『恋愛しない若者たち』牛窪恵さんインタビュー

「セフレはいるが彼氏はいない」アラサーが恋愛できない原因は『セカチュー』ブームのせい?

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「セフレはいるが彼氏はいない」アラサーが恋愛できない原因は『セカチュー』ブームのせい?

「壁ドン」や「顎クイ」といった“胸キュンワード”が流行語化する一方で、実は、20代の彼氏ナシ女性の4割が「恋人はいらない」と考えている……という調査結果が内閣府から出ている。

恋だの愛だのはもう疲れた。色恋沙汰で消耗するくらいなら、趣味や仕事に打ち込んでいる方がはるかに楽しい――。そういう女性が増加しているように見える。このままで本当にいいのだろうか? 私達は、恋愛に対してどう向き合っていけばいいのか? そんな「恋愛パラダイムシフト」について、『恋愛しない若者たち』の著者・牛窪恵さんに話を聞いた。

恋愛は、必需品ではなくなった

――「恋人はいらない」と考えている人が20代彼氏ナシ女性の4割を占める、というのは、実感としてはあったのですが、数字で示されるとやはり驚きますね。

牛窪恵さん(以下、牛窪):2008年に『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』を刊行するにあたり、2006年から2007年頃にかけて、当時20代前半から半ばくらいの若者にインタビューを始めたのですが、10年前には既に、男性の草食化だけでなく「女の子達も恋愛に熱心じゃないな」と感じていました。

私はバブル世代なんですけども、バブルの時代はいわゆる恋愛至上主義で、「彼氏がいないのはおかしいんじゃないか」というくらいの勢いだったんです(笑)。恋人がいることが一種のステータスになっていましたから、恋愛は「必需品」だったと言えます。

ところが、インタビュー当時に出会った20代の女性達は、物欲も性欲もあまりなく、「ずいぶんと温度差があるな」と思いました。思えば、取材から10年が経ち、彼ら彼女らがちょうど今アラサーぐらいの年齢になっているんですね。

結婚するために恋愛をする?

――2008年頃には婚活ブームがありましたよね。

牛窪:はい。その後、2011年の東日本大震災をきっかけに「家族を持ちたい」という気運が高まった結果、「年の差婚」がブームになりました。女性達にとって、「必ずしも恋愛をしたいわけじゃないけど、結婚して誰かとつながっていないとまた震災のようなことが起こった時に不安」という気持ちがあったんですね。

ですから、「結婚するために恋愛しないと」という風潮がありました。

とはいえ、同年代の男性は自分から告白してくれないし、奢ってもくれないし、進展しない。だから年上の男性と付き合うのですが、やはり世代間のギャップなどもあって、上手くいかないケースも多いんですね。

2年ほど前から「女性活躍推進」が掲げられるようになって、結婚、出産を経て働き続けるというモデルが出て来ていますが、年上の男性の中には「家にいろ」という人も多いですから。「ずっと働きたい」と思っているキャリア女性とは軋轢が生まれてしまいます。

「年上もダメだ」となると、周りを見渡してみてもそうそう「恋愛したい」と思える異性がいない。すると、10年前からそうだったんですが、恋愛のプライオリティが低くなってしまいます。同時に、その先にある結婚自体への憧れも薄れていって、恋愛の意義を見出せなくなっているというのが、社会背景のひとつとして存在しています。

アラサー世代が純愛ブームで思春期を過ごした弊害

牛窪:もうひとつの大きな背景として挙げられるのが、「SNSの進化」です。SNSの発達によって、いわば私達は衆人環視の状況に置かれています。「○○君と付き合っているはずなのに、××君と食事に行ってた!」というような内容がつぶやかれて、あっという間に拡散する訳です。

ただでさえ恋愛のプライオリティが落ちているのに、SNSでがんじがらめにされるし、今はリベンジポルノなどの問題もありますから、リスクだらけなんです。

一方で、『anan』が2011年に行った調査によると、「女性のセックスするパートナーのうち、7人に1人はセフレ」という結果が出ています。しかも、彼女達の多くは真面目な子だったり清楚な子だったりしますし、「本当に好きな人とは過激なエッチはできない」と口をそろえます。

20代から30代前半は、ちょうど“セカチュー”など、「純愛ブーム」のまっただ中にあった世代。恋愛を崇高なもの、キレイで神々しいものととらえているのではないでしょうか。だからこそ、おいそれと恋愛に手を出すことができないという事情もあるのではと思います。

こうしたさまざまなリスクやハードルを照らし合わせると、「今は仕事が楽しいし、男友達もいるし、ムリして恋愛する必要ないや」という結論に行き着くんですね。

「恋愛しないと結婚できない」という固定観念を覆す必要性

――複雑な社会背景や、現在の恋愛をとりまく事情と「恋愛→結婚」という従来の図式の齟齬が、「恋愛離れ」を生み出しているのですね。

牛窪:2015年6月22日号の『AERA』で「嫌婚」特集が組まれたことが話題を呼びましたが、女性達は決して結婚を「嫌って」いる訳ではありません。確かに、キャリア女性は「結婚はコスパがよくない」と感じています。20代の未婚女性の8割は実家暮らしですから、現状であれば家事をしなくても生活していけるのに、結婚して家を出た途端に家事を担わなくてはならなくなりますからね。

しかし、注目すべきは「アラサー女性が大きな社会不安を抱えている」という点です。両親はいつの日か自分より先に亡くなってしまうということは分かっているので、「誰かとつながっていたい」という思いがあります。つながるのであれば、男性でも、女友達でもいい訳なのですが、結婚は契約ですから、「このパートナーは決して裏切らない」という安心感が得られます。それなのに、結婚に至るためには面倒な恋愛をしなければならない。

「恋愛しないと結婚できない」という固定観念を覆し、それを後押しする制度を整えていかないと、恋愛も結婚も進んでいかないと思います。

【後編はこちら】あなたは本当に恋愛が必要? 私たちが「恋愛結婚」の幻想から解放される日

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