国民的アイドルグループ「SMAP」の事務所からの独立・グループ解散騒動が大きな話題となっている。SMAPのうちの4人が事務所から独立した際は「事務所の妨害で、もう芸能界では仕事ができなくなるのでは」という心配の声も。確かに、事務所から独立、移籍をしたことで仕事をなくした芸能人は枚挙にいとまがない。ウートピでは、芸能界でよく起こる事務所移籍や独立でタレントが“干され”てしまう現象について、弁護士に聞いた。(編集部)

CDデビュー25周年の年に突然起きた解散危機

1月13日発行の日刊スポーツなどが「SMAP解散」という衝撃的なスクープを報じ、日本中がこのニュースに注目している現在。日刊スポーツには「キムタク以外独立」とも書かれてあり、5人グループのSMAPは4人と1人に別れてしまうのだという。同日、SMAPの所属するジャニーズ事務所が「一部メンバーの独立と担当マネージャーの取締役辞任について協議・交渉中」と認め、解散は噂ではなく“今そこにある危機”であることが判明した。

SMAPメンバーとジャニーズ事務所の契約は2016年9月まで。よりによってCDデビューから25周年という節目の年に、グループ存続を賭けたカウントダウンが始まってしまった。ファンクラブに入会しコンサートに通ってきた“スマオタ”こと熱烈なファンから、メンバーの出演ドラマやバラエティ番組を楽しんできた一般のテレビ視聴者まで、最も気がかりなのは、事務所を出ることになったメンバーが今までどおりに活躍できるのかということだろう。

これまでジャニーズ事務所を離れたタレントたちの今

これまでジャニーズ事務所を離れたタレントたちは、1975年に独立した郷ひろみから、シブがき隊の3人、光GENJIの主なメンバー、6人目のSMAPだった森且行、この春、独立するKAT-TUNの田口淳之介まで、ゆうに15人を超える。その中には独立・脱退後、すっかりテレビで姿を見ることがなくなった人も。例えば元KAT-TUNの赤西仁は、独立前はドラマにも出ていたが、独立後は音楽活動のみ。しかも、テレビの音楽番組にはほとんど出演していない。

芸能界で大手事務所を辞めたタレントは、その事務所から仕事を妨害され“干される”とよく言われる。実際に他の大手事務所でも、2010年の人気絶頂時に独立した水嶋ヒロはドラマに起用されなくなったし、2005年に個人事務所を立ち上げた水野美紀は出世作「踊る大捜査線」シリーズに出なくなった。元事務所が根回しをしているのか、テレビ局が自主規制しているのか。その真偽は不明だが、独立したタレントの多くがキャリアダウンを余儀なくされていることは確かだろう。

東方神起の脱退メンバーを救った韓国の法律

SMAPの解散騒動から連想されるのが、韓国の国民的アイドルグループ、東方神起の歴史だ。もともと5人グループだった東方神起は2010年に分裂し、ジェジュン、ユチョン、ジュンスの3人が事務所(兼レーベル)のSMエンターテインメントから独立。JYJという新ユニットを結成した。

ところが、3人は地上波の音楽番組にいっさい出られなくなってしまった。これは元事務所がテレビ局に文書を送り妨害したことが明らかだったので、韓国の公正取引委員会がそれを止めるよう命令。しかし、JYJの不遇は改善されず、ついに2015年11月、通称“JYJ法”と言われるルールが国会で可決された。韓国の放送法第85条では、放送事業者(テレビ局)がしてはならない禁止行為を規定しているが、この条項に「理由もなく出演を阻止する不公正行為」を追加。つまり実質的に、元事務所による報復性のある妨害工作を禁じたのだ。

SMAPの活躍を法律で保障できる?

このような法律が日本にもあれば、SMAPを脱退するメンバーの活動も、少なくとも法的には守られることになる。その可能性をアディーレ法律事務所・篠田恵里香さんに聞いた。

「日本の放送法は、放送事業者等に対する規制が主となっています。放送法には、元所属事務所等が『合理的な理由なく出演を阻止・妨害する行為』を禁止する条文は存在しません。したがって韓国とは異なり、元所属事務所が脱退したタレント(芸能人)の出演を阻止する行為は、放送法違反とはなりません。また、一般には、芸能人同士は“出演の機会を競い奪い合う”側面を少なからず有しており、法的にも問題とはならない可能性が高いでしょう」

日本の放送法にはJYJ法のような規定はない。もし、脱退メンバーのテレビ出演が減っても、それは元の事務所を出たから仕方がないということにされてしまいそうだ。

「ただ、出演を阻止する方法が自由競争の範囲を超えて、“芸能活動の妨害=営業妨害”に至っているとなれば話は別です。その場合は、不法行為(民法709条)として、慰謝料や損害賠償の支払い義務が生じます。例えば、出演が決まったCMやレギュラー番組等に関し、制作会社やテレビ局の制作部などに、元所属事務所の関係者が電話やFAX、書面等で連絡をし、元事務所とトラブル係争中である旨を告げたり、出演に関し難癖をつけたりといった行動に至った場合。過去にも某タレントが元所属事務所に対し営業妨害を訴えたケースがあり、結果として不当な芸能活動妨害行為が認定され、慰謝料300万円の支払いが認められました(東京地裁平成19年3月27日判決)」(アディーレ法律事務所)。

芸能界の“暗黙の了解”を打ち払うための法が必要

慰謝料や損害賠償をもらっても、その時点でテレビ局などに「あのタレントは出せない」という暗黙の了解ができあがっていたら、肝心のキャリアは取り戻せない。独立後の芸能人がポジションを維持するためには、やはりJYJ法のような一歩踏み込んだ規定が必要と言えそうだ。

韓国の東方神起は分裂時にファンクラブ会員80万人という圧倒的人気を獲得しており、そのファンは国会からテレビ局、新聞社の中にまで浸透。分裂後5年を経ても脱退メンバーを応援する空気があったからこそ、歴史が動いた。

SMAPは古い芸能界のしきたりを変えられるか?

同じように、ファンクラブ会員数累計98万人というSMAPも、グループ存続を願って新聞記者が応援する見出しをつけたり、大臣が「解散しないでほしい」とコメントしたり、ファンによる署名運動も始まったりと、既に世論のムーブメントが起こりつつある。四半世紀近く芸能界のトップで活躍し、国民的アイドルと称されるほど広いファン層をもつグループだからこそ、芸能界の古い体質を変えられるかもしれない。そのときSMAPは、名実ともに歴史を作ったアイドルとして記憶される存在になるだろう。

●取材協力:アディーレ法律事務所(東京弁護士会所属)

(コウダエイコ)

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