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2015/12/21

夫婦同姓規定を合憲とする判決が、議論が巻き起こしています。最高裁大法廷の15人の裁判官による多数決で決められたこの判決は、果たして本当に市井の人々の価値観が反映されているものなのでしょうか。フリーライターの小田慶子さんがTwitterで呼びかけ、独自に集計したアンケート結果とともに、夫婦別姓について考えます。

多数決で退けられた、夫婦同姓規定の判決

12月16日、最高裁大法廷で「民法が定める夫婦同姓規定は合憲」とする判決が出ました。原告が主張していた夫婦別姓は認められなかったことになります。15人の裁判官のうち、女性は3人のみで、その3人を含めた5人は「夫婦同姓の規定は違憲」としましたが、多数決で退けられました。1人の女性裁判官が発表した見解にはこうあります。「現状、96%の女性が夫の姓を称することは、女性の社会的・経済的な立場の弱さなどがもたらしており、意思決定に不平等と力関係が作用している」。

ここにひとつのアンケート結果があります。ネット上で今回の判決に対する賛成、反対などのさまざまな意見が噴出する中、筆者がTwitterで実施してみたアンケートです。フォロワー1000人規模の個人アカウントであるため、母数は303票と多くありませんが、「実際に夫の姓にしている妻の意見」に限定したので、あまり他では見られない参考データになりえるのではないかと思います。

96パーセントの女性が男性の姓に統一している

昨年、婚姻届を出した夫婦の96%が夫の姓に統一している。最新のデータで96%ですから、ほとんど100%に近い圧倒的多数の女性がそれまで名乗ってきた姓を捨て、男性の苗字に変更しているわけです。しかし、実はその妻たちの半数は、もし結婚したときに選択的夫婦別姓が制度化されていたら、「夫の姓には変えなかった」と答えました。これは既婚者で夫の姓にしている私個人としても、同じ思いです。このことをもっと多くの人に知ってほしい、特に男性や結婚前の女性に認識してほしいと思い、この記事を書きました。

申し遅れました。ウートピ読者の皆様には初めまして。私はフリーライターの小田慶子と申します。この名前は旧姓で、戸籍上は1998年に20代で結婚したとき、夫の姓に変更しました。その後も勤めていた出版社では旧姓を名乗っていましたし、フリーランスとなってからも旧姓で活動しています。自宅に仕事の資料が届くことが多いので、表札には「夫の姓/私の旧姓」を連名で掲げています。既婚女性の中でも「旧姓を名乗りたい」という思いと実行力が強いタイプだと言えるかもしれません。それだけに、正直言って、今回の最高裁の判決には失望しましたし、「私以外の既婚女性はどう思っているのだろう?」と知りたくなりました。

【アンケート1】戸籍を旧姓に戻せるなら、旧姓に戻しますか?

そこでTwitterアカウントで3問のアンケートを実施してみました。全て、現在、結婚していて夫の姓になっている女性に聞きました。その1問目がこちらです。

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「もし夫婦別姓が認められて戸籍を旧姓に戻せるなら、旧姓に戻しますか?」という問いには、76%の妻が「夫の姓のまま」と答えました。4分の3が現在のまま。しかし、既婚女性の4人にひとりが「旧姓に戻す」と答えたのは、「別姓にしたい人は少数派だ」と主張する別姓反対論者もいる中、無視できない数字だと思われます。

【アンケート2】「夫の姓のままでいい」と答えた理由は?

2問目では「夫の姓のままでいい」と答えた人にその理由を聞きました。

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例え夫婦別姓が認められても、夫の姓のままでいる。なぜなら「夫の姓でいることにストレスはないから」と答えた妻が半数近くの44%。これを分類すると、夫婦同姓を“積極的に”継続する人たちと考えて良いでしょう。

次に多かったのが「再び姓変更の手続きをするのが面倒だから」という答え。これは私自身も入籍時に、役所関連の書類はもちろん、所属会社、健康保険・年金機関への届け、銀行口座、クレジットカード、免許証、パスポートなどの氏名を変えるのが、会社員として忙しく働いている中、たいへんな負担だったので頷けるところがあります。Twitterのリプライでも「とてもめんどくさいので、今のままでいいです」「気持ちとしては戻したい。けれど手続きが面倒なので、もし実現しても戻さないと思う」という意見が寄せられました。この答えを選んだ39%は、夫婦同姓を“消極的に”継続する人と言えます。

そして、17%が「子供にとっては同姓のほうが良いから」という答えを選びました。別姓が認められ、夫と妻の苗字が違ってきた場合、子供の姓をどうするかというのは大きな課題であるとも言われていますが、これを一番の理由とする妻はそう多くはありませんでした。しかし、「子供のために旧姓には戻さない」という考えは、自分の気持ちより子供の気持ちを優先するという点で、“消極的な”継続派に含めてよいかもしれません。

【アンケート3】選択的夫婦別姓が認められていたら、夫の姓に変えましたか?

そして最後に3問目です。

1問目と2問目で、既に夫の姓となっている妻の多くは、旧姓には戻さないという傾向が見えましたので、仮定の話として「もし自分が結婚した時点で、選択的夫婦別姓が認められていたら、現在のように夫の姓に変えましたか?」と質問したところ、パーセンテージが変わりました。票が集まる間に40~55%で推移しましたが、最終的にきっちり半分、50%の妻が「夫の姓を選ばなかった」と答えたのです。

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1問目で「今後、別姓が認められても、旧姓には戻さない」と答えた人が76%だったのに対し、「結婚時、別姓にできたとしても、夫の姓を選んだ」という答えは50%に下がりました。これは2問目で44%の人が「夫の姓でいることにストレスはない」と答えた割合とほぼ一致します。

参考として、ウートピ世論で「夫婦別姓が可能になったら?」というアンケートが実施されていますが、未婚の人も答えているこのアンケートでは、「(夫ではなく)自分の苗字を使う」という答えが60%を超えています。

【参考】「夫婦別姓が可能になったら、あなたは?」ウートピ世論

半数の女性は「姓を変えたくない」

つまり、単純に分析して、既婚女性の半数は夫の姓を名乗ることに抵抗がなく、現状のまま夫婦で同じ姓を使いながら家庭を築きたい、続けていきたいと思っているということでしょう。しかし、そうでない半数の妻は、「もし自分が結婚したときに別姓が選べていたら、夫の姓には変えなかったのに」という不満を抱えたまま、結婚生活を続けていることになります。それは、今回の最高裁の判決理由にあった「夫婦同姓は社会に定着している」「旧姓の通称使用が広まることで一定程度は緩和できる」という論理で切り捨てて良いものなのでしょうか。

「もし別姓が選べたら」。女性の2人に1人以上は、「女が男の姓にするものだ」という社会的同調圧力を受けることなく、旧姓のまま生きられる自由を望んでいます。さらに、既婚女性でも4人に1人は、旧姓に戻したいというはっきりとした意志を持っています。今回、私の元に寄せられた意見のひとつにこんなコメントがありました。

「私は今の旦那の姓を名乗ることに違和感があり、本当の自分ではない感じがしています。でも、死ぬまでこのままなんでしょうね。せめて子供たちには夫婦同姓か別姓かを選べる世の中になっていてほしかったです」

多くの女性の希望と可能性をシャットダウンする夫婦同姓規定の継続は、婚姻制度に対する失望感と不信感を募らせるだけなのではないでしょうか?

(小田慶子)

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