精子は姉の夫が提供…レズビアンの妊活 実録マンガ『ゆりにん』カップルの現在

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精子は姉の夫が提供…レズビアンの妊活 実録マンガ『ゆりにん』カップルの現在

今年(2015年)8月、『ゆりにん~レズビアンカップル妊活奮闘記~』(ぶんか社)という実録マンガが出版された。Pixivで話題になった「日本初のレズビアンカップルの妊活コミック」だ。マンガ家の江川広実さんが絵を描き、BL小説家の藤間紫苑さんが原作として文章を担当した。

『ゆりにん~レズビアンカップル妊活奮闘記~』

『ゆりにん~レズビアンカップル妊活奮闘記~』

レズビアンカップルが妊活を始めた経緯

藤間さんとパートナーである会社員の牡丹さんは、交際23年めになる2011年3月、原発事故をきっかけに食の安全や健康を考え始めた。半年後、食生活の改善によって「人生で一番体調が良くなった」藤間さんは、友人のゲイ友から精子提供を受けたレズビアンカップルに子どもが生まれたことに触発され、「もしかしたら私にもできる!? 子どもを産みたい」と思い立った。

牡丹さんは子どもを夢見ていたが、自分で産むことは考えていなかった。そして、藤間さんが関節リュウマチと喘息を患っていることを心配した。だが、薬が効いて、発熱やだるさもなくなってきていた。医者から妊活へのゴーサインは出たが、すでに41歳。妊娠する可能性が下がっていることを指摘された。それでも、その日から基礎体温を測り始め、二人は「百合妊娠活動」に前向きに取り組もうとワクワクした。

子どもが、恋人から家族へ変えてくれる

そんな折、牡丹さんの部下でビアンの女性が倒れた。彼女のパートナーが真っ先に病院へ駆けつけたが、医師から求められた手術同意書のサインは家族でないためにできず、結果的に亡くなってしまった。葬式も行われなかった。その理不尽さにいらだつ藤間さんと、憔悴しきった牡丹さんとの気持ちにすれ違いも入り込んでくる。お互いにいろいろな不安が渦巻くのだ。

それでも、二人で街を歩けば、幼い子どもに目が行くようになり、自分たちの子どもを想像し合うだけで、その想像の子が自分たちを「恋人」から「家族」へ変えてくれるような気持ちを分かち合えた。

精子は姉の夫が提供するも…

二人で妊娠・出産に関する情報を探し合い、タイの病院にまで国際電話をかけたり、出産後の段取りを話し合っていると、タイで起こった大洪水で現地入りが困難になってしまった。すると、藤間さんの姉から電話が来た。姉の夫が精子を提供してくれるという。喜び勇んで義兄の元へ向かう藤間さんに、牡丹さんは「子どもが生まれたら家計苦しくなるよね。紫苑が倒れたらどうするの? 私、耐えられないよ」と動揺した。

ところが、ひと泣きするとケロッとした表情で「もう平気だから」と、藤間さんの義兄にシャーレを渡した。

1回めの受精は着床に至らなかった。ささいなことで大げんかになった。そこで、藤間さんは幼少の頃に母から受けた虐待がフラッシュバック。大きな音に激しく反応し、包丁や刃物が持てなくなってしまった。パニック障害だった。以前にギャンブル依存症で通院したことのある藤間さんは、精神科で薬を処方してもらった。「精神病で子どもを産んじゃっていいのかしら」と不安を覚えた時、自分が無意識に精神病に対する差別意識を持っていたことに気付かされた。その後も何度も着床に失敗した。

不妊治療は、成功しなかった人の情報が少ない

そのうち、藤間さんの姉が介護する母親が認知症になり、暴れて入院を拒否し、夫が介護に毎日せわしく通うことになった。精子を提供してもらう余裕が日々失われていく中、藤間さんの体に異変が起こった。ベッドの上で足も腕も固まって動かせない。「こわばり」という関節リュウマチの症状だった。高齢出産と介護が同時にやってきた大変さに加えて、母体自身の大変さ。二人の妊活はどうなったのか?

ここではあえて結末は書かない。二人が文字通り「身を持って体験」したことで得た豊かな学びを、買って読んでもらいたい。その後、マンションを購入した二人に、妊活がその後の人生にどんな影響を与えたのかを尋ねてみた。

「あれから不妊症について考えるようになって、いろいろネットで調べてるんですが、赤ちゃんができますという本がすごく多いわりに、できなかったという本はほとんど見当たらないという問題に気づきました。里親になることも考えていたことがありましたが、両親のどちらかが働いてないとなれないそうで、私たちのような共働きでは無理。知り合いを通じて養子縁組はべつでしょうけど。それでも、持ち家にしたことが妊活からできた夢ですね」(藤間さん)

「妊活を始めた頃、私はすでに管理職で、面倒くさいなぁと思ってしましたけど、妊活をしたおかげで『出世の機会があれば出世しよう』と思うよりになりました。また、『ゆりにん』を読んでくれたビアンの人が、妊活をアメリカでがんばったけど、できなかったことを話してくれました。誰にも話せなかったみたいで……。イベントなどに招かれれば、ぜひ私たちの体験を話してみたいです」(牡丹さん)

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