いつでもどこでも誰にでもコンテンツを発信できる――。空前の動画配信ブームが到来した今、動画を撮影して配信する行為はもはやSNSに投稿するのと同じくらい日常的になってきています。

そのブームを牽引してきたのが、ライブ配信サービス「ツイキャス」です。モバイルに特化し、スマートフォン1台あれば即映像を配信できる手軽さでユーザー数を飛躍的に伸ばしています。“動画戦国時代”にありながら、広告費なし、口コミだけで1000万人のユーザーを獲得したワケを、ツイキャスを運営するモイ株式会社の代表取締役・赤松洋介さんと広報の福田有美さんに伺いました。

10~20代の女性から圧倒的支持

福田有美さん(以下、福田):ツイキャスは2010年に始まったサービスで、iPhoneにカメラがついたのをきっかけにしています。「これからは、カメラを使って個人で情報発信をするというのが当たり前になるんじゃないか」という考えのもと、赤松がアプリを開発しました。

赤松洋介さん(以下、赤松)
:正式名称はツイットキャスティングです。Twitterに紐付けるネーミングということで、「ツイット」を頭につけました。「ツイートキャスト」だと、Twitter社の権利に触れるらしくて、“ツイット”に。短縮した「ツイキャス」の方が親しまれています。

——どういった方がツイキャスを利用しているのですか?

福田:ユーザーの6割が女性で、半分以上が10代から20代の若年層です。さまざまな話題で盛り上がる雑談が中心です。SNSやチャットだと文字を打たなくてはいけませんが、動画であればリアルタイムで話すことができます。その分、配信者が反応しやすいようです。

赤松:それ以外ですと、弾き語りが多いですね。全国津々浦々、どこにいても世界に向けて演奏を届けることができるので、路上ライブよりも効率的です。また、読者モデルの方がファンとの交流のために動画配信を行っているケースもあります。今年大ブレイクした藤田ニコルさんが好例ですね。

福田有美さん

福田有美さん


——人気配信者の特徴は何でしょう?

福田:特徴はいろいろありますが、毎日決まった時間に配信していると不定期に配信するよりリスナーが増えやすいようです。あとは、リスナーとのコミュニケーションを大切にする配信者です。たとえば、大量のコメントが来てしまうと流れて読めなくなってしまうのですが、名前だけは呼んであげるとか、出来るだけ読み上げてあげるとかですね。

——密なコミュニケーションが重要ということですね。人気のジャンルはありますか?

福田:ツイキャス独自のジャンルとしては、「メイクキャス」「イケボ」があります。「メイクキャス」ではメイクの模様を配信するのですが、モデルの方に髪の巻き方を質問したり、お気に入りのコスメを紹介したりと交流が盛んです。「イケボ」は、イケているボイスの略。その名の通り、声のいい配信者に焦点をあてたもので、ジャニーズタレント並の人気を誇る配信者もいます。イケボキャス主4名で構成されたユニット『Love Desire』は、東京・大阪で2000人規模のライブを開催していました。

メイクキャス

メイクキャス

Love Desier

Love Desire

——「YouTube」「ミックスチャンネル」など、競合他社の動画配信サービスとの大きな違いは何でしょう?

福田:生放送なので編集の必要がなく、リアルタイムのコミュニケーションに特化しているという点です。「YouTube」や「ミックスチャンネル」は動画配信を完成したコンテンツとしてとらえているのに対して、ツイキャスは非常にアットホームで視聴者参加型のプラットフォームとなっています。ジャニーズのファンが仲間を見つけるために、ツイキャスを使ってファン同士のコミュニケーションをとったり。面倒な編集もいりません。なぜなら、ボタンを押せばすぐに始まる、リアルタイムのライブ配信だから。

——運営にあたって、気を付けている点はありますか?

