佐々木俊尚氏インタービュー(後編)

時代を生き抜く“多様な働き方”とは? 佐々木俊尚が「仕事」の変容を占う

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時代を生き抜く“多様な働き方”とは? 佐々木俊尚が「仕事」の変容を占う

ジャーナリスト・佐々木俊尚氏に働き方について聞くインタビュー後編。

高い能力を武器に第一線で活躍する「バリキャリ」と呼ばれる女性も続々と登場している。そうした華々しい姿が注目される一方、自分らしい働き方を模索し続けている女性も多いはず。インタビュー後編では、これからの時代を生き抜くための女性の働き方について学ぶ。

【前編はこちら】「ワークライフバランスは、企業任せじゃ実現しない」佐々木俊尚が語る、“女性が輝く社会”の現実

「性」を捨て去って働くのはいいことなのか?

――仕事で活躍している女性というと、「バリキャリ」を連想しがちな気がするのですが、どのようにお感じになりますか?

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):選択肢の多さは重要だと思います。ただ、「男女雇用機会均等法」ができて「男女共同参画者社会」になり、どうなったかというと女性もキャリアウーマンにならなくてはいけない圧力が異常に高まってしまった。これは世界的にも同じだと思います。そうすると、女性としての性を捨て去って働くことが、本当にいいことなのかという指摘がやはり出てくるわけです。黒のスーツを着てバリバリ働くキャリア女性は「男の劣化コピー」になってしまう。

それは、女性としての性を活かしつつ働くというロールモデルにはなっていない。それに対してのアンチテーゼが「ハウスワイフ2.0」(※)ではないでしょうか。

(※)伝統的な専業主婦とは一線を画す新しい主婦のタイプ。男性主導の伝統的な企業社会に組み込まれ、仕事に追われる生き方ではなくブログやSNSで社会とつながりを持ち、手作りのスイーツや服をネットで売るなど、近年登場した新しい主婦像の総称として用いられる。

もっと多様な働き方が増えていい

――企業に滅私奉公して働くことがすべてではないと。

佐々木:男女問わず、本当はもっと多様な働き方があっていいのと思っています。たとえば、「しゅふJOBサーチ」という専業主婦向けの、パートなどの仕事を紹介するサイトなんですが、そこが新たに“正社員でなく能力を活かしてパートをしたい”というハイキャリア人材と企業をマッチングさせるサービス「時短エグゼ」をスタートさせました。

求人のなかには「上場準備」とか高度なものもあるのですが、週2日勤務パートで、月収20万円程度ですが、仕事より子育てのほうが大事ということで、ニーズがあるんですよね。

――ただ、そうした求人に適する人材は、そう多くないようにも思えます。

佐々木:そんなハイキャリアