女性が仕事に邁進しキャリアを積む道程で、周囲から羨望の眼差しを向けられることもあるだろう。また、同僚や後輩がうらやましく感じることもあるかもしれない。

そうした感情が度を超えたとき、嫉妬となり人間関係のいざこざが生まれるケースも少なくない。「嫉妬」によるトラブルを上手に回避するには、どんなスキルが必要なのか?

約7年間在籍したマイクロソフト日本法人の営業・マーケティング部門で当時貴重だった女性部長を務め、現在はブラマンテ株式会社の代表として「女性活躍推進」に関する研修やセミナーに力を注ぐ田島弓子氏に、嫉妬トラブルへの対処法を伺った。

女性の嫉妬心が芽生える3つのきっかけ

――職場において女性が「嫉妬」を感じる瞬間とは、どんな場面だとお考えですか?

田島弓子さん(以下、田島):女性同士に嫉妬が生まれる瞬間には、3パターンあると思います。1つめは、「上下関係が発生した」とき。一般的に男性は縦のつながりを重視するのに対して、女性は横のつながりを重視する傾向があります。横並びで「一緒にがんばろう」という意識を持つと、一気に仲が深まる。いい例が「なでしこジャパン」だと思います。しかし、組織において横並びのチームに上下関係が発生すると、とたんに輪が乱れたりします。たとえば、総合職入社のアラサー女性は、在籍20数年の事務職の先輩とはやりにくさが生じたりしますよね。

2つめは、「不平等が発生した」とき。チーム内でひとりだけ上司から特別扱いされたり、同期入社なのに、ひとりだけ突き抜けて昇進したり。特別扱いや過大評価をする上司に問題がある場合でも、その不満の矛先は上司ではなく、当事者の「女性」に向かってしまいがちです。

3つめは、「ライバル心が芽生えた」とき。同じポジションを担っていたり、スキルが同等の相手とは嫉妬心が自然と湧いてくるものです。さらに、責任感があり仕事が好きな女性ほど、嫉妬心が起こりやすい傾向も。女性は表立ってケンカをするというより、心にモヤモヤを抱えたり、陰で不満を漏らしてはけ口にすることがありますよね。

イライラしたら、仕事人の自分と向き合う

――嫉妬心が止まらなくなってしまったとき、どうしたら精神を安定させられるでしょう?

田島:イライラやモヤモヤが生じたときは、仕事人として自分と向き合ってみましょう。仕事を軸として考えると、自分の感情よりも「仕事の責任を果たすこと」「仕事で結果を出すこと」が一番重要。感情の矛先を自分の内ではなく外に向ける。もし、その嫉妬がポジティブパワーとなり事の結果につながるならいいですが、自分にとってプラスにならない感情なら、悩むだけ時間のムダだと早く気づくことです。

問題なのは、自分の感情が「嫉妬」だと気づけないとき。被害者意識しかないと、どんどん自分のほうしか向かなくなるので、「この感情はなぜ起きたのか? 仕事にプラスになるのか?」と自分に質問する習慣をクセづけるといいかもしれません。

嫉妬を感じる自分に自己嫌悪する必要はありません。アラサー世代になってキャリアを積み上げてくれば、これまでとは違ったフィールドの人と仕事をする機会も増え、分野・年齢・価値観などが異なる相手とは、基本的に居心地は悪いものです。しかし、「自分はプロなんだ」との自覚を持ち、ときには感情を殺してロボットのように振る舞う。自分の心を上手にマネジメントして、いい意味で「気持ちで仕事をしない」ようになれば、感情に振り回されることもありません。おのずと結果もついてきます。

もし、自分で抱えきれないほどマイナス感情が肥大化してしまったときは、信頼がおける相手に話を聞いてもらうのもひとつの方法。話しているうちに状況が整理できて、自然と答えが導けることもあります。

苦手な相手ほどメールより顔を見て会話を

――自分が嫉妬されている立場で、無視されたり攻撃を受けている場合、非常に仕事がやりづらくなると思いますが、ベストな解決法はありますか?

田島:ストレスは感じるかもしれませんが、相手が直接言ってこないことは気にしないのが一番だと思います。「仕事に支障が出るか」を考え方の軸にして、たとえば情報共有できないことで仕事が滞る場合などは、なんらかの対処をすべきですが、そうでないなら放っておく。私も他人の評価や目線は気になりますが、世の中には合う人・合わない人がいて当然だし、全員に好きになってもらうなんて最初から無理な話ですよね。それを踏まえたうえで、「あの人の気に障るなにかが私にあるんだろうな」と原因を分析してみてもいいかもしれません。相手の立場に立つと自分はどう見えているのか、一歩引いて冷静に考えるクセをつけると、解決のヒントが見つかるのではないでしょうか。

私の場合は「苦手な人ほどFace to Face」というマイルールを作り、苦手な人ほどメールやテキストを使わず、直接話をするようにしています。テキストでのコミュニケーションは、ビジネスライクになりがちで心が伝わらないことがあるので、いらぬ誤解を生まないためにも、「ちょっとご相談したいことがあるんですが……」と敵陣(相手のデスク)に乗り込む(笑)。そのとき、ちょっとしたことなんですが、デスクの横にあるゴミ箱に座り、相手より目線を低くして向こうが偉く見えるような関係性を作っていました。相手も嫌な気持ちにはならないみたいで、案外効果的でしたね。

【後編はこちら】女性は「とにかく、やれ」では動かない 成果を高めるマネジメント術

田島 弓子(たじま・ゆみこ)

1967年生まれ。成蹊大学文学部卒業。IT業界専門の展示会主催会社などにて、マーケティング・マネージャを勤めた後、1999年マイクロソフト日本法人に転職。約8年間の在籍中、Windowsの営業、マーケティングに一貫して従事。在籍中、個人および自身が部長を務めた営業グループでプレジデント・アワード2回受賞。また社内幹部候補としてリーダーシッププログラム等への参加経験も持つ。
2007年キャリアおよびコミュニケーション支援に関する事業を行うためブラマンテ株式会社を設立。組織におけるキャリア、コミュニケーションに関する事業、特に、「仕事が面白くなる」若年層向け働き方論、中間管理職、現場リーダー向け、人を動かして仕事の結果を出すためのビジネス・コミュニケーション、「女性活躍推進」のための女性および男性管理職向け育成支援などをテーマに、社員研修、セミナー、各種執筆活動を行っている。

小林香織

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