映画『俳優 亀岡拓次』横浜聡子監督インタビュー

脇役にして主役 安田顕の“かわいい魅力”を『俳優 亀岡拓次』監督が語る

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脇役にして主役 安田顕の“かわいい魅力”を『俳優 亀岡拓次』監督が語る

映画界、ドラマ界で今、主演ではなく助演で作品を支える俳優たちが注目を集めています。脇役の上手さが作品の質を高めるとも言われる重要な存在です。そんな脇役を主役にした映画が『俳優 亀岡拓次』です。

この映画は、様々な作品で脇役の仕事を積み重ねていく俳優・亀岡拓次にスポットを当てた作品です。脇役が主役という面白さ!

そこでこの映画の横浜聡子監督に、監督から見た良い脇役について、主演であるTEAM NACSの安田顕さんや今回は助演として魅力を放つ麻生久美子さんなどについてお話を伺ってきました。

脇役は、短い時間で「人生を表現」できる

横浜聡子監督

横浜聡子監督

――脇役が主役の映画という設定がおもしろいのですが、これは戌井昭人さんの同名小説の映画化ですよね。映画にしようと思われたのはどのようなきっかけからなのでしょう。主役をTEAM NACSの安田顕さんにすることに決めたのは?

横浜聡子さん(以下、横浜):プロデューサーから「この小説を映画化しないか」とお話しがありました。作者の戌井昭人さんの小説はもともと好きでしたし、面識があったので、すっと受け入れられました。

安田さんについては、40歳くらいの主人公と同世代のいい俳優がいると聞きまして。そのときから安田さんのお芝居を多く見るようにしました。2年かけて脚本を書くうちに、亀岡役は安田さんにお願いしたいと気持ちがかたまっていった感じです。

――この映画は脇役が主役という設定がおもしろいと思うのですが、役者を多く見ている監督にとって良い脇役というのはどういう人ですか?

横浜:脇役の方って出演シーンが少ないので、その短いシーンでいかにその役の背景を表現できるかにかかっているんです。それはとても難しいことなのですが、演出していて、ほんの少しの時間なのに役の人生がパーっと見えるときがあるのです。まるでその時間にまさにその人物として生きていると感じることがあって、そういう瞬間を見られたときは「ああ、この人は本当にいい俳優さんだなあ」と思います。

映画『俳優 亀岡拓次』

映画『俳優 亀岡拓次』より

作品を背負うのが主役、“跳ぶ”のが脇役

――主役と脇役は、役者が持つものがもともと違うのですか?

横浜:助演が多い俳優さんは職人的な面が強いかもしれませんね。少ない時間で、「目立つ」とはまた違った意味で、どれだけ印象を残せるか。瞬間的に力を発揮するためには職人的な技術もときには必要なのではないかと思います。でも撮影現場に来るときの想いは主役と脇役では違うかもしれません。主役は背負っている物が大きいし重いけれど、脇役は短い時間でどれだけ跳べるか……と考えている人が多いのではないでしょうか。

――現実にこの映画の亀岡拓次みたいな「脇役俳優」はいるのですか?

横浜:亀岡もそうですが、脇役を演じることが多い俳優さんだからといって、脇役で満足はしている人はいないと思います。亀岡にも野心はありますから。「あの役やりたかったなあ」とか「なんであの役は俺じゃないんだ?」と思っています。でも基本的には、人から与えられた仕事とどう向き合うかということで生きている俳優だと思います。亀岡が主役をやる映画は、私が見てみたいです。きっとイっちゃってる演技をするのだろうな。亀岡みたいに朴訥な人が主役をやると、逆に振り切っておかしなことをやらかすかもしれないと思います(笑)。

麻生久美子は肝が据わった女優

映画『俳優 亀岡拓次』

映画『俳優 亀岡拓次』より

――麻生久美子さんは、横浜監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』(主演:松山ケンイチ)にも出演されていましたよね。今回は小さな役ですが、主演と助演、両方で売れっ子の彼女をキャスティングしたのは?

横浜:麻生さんって、セリフを台本通り、一字一句絶対に変えないで演技できるんです。役者さんによっては「セリフを自分の言いやすいように変えていいですか?」と言う方もいるんですよ。麻生さんにはそれがなくて、作品の世界に自分を近づけてきてくれる。現場でもセリフは頭に入っていますが、基本的に演技を決めずに真っ白な状態で来てくれます。そして「監督はどうしたいですか?」と聞いてくるんです。自分が変化していくことを恐れない女優さんで、肝が据わっているなあと感じますね。

――麻生さん演じる安曇は、ふんわりした穏やかな雰囲気だけど、ちょっと影もあり、実家の居酒屋を手伝っているという状況に納得がいく存在感があるんですよね。

横浜:私は『ウルトラミラクルラブストーリー』のときも、今回の映画も麻生さんに頼りっぱなしで映画を作っているなあと感じました。今回は立ち寄った居酒屋で亀岡と麻生さん演じる安曇が出会い、亀岡が彼女に恋をするという設定ですが、あの居酒屋での二人のシーンは、麻生さんと安田さんが空気を作ってくださいました。恋が生まれる瞬間って演出するのが難しいんですよ。亀岡がいつ安曇のことを好きになったか、その瞬間って本人にしかわからないじゃないですか。安田さんから生まれてくる気持ちだと思ったので、お二人にお任せしました。

映画『俳優 亀岡拓次』

映画『俳優 亀岡拓次』より

安田顕は本心がわからないおもしろさがある

――安田さんとのお仕事はどうでしたか?

横浜:安田さんとは意見が食い違うときもありましたが、私が何も言わなくても亀岡になっていることのほうが多かったです。亀岡も安田さんも一筋縄ではいかないので、現場では日々、二人で亀岡を作り上げていきましたね。安田さんはイケメンなのに三枚目の印象もあり、本心がどこにあるのかわからないおもしろさがあります。シナリオの段階では、亀岡が「いい人」で終わってしまうのではないかという不安もありましたが、安田さんが演じることで、良い人悪い人、という判断基準を超えた亀岡拓次になったと思います。

――脇役ブーム何て言われていて、遠藤憲一さんや松重豊さんなど売れっ子ですよね。「名バイ・プレイヤー」を特集した書籍も出ていますが、監督は映画制作の現場で、脇役のブームがきているとを感じることはありますか?

横浜:うーん、特にそう感じることはないのですが、遠藤さんも松重さんもベテランですよね。4、50代って、ずっと映画界を支えてきた力が存分に発揮される年齢なのかなと感じます。

人気のある脇役にベテランが多いのは、若い人は主役をやりたがるからかも。でも、私は脇役が多い俳優さんこそ主役をやったら面白いと思っています。ただキャリアを積み重ねていくうちに、目標が主役をはることではなく、別なことに変わるときがくるのではないでしょうか。

私は「主役しかやったことありません」という俳優さんと仕事をしたことがなくて、例えば『ウルトラミラクルラブストーリー』の松山ケンイチさんも、脇役を数多く演じてきた方です。脇役をやっているときに、どれだけもがくかで、俳優として鍛えられるのかなあと思います。

目標や大志がない人生もいい

映画『俳優 亀岡拓次』

映画『俳優 亀岡拓次』より

――亀岡拓次の魅力と生き方について、横浜監督はどう思われますか?

横浜:私は映画を見て「亀岡かわいいな」と思ったんですよ。女性って、いつの時代もかわいい男性に惹かれてしまいませんか? 安田顕さん演じる亀岡のチャーミングさを見に来てくださるだけでも、きっと楽しめると思います。

また、人生は何が起こるかわかりませんし、目標を立てても、そううまくはいかない。でも亀岡のように目標も大志も抱かず、毎日、役を演じることと酒を飲むことを頑張るという生き方を見て「こういう風に生きてもいいんだ」と感じてくれたらうれしいですね。

脇役が輝いている理由がわかる作品

映画『俳優 亀岡拓次』を見ると、今、なぜ脇役たちが輝いているのかわかります。横浜監督が語るように、脇役には短い時間で印象を残す職人的な技術や、脇役としてもがいて鍛えられる力が備わっているから、安心感が違うのですね。それはそのまま一般社会にも通じるものがありそう。社長より部下が優秀というのはよくありますからね。向上心は大切ですが、亀岡のように今の自分を大切にして肩肘張らずに頑張るのもありなのです。

■公開情報
『俳優 亀岡拓次』
公式サイト
出演:安田顕、麻生久美子、宇野祥平、新井浩文、染谷将太 ほか
公開:1月30日 テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

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