識不明など生命に関わる重大な事態になったときまで普遍化できない」と説明しました。その上で、「親族とのコミュニケーションの中で、キーパーソンを決めていくしかない」と述べました。手術の同意までは委託されない「任意後見人」では、親族との関係性に左右されるのです。

つまり、「任意後見契約」では、生命にかかわる場合の医療行為の同意がない、とされてしまうのです。これを聞いた参加者の一人は「任意後見契約をする必要がないのではないか」と言っていました。ただ、その部分については別の公正証書を作成することでカバーができます。都側はその部分を説明しませんでした。

手術の同意をできるようにするには?

別の公正証書とは、「医療に関する意思表示書」などです。渋谷区の「パートナーシップ証明 任意後見契約・合意契約 公正証書作成の手引き」でも、必須条件とはしていないのですが、「療養看護に関する委任」という項目を例示しています(日本公証人連合会が作成した「任意事項事例集」より)。

第〇条【療養看護に関する委任】
1 甲乙は,そのいずれか一方が罹患し,病院において治療又は手術を受ける場合、他方に対して、治療等の場面に立ち会い、本人と共に、又は本人に代わって、医師らから、症状や治療の方針・見通し等に関する説明を受けることを予め委任する。
2 前項の場合に加え、罹患した本人は、その通院・入院・手術時及び危篤時において、他方に対し、入院時の付添い、面会謝絶時の面会、手術同意書への署名等を含む通常親族に与えられる権利の行使につき、本人の最近親の親族に優先する権利を付与する。

この任意事項について都側の説明がなかったために、私も含めて一部の参加者で誤解が生じました。

世田谷区、中野区…渋谷区以外の状況

ちなみに、世田谷区では議会での承認が必要ない「世田谷区パートナーシップの宣誓の取り扱いに関する要綱」で、同性カップルの「パートナーシップ」を認めています。区職員の面前で宣誓書を書けば、収受印を表示した宣誓書の写しが交付されます。区長はその宣誓書を10年間保存義務が生じます。公正証書が不要な点を考えれば、費用がかからない利点があります。一方、法的拘束力は渋谷区ほどありません。

また、中野区では民間賃貸住宅への入居が難しい人を対象にした「住み替え支援事業」があります。対象は「65歳以上のひとり暮らしの方または65歳以上の人を含む60歳以上の方のみの世帯」「身体障害者手帳、精神障害者保険福祉手帳または愛の手帳を持つ方のいる世帯」「18歳未満の児童を扶養するひとり親家庭」「その他、自ら物件を探すことが困難な方」となっています。同性の同居を理由に断られた場合は、「その他、自ら物件を探すことが困難な方」に入ることになるので、区が情報提供など支援することになります。

渋井哲也

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