みなさんの会社では、働きやすいような環境づくり「オフィスデザイン」がなされているでしょうか。「オフィスデザインを改善することは働き方の底上げにつながる」と語るのは、働き方や働く環境について独自の視点で研究する組織「はたらく未来研究所」所長・富岡明日香さん。今回は富岡さんに、オフィスデザインという考え方の重要性や、これからの企業に求められる職場づくりについて伺いました。

オフィスデザインは、コミュニケーションロスをなくす

――そもそもオフィスデザインの重要性とは何でしょうか。

富岡明日香(以下、富岡):オフィスをデザインで期待できることは、業績アップというよりも「働き方の底上げ」です。一番はコミュニケーションの活性化ですね。例えば会議をしようと思ったときに、会議室を予約してホワイトボードを持ってきて…という工程を踏んでいるとすると、準備をしないとコミュニケーションが生まれないコミュニケーションロスが発生していることになりますよね。

もし、予約しないで使えるコミュニケーションエリアがあれば、「ちょっといい?」と気軽に打ち合わせできます。カフェのような雰囲気の空間であればお互いに緊張感なく自由なアイデアが生まれるかもしれないし、壁一面がホワイトボードになっていたとしたら図を書きながら企画を練っていける。このようにオフィスデザインの改善をすると、課題解決が一歩前進したり新しい発想が産まれたりするのです。

――なるほど。社会的にオフィスデザインが注目され始めたのはここ最近の話なのでしょうか。

富岡:「オフィスデザイン」という言葉が一部で聞かれ始めたのは10年前位だと思います。マイクロソフトさんやGoogleさんといった外資系の大手ITベンチャーから、オフィスワークの生産性をどう促すか、という動きが出てきました。

一方、新日本製鉄さんやパナソニックさんなど日本の超大手メーカーは、個人個人の机の上で生み出す仕事をするというよりも、もっと大きな規模で生産する業態ですよね。そうした会社はクリエイティブな発想が生まれることよりも、正確にモノを生産する方が大事なので、オフィスにおけるチャレンジという考えが出てこなかった。彼らが働き改革としてオフィスデザインを考えて始めたのは、ここ2、3年の話です。

働き方の多様性が広がっていく中で、今はあらゆる会社において、働く人たちを受け止める空間を作ることが求められています。多様性というと国籍や人種ももちろんですが、第一課題は女性です。女性の働き方をオフィスデザインから受け止めようという動きはこれからもますます大きくなっていくと思います。

女性の感情価値を活かしたオフィス作りとは

――それでは、女性に人気のオフィスデザインとはどういったものでしょうか。

富岡:男性はコミュニケーションの「機能価値」が優先であるのに対し、女性は「感情価値」が優先であるという傾向があります。女性は仲間と同じ空間にいる自体に喜びを感じやすく、人に話を共有したくなる。つまり、「共感」に価値を置いたオフィスデザインが人気を集めやすいのです。

具体的には、距離を縮める手法が効果的です。例えば今「リムジン女子会」が流行っていますよね。これは女性たちが、ドレスコードを決めてパーティーを楽しむという感情価値を大きなモノとして捉えているからと言えます。

その感情をオフィスに転換するとどうなるか。円型のソファ、おしゃれなクッションという居心地を重視したデザインや、テーブルにお菓子を置くという工夫が考えられます。実際、Googleさんやサイバーエージェントグループは、距離のコントロールがしやすい円型のソファを多く採用しています。

また先日、女性が8割を占めるオフィスのデザインを担当した際には、ストレスフルな環境なので癒しがほしいという話を聞き、子猫をグラフィックやインテリア、空間演出に使用した「にゃんすぽっと」を作りました。

――仕事には直接関係なくとも、癒やしの効果で「よし、また仕事を頑張ろう」とやる気が出てきそうな空間ですね。

富岡:モチベーションの向上としても効果はありますが、単に若い女性が喜ぶからという単純な目的ではないんです。

このようなオフィスデザインにすることで、いつもの会議が和んだ雰囲気になるとします。すると、別の日には「今日は真面目な会議だから別の場所にしよう」と切り替える気持ちが生まれてくる。要は、なごみが生まれることによって、真面目の価値まで上昇するんです。目的に応じて会議室を使い分けることで、会議にメリハリがついて、全体の質がアップするんです。

「おしゃキャリ女子」が経営者を動かす

――なるほど。心理状態から目的をどこに持っていくかということなのですね。それでは女性が求めるオフィスと経営者が求めるオフィスで違いはありますか。

富岡:先ほども申し上げた通り、女性社員は居心地を重視します。一方で経営者は生産性を上げたいと考えています。これらは大きく違うようで、実は目的は同じなんですよ。

以前、とある企業で従業員満足度調査をしたら、若い女性社員が「休憩場所が欲しい」と言ったことがありました。経営者は「いや、休ませるわけにいかない」と突っぱねたそうなのですが、リフレッシュして発想の転換をして生産性をあがることは歓迎したいと思っている。つまり、両者は同じことを求めているのに言語が違うというギャップがあることがわかったんです。

我々は最近、女性向けオフィスデザイン事業「CATEGORY WOMAN」もスタートさせたのですが、そのギャップを翻訳する役割を担おうと思っています。

――女性社員は生産性を上げるために休憩してまた頑張ろうと思っているのに、経営者は「休憩」の部分だけ切り取ってしまいがちだと。

富岡:経営者側が、女性社員の不満・要望をうまく拾えていないんです。その理由は、経営層の男性たちに「女性の働き方」という価値観自体が存在していない方が多いからです。そんな彼らに、誰が若い女性社員の声を届けるかというと、バリキャリと呼ばれる女性ではなく、仕事もプライベートも充実させる働き方をしたいと思っている女性だと考えています。我々はその層を「おしゃキャリ女子(おしゃれなキャリア女子)」と呼んでいます。

多様な働き方を受け止められるオフィス作り

――近年はフリーアドレスの会社も増えてきました。

富岡:フリーアドレスを導入する際は、社員に対して意義や目的を提示する必要があります。そこが欠けると無意味になりますし、また業種によっては席が固定されていたほうがモチベーションアップに繋がると考えられます。例えば外回りが多い営業職は、自分の席があることで「ホームに帰ってきた」という安心感を抱ける。コミュニケーションに関しても、フリーアドレスは部署が違う人との関わりが活発化するというメリットが、固定席の場合は同じ人の顔色を日々見ながらいたわりあえるというメリットがあります。双方で良い点も悪い点もそれぞれあり、流行っているからと言って、フリーアドレスが絶対良い、というわけではないのです。

重要なのは、選択肢を広げられるということ。在宅ワークが増え、経営者層は「出社することの意味」を突きつけられているのが現状だと思います。そんな状況でのオフィスデザインの工夫は、多様な働き方を受け入れていくことに繋がると思います。

■関連リンク
はたらく未来研究所
CATEGORY WOMAN

富岡明日香(とみおか・あすか)
はたらく未来研究所 所長。経営学および建築を学んだ後、workstyledesign,inc.入社。オフィスデザインのProjectManegerを経て、2014年、女性の「働き方」を オフィスにデザインするCATEGORY WOMANを発足。2015年、人びとの働き方や働く環境をテーマとして独自の視点から掘り下げていこうと発足した研究組織「はたらく未来研究所」の所長に就任。オフィスデザインに新たな「働き方」カテゴリーを創造するべく多方面で活躍中。

石狩ジュンコ

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