株式会社ワーク・ライフバランス社へのインタビュー後編。前編では、「短時間で成果を上げる人を評価すべき」など、いま企業に求められる姿勢についてうかがった。後編では、ワークライフバランスを意識することで、企業・個人がどんなメリットと、得られるのかうかがう。同社のコンサルタント・永田瑠奈さんが語る、プライベートに力を入れる意義とは?

【前編はこちら】「残業はルール違反」社員のパフォーマンスを高める、平等な働き方とは

ワークライフバランスの真のメリット

――前編では、企業が考えるべき働き方の改革についてうかがいました。個人の働き方はいかがでしょう。ワーク・ライフ・バランスが企業や個人にとって、どんなメリットがありますか。

永田瑠奈さん(以下、永田):前編でお話した「人口ボーナス期」では、企業側が社員をふるいにかけて一律に評価をし、企業に忠誠心を持ってしがみついた人たちを集めた方が高い成果を挙げられていました。しかし多様性が必要になり、少ない労働力と決して安くない人件費の中で良いものを作って成果を上げていくためには「付加価値」が必要となってきます。毎日見ている景色が一緒であれば、新しいアイディアも生まれないですし、話し方のスキルも上がりません。もちろん会議が短くなることもないでしょう。プライベートに力を入れる意義はそこにあります。単なる息抜きになるだけではなく、仕事とは異なるインプットをすることがまわりまわって仕事にもメリットになるのです。

――具体的にはどのようなメリットが生まれるのでしょう。

永田:私自身の話をします。弊社は残業ゼロなので毎日18時に退社しています。仕事でコンサルの現場に出ていくと、皆さんの机が隣の人が見えないくらい書類がいっぱい積み上げられていることがよくあります。これではチームや部の人達とコミュニケーションが取れませんよね。そこで、そうした書類をどう片付けていくか、収納や整理の知識を得たいと思い、ライフの時間を活用して整理収納アドバイザーの資格を取りました。もちろん、プライベートでも収納や整理の知識は活かされますし、仕事とプライベート、相乗効果になっています。

以前、別の会社で営業をやっていたころは、毎日朝から夜遅くまで働いてヘトヘトだったので、ライフの時間に資格取得だなんて、意欲も体力もありませんでした。毎日毎日長時間働くことで生産性があがることはないんです。

こうした資格取得の話を出すと、「ライフの時間も勉強しろということか」と思われることもあるかもしれませんが、どちらかと言うと、家族やお友達との会話、趣味によるインプットアウトプットが仕事に活きてくることが大事です。生活用品の開発部門で働いていらっしゃる男性社員の方が、アイディアに煮詰まった時、奥様とお話をされたことがきっかけでヒット商品の活路を見出せたというお話も聴きます。プライベートも力を入れる大きなメリットはそうした日常から感じられると思います。

――ライフの時間があっても、自分には恋人がいない、お友達が少ない、好きなことや趣味がないので、自分は仕事だけしていたいという方へアドバイスすることはありますか。

永田:それは、ご自身が何に興味があるのかよくわかっていないのではないでしょうか。自分がどんなことに興味があるか、どんな人になりたいのかといった自己分析が必要になってくると思います。ただ、根本的な話になりますが、短い時間で高い成果を出さなければという厳しい仕事の仕方をしていくと、何か他の人とは違うスキルや知識を持っていないといけないという危機的状況を察知するので、何か得ようと自然と外へと動くと思います。また、女性の場合は自分の時間ができるようになると皆さんキレイになって恋をする意欲もわくと思うんですよね。

上司にキャリアのビジョンを伝える

――成果を出してどんどんスキルアップ、キャリアアップしたい人と、それなりのお給料でそれなりに働きたい人など、仕事のモチベーションも人によってそれぞれだと思います。女性社員自身が上司や会社に歩み寄れることはなんでしょうか。

永田:女性という時点で、やはり多くの男性社員から「結婚や出産したら辞めるんでしょ」と思われていることはまだ多くあります。だからこそ、「私はこういうビジョンで働いている」「こんなやる気がある」ということを見せていくことが大事になってくると思います。スキルアップしたければ、仕事において自分は何を強化していくのかを上司をすり合わせていく必要性があります。そうすれば具体的なフィードバックがもらえるでしょう。

そうしたビジョンを上司に伝えることで彼らもとても嬉しいと思います。男性上司側も、女性社員に対してどうコミュニケーションをしたらいいか迷っている方は多いですから。「俺にも信頼を置いてくれているのかも。俺も彼女の仕事をサポートできるかもしれない」といったお互いの歩み寄りに繋がるのではないでしょうか。

――それでは、そうした社員をマネジメントする側にとって必要なことはなんでしょう。

永田:とにかく部下のモチベーションスイッチを知ることが必要です。働いている人が違うのだから、同じ人事評価ができるわけがありません。報酬や成長実感、スキルアップなど、それぞれのスイッチを知らずに一律に評価ばかりしていてもモチベーションも上がりませんし、伸びるものも伸びませんよね。企業の目的は評価ではなく、売上を上げ、規模を大きくしていくこと。社員一人一人のパフォーマンスをあげていくことが絶対条件ですから、そのためには社員一人ひとりを見ていかなくてはいけなくなってきます。

上司側からできない部下だと判断された場合、その上司の価値観に偏っている場合がほとんどだと思います。自分がこういう風に頑張ってきた栄光の道を「できる」の判断基準としてしまっている。ですから、できないと判断する前にできることを見つけてあげることが大事ですね。管理職の方には、「褒め9ダメ1」をお伝えしています。否定から入ればその人は自信を無くしていきます。何かダメなことを1つ言いたいのであれば、褒めを9つ言ってほしいです。

「長時間働いている=能力がない」の時代に

――ワーク・ライフ・バランスを取り入れて成功している企業さんは増えてきていますか。

永田:その大切さに気が付いている企業さんはもう取り入れられていて、それが横に波及して、まだやっていない経営者は遅れているよねという見方も広がっていますね。もちろん経営者や管理職の覚悟が必要になってくるのですが。とある企業さんでは、社員の長時間労働が是正したことで売り上げを高く上げたチームに、今まで残業代で出ていた費用を報酬として出しているところもあります。このように「短時間の方が生産性が上がり、得もするんだ」とわかればやる気になりますよね。

ワーク・ライフ・バランスは今までは海外のやり方でしたが、少しずつ日本でも意識が変わってきています。おそらく、徐々にではなく一気に変わる波がくるので、遅れると大変になると思います。とある建設系の企業さんでは、多くの大きな取引先がある中で、「御社は短時間で良い質だから、他よりも少し高いけど質を担保したいから仕事をお願いしたい」というブランディングも出来上がっているそうです。これからそういう動きが大きくなるでしょう。遅くまで仕事をしていたり休みの日にまで仕事をしていたりすると、今までは「頑張っているね」という評価だったかもしれませんが、これからは「この人は生産性が低いから能力ないのだろう」と信頼がなくなっていくと思います。

――なるほど。それでは最後に、御社が掲げている「女性が活躍する社会」のビジョンを教えてください。

永田:女性活躍する社会とはつまり全人類が活躍する社会ですよね。女性に特化するわけでも介護が必要な人に特化するわけでもなく、多様な人材がそれぞれにパフォーマンスを120%発揮できるための組織運営が、我々の目指すところです。これからは国が、個人の労働時間にかなり関与してくる時代になってきます。その中で企業の利益を担保していくために、どんな方でも活躍できる土壌を作っていくのがこれからの経営者がやらなくてはいけないことだと思います。

石狩ジュンコ

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