福田:ユーザーの多くが女性なので、女性が嫌な思いをしないよう、居心地のいい場所をつくることを目指しています。

正直、「何でこんなに人が集まるんだろう」と不思議だった

ツイキャスのユーザーが拡大した背景について、赤松さんは「正直、『何でこんなに人が集まるんだろう』と思いましたね」と率直に語っています。

——なぜここまでツイキャスが世間に受け入れられたのだと思いますか?

赤松:Twitterとの相性が良かったのだと思いますが、最初の3、4年くらいは怖かったですね。なぜ増えているのか分からないということは、減っていても理由が分からないということですよね。ですから、このまま単なるブームで終わらせたくないという不安がありました

——ツイキャスについて、よく言及されているのが、「“ゆるい”プラットフォーム」ということです。その点については、意識されているのでしょうか?

赤松:商売色を出したくないんです。自分らしく活躍できる、ほっとできる場を作れればと思っているんですよ。いわゆるユーチューバーの方も、YouTubeではスポンサーへの体裁もあって「よそ行き」の顔なのに対して、ツイキャスで配信している時には肩の力が抜けているように感じます。いわば、おしゃべりの延長なんですよ。

赤松さん

赤松洋介さん

海外ではデモの配信に使用されている

——海外ユーザーも増えているとのことですが、日本のユーザーと同じ使い方をされているのですか?

赤松:海外は全く別です。たとえば、ブラジルでは、メディアが国営のため、情勢不安なのに現状が中々報道されないんです。そこで、市民の間でリアルタイムに配信ができる媒体として誰かがツイキャスを教えたらしくて(笑)。ツイキャスを見れば知りたいことが知れるぞ、と。そういったところからユーザーが拡大していきましたね。

海外ユーザーと日本のユーザーの大きな違いは、視聴者に対する反応に顕著に表れていると赤松さんは指摘します。

赤松:海外ユーザーは有名になりたくて配信しているケースが多いのに対して、日本のユーザーは仲間を求めているので、『誰が視聴しているのか知りたい』と言います。そこに、文化の違いを感じますね。

例えば、海外のユーザーのクレームは、「なんで俺のキャスに視聴者がつかないんだ?」というもの。誰でもいいから見て欲しい、という人が多いです。日本人は、視聴者が4人という表示を見て、身元がわからない人がいると、「誰ですか〜? あと1人見てる人」と話しかけ続けていることも。

海外のユーザーも多い

海外のユーザーも多い

動画配信を通じて、コミュニケーションのあり方を変えていきたい

——国内外の市場に関して、今後の展望は?

赤松:利用の敷居を低くして、コミュニケーションのあり方をどんどん変えていきたいと思っています。綺麗な映像が流れてなくても、交流を通じて楽しめるようなサービスが目標ですね。サービス開始最初は動画の画質が低く、「業界最低水準の映像クオリティ」だったんです(笑)。それでも、コミュニケーションするには必要十分だったので、ユーザーはつきました。

今は若者が主ですが、後々には主婦層など、大人にも広げていきたいと思っています。今でも「ママ友キャス」が密かに人気だったりするんですよ。家で一人子育てをしている、閉塞感を感じがちな主婦の方に、わざわざ集まって話すことでもないけれど、世界に発信できる場があるということは、ある種のセーフティネットになっているところはあるのかなと思います。日常を話せる相手がいれば、精神的に本当にまずいところまで追い詰められる可能性は低くなりますから。

いつも話しかけられる相手を探すツールとして、ゆるいネットワークであるツイキャスを使っていってほしいですね。誰かと会話をすることで、救われることはありますから。

ツイキャスの魅力は、「圧倒的なゆるさ」にありました。老若男女、誰もがライブ配信をして、そこを心の拠り所にする日がすぐそこまで来ているのかもしれません。

関連リンク:
イケボキャス主のユニット「Love Desire」
としやんのツイキャスとらくんのツイキャスkentyのツイキャスさっくんのツイキャス

小泉ちはる