女の子だから、10代で結婚させられる。女の子だから、学校に行かせてもらえない。女の子だから、生まれてさえこられないこともある。これが、南アジアの貧困層で起こっているリアルな現実だ。一億総活躍社会の実現を掲げ、女性の活躍を推し進めている日本とは対照的に、南アジアの貧困層では、女性は「負債」と考えられ虐げられている。この状況を打破するため、公益財団法人プラン・ジャパンでは「Because I am a Girl」キャンペーンの一環として、さまざまなプロジェクトを進めているという。改善への早道となる男性への意識改革の取り組みや活動の成果、日本人のボランティア精神について、プログラム部の寺田聡子さん、コミュニケーション部の後藤亮さんに伺った。

【前編はこちら】女の子だとわかると中絶、性産業に売られる…インド貧困層の女性を待ち受ける現実

“女の子だから”不当な扱いを受ける

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――元々、「Because I am a Girl」キャンペーンがはじまったキッカケは、どんなことだったんでしょうか?

後藤亮さん(以下:後藤):このプロジェクトは、ドイツのスタッフとジャーナリストがネパールに行った時の取材がキッカケでした。村の人たちの話を聞いているとき、粗末な服を着たやせた体の女の子が近くで彼らを見ていたそうです。スタッフはその子が気になり、地域の実情を知るために彼女のお宅へ訪問したところ、家には学校の制服を着た肉付きのいい男の子がいました。スタッフが、「なぜ同じ家庭で育っている姉弟にも関わらず、こんなにも扱いが違うんですか?」と母親に聞いたら、彼女は現地の言葉で「Because she is a girl」と一言つぶやきました。

その状況にひどくショックを受け、そこから世界の少女たちの実態をリサーチしていったところ、就学率や結婚年齢などさまざまなデータから女の子が厳しい状況に置かれている実態が浮き彫りになったんです。このままでは、途上国の問題は解決せず、経済的にも良くならないということで、2007年から「Because I am a Girl」キャンペーンがスタートしました。

――これまで、具体的にどんな取り組みを行ってきたんですか?

寺田聡子さん(以下:寺田): 女の子自身の力を引き出すために職業訓練をしたり、教育を受けられるような活動を進める一方で、女の子の親や地域、行政の意識、また社会の制度を変えるための働きかけを行っています。

男性の変革者が希望の光

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――支援活動を行うなかで感じた現地の反応についてお聞きしたいんですが、そもそも貧困層の男性たちは、女性が虐げられている現状をどう感じているんでしょう?

寺田:男性たちも女性と同じく、生まれてからずっと続いている状況をあたりまえに受容しがちではありますね。しかし、一部の男性たちから「女性への差別的な扱いはおかしい」という声が挙がってきています。そういった男性たちは、父親や夫から暴力を振られたり、ひどい目に遭って苦しんできた母親や姉妹を間近で見てきたんです。自分を生んでくれた母親や血のつながっている姉妹に対して共感するのは当然ですよね。

女性差別は、権力をもっている男性の意識が変わらなければ絶対になくなりません。ただ、彼らのような変革者は希望の存在である一方、周囲からの偏見と戦わなければならないんです。私たちは、そういった変革者の男性が孤立しないよう、仲間を作るためのサポートにも取り組んでいます。

――では実際に活動を行うなかで、少女たちにはどんな変化が表れていますか?

寺田:彼女たちの意識改革に一番必要なのは、ロールモデルなんです。たとえば成功事例が少なく希望をもてない現状があるため、実際に職業訓練を受けて大学生になった女性が年少の女の子たちの相談にのったりしています。苦労をしてきた少女たちは、自分の幸せだけでなく自分以外の女の子たちも幸せにしたい、他の女の子たちの夢を叶えたいと強く願っており、率先して活動してくれるんです。

また、少女たちが職業訓練を受けて、実際に商売をはじめお金を稼げるようになると、周囲の彼女たちを見る目も変わってきます。女性が教育を受けたことで家計が潤ったとか、良い影響があることを広めて周囲に納得してもらうことで、早すぎる結婚や就学率の低さを改善することにつながっていきます。

日本人のボランティア精神は欧米より低い

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――率直にいうと、日本人にはNPOやNGOなどの支援やボランティア活動に対して、「とっつきにくい」とか「あか抜けない」という意識があるように思います。しかし、プラン・ジャパンの「Because I am a Girl」のポスターは、「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない」という秀逸なキャッチコピーが使用されており、これまでの広告とは印象が異なっています。この広告に込めた想いを教えてください。

後藤:そうですね。確かに日本人の寄付文化は欧米に比べると控えめな一面があるといわれています。このキャッチコピーは、自分たちがあたりまえのように経験してきたことが一切許されない世界があることを訴え、できるだけ自分と重ねて考えてもらえるようなメッセージを発信したいという想いが込められています。そうしたところ、かなりの反響がありました。今回の取材のようにメディアの方が「話を聞いてみたい」と言ってくださったり、学生やOLの方々が「とても衝撃を受けた」と書き込みをしてくれたり、SNSで発信してくれる方がいたり、良いコピーの持つチカラの大きさに、私たちも驚いています。

このコピーは2012年7月から活用しはじめましたが、途上国の女の子の現状を伝える「Because I am a Girl」キャンペーンも広がりをみせていて、グローバル教育を重視する流れにある教育現場からも反響があります。多くの中学、高校、大学で、世界の女の子が置かれている状況について出前授業を依頼されることが増えました。そうした関係を通じて、ある地域では高校生のディスカッションから、募金活動に結びついたケースもありました。

――変革者と言える男性が現れる一方で、寄付金を受け取ると子どもたちのためではなく遊びに使ってしまう男性もいるという話も聞かれますが、実際にそういった問題は起きているんでしょうか?

寺田:そうですね。男性の手にお金が渡ると、お酒を買ってしまうなど本来必要なところに支援が届かない場合もあるかもしれません。私たちはできるだけ個人にキャッシュを渡すということはせず、学校の口座に入れるとか、村で運用している預金組合の口座に入れるなど慎重なやり方を工夫しています。

例えば、アフリカのウガンダで女性の生計向上を目的とした貯蓄組合を作る活動を進めていますが、一夫多妻制で第一夫人、第二夫人と妻が何人かいる場合があります。第一夫人の立場が強く、第二夫人以降は満足な生活費を夫からもらえないなどの問題が生じます。そうなると、女性は炭を売るなどして生活費を自分で稼ぐんですが、必死に働いてお金に少し余裕ができたとき、最初にしたのは娘の教科書と鉛筆を買うことでした。そこには「娘に自分と同じ思いをしてほしくない」という切なる願いがあったんだろうと想像します。逆に、同じ状況に男性が置かれたとしたら、違う選択をしていたかもしれませんね。

■関連リンク
公共財団法人プラン・ジャパン
「Because I am a Girl」プロジェクト

画像提供:プラン・ジャパン

小林香織

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