今月、LGBTであることをカムアウトしなくても同じ関心事を分かち合いながら誰かとの関係を育めるSNSアプリ「Nesty」(ネスティ)を、株式会社Letibeeが開発し、リリースした。

Letibeeは、「すべての人に結婚という選択肢を」という目的で2014年4月に生まれた東京のソーシャルベンチャーだ。これまで同性婚の結婚式をしてこなかった式場向けにウェディング運営のサポートや、結婚したい当事者向けの法的なサポート、LGBT関連に特化したwebメディアの運営、LGBTに関する企業研修・コンサルティングなどを事業化してきた。

今回、Nestyを開発した背景について、同社の共同代表・外山雄太さんに尋ねた。

地方のLGBT当事者は情報を得にくい

―――新たにLGBT向けSNSを作ったのは、なぜですか?

外山雄太さん(以下、外山):東京のような都会だと、渋谷区のパートナーシップ条例ができたり、新宿2丁目などの出会いの場もあるなど、当事者がほしい情報やコミュニティに比較的アクセスしやすいです。でも、地方の町ではなかなかそうはいきません。

僕自身、北海道の増毛町出身で、高校時代に男性の先輩との大失恋を終えて、一人で抱え込みきれなくなったとき、友達が全員僕のもとから離れていく覚悟でカミグアウトをしました。もちろん都心もそうですが、そうした自分のセクシュアリティに悩む人は、地方の町にもたくさんいるはずなのです。

大学進学で上京してからフルカムアウトしましたが、フルオープンでカムアウトしている人は圧倒的に少ないです。田舎と都会では、当事者のほしい情報やコミュニティの格差は大きく、カミングアウトできない状況の中で、どうやって情報やコミュニティを得ていくのかが当事者にとっては切実な課題でした。

気軽に相談できる人やコミュニティが必要

外山:そこで、当事者に話を聞いたり、新宿2丁目に足を運んでカミングアウトしてない人にもインタビューし、レズビアン向けには大手の出会い系アプリがないとか、コミュニティに参加するにも勇気が必要だったり、ゲイでも長い付き合いを前提とした出会いを求める人が、望む出会い方が難しいなどの声を聞いてきました。

関係を深めるうえで「第三者」や「共通の友人」というキーワードが出てきたんですね。たとえば、喧嘩した時に相談できる共通の友人や、誰かが双方をよく知っている状態を作れるコミュニティ、キューピッド的な役割の存在が必要だってことです。

そのように関係を深める場を作るには、自己紹介のプロフ欄に身長・顔写真・年齢などを入力する以上に、同じ趣味でつながることや、同じ話題に共感する方が日常的だし、自然にコミュニティが作れますよね。

セクシュアル・マイノリティ向けのSNSアプリには出会い系サイトもありますが、性的な関係を求める人だけではないし、新宿2丁目などの同性愛者向けの飲食店に気軽に足を運べる人だけでもありません。むしろ、カミングアウトしなくても同じ趣味や話題に共感し合えるオンライン・コミュニテイが必要だと考えたわけです。

「自分だけがおかしい」不安を解消する

―――13歳以上なら、自分以外のLGBT当事者がどんな暮らしをしているかを垣間見ながら、「性の相手」ではなく、「気軽に話し合える相手」を探しやすくなる。それがNestyの魅力なんですね。

外山:Nestyでは、タグを使用してセクシュアリティや、趣味・関心、悩み事を管理することで、同じ関心事や悩みをベースに友人を見つけることができます。それぞれのコミュニティのことは「ネスト」と呼ばれ、ユーザは自由に自分の関心事に基づいて「ネスト」を作り、自分に合う人をネット上に集められるんです。

そのように自分の興味のあるコミュニティの中で交流していくことから、人との関係が始まると思うんです。「実は昨日お父さんにカムアウトしました。父は私にこう言いました」とか、「この町でオススメのレズビアンバーってある?」とか、「自分はトランスジェンダーだけど、シャツとかってみんなどこで買う?」なんて相談もし合えることは、カミングアウトをしていなかったり、コミュニティに属していな人にとっては非常に重要な体験になると思います。

LGBTは、日本では人口の7.6%を占めます(電通ダイバーシティラボ調べ)。しかし、自分がそうだとカムアウトできない現実があるので、ゲイはストレートの6倍ほど自殺率が高いと指摘するデータもあります。ゲイとバイセクシュアルの男性では、3分の2が「自殺を考えたことがある」と回答したデータもあります。

Nestyを通じて、今は地方にいる若い子や、情報やコミュニティにアクセスできなくて「自分だけがおかしい」と思ってる人たちが、「仲間がこんなにいたんだ」と自尊心を育んでほしい。それが、Nestyを開発した一番大きな目的です。

LGBT当事者の声を企業に伝える役割も

―――Nestyは今後、どのように事業を展開していく予定ですか?

外山:広告収益も見込んでいますが、LGBTの市場に商品・サービスを売りたくても、当事者のニーズがわかってない企業向けに「当事者はこんなことを望んでいますよ」と小さな声を拾って社会に届けたいです。ふだんは声を出せてない人の気持ちを、Nestyで発信できればと。

カムアウトしたくてもできないなと悩んでいる年齢層である大学生のゲイサークルやLGBTコミュニティなどにも広報し、facebookで広告を打つなどしてユーザを増やし、人生設計や就職相談などもコミュニティの中で話せるようにしたいです。

すでにiTunesでのダウンロードを始めていますが、今後はオンラインからオフラインで実際につながれるようなイベント作成機能などを実装予定で、今年中に年内のユーザを50万人にまで増やしたい。

また、世界へ展開させる予定で、今年からアジアを中心に広く普及させるつもりです。テストリリースとしてフィリピンでも使えるようにしていて、フィリピンの方はすでに英語で利用し始めています。LGBTは欧米での認知は進んでいるものの、アジアではシンガポールのように同性間の性行為が禁止されているなど、法律で取り締まられる国や嫌われている国もありますから。

■関連リンク
Nesty
※当記事の画像はオフィシャルサイトより

今一生(こん・いっしょう)
1965年群馬うまれ。早稲田大学文学部除籍。コピーライターを経て、25歳から雑誌の執筆。その後、書籍の編集・執筆を手がけ、児童虐待・自殺の取材を経て、ここ10年はソーシャルデザインや社会起業を精力的に取材。主な著書に『よのなかを変える技術』(河出書房新社)、『ソーシャルデザイン50の方法』(中公新書ラクレ)など。編著に『日本一醜い親への手紙』『子どもたちの3・11』など。今一生HPブログ

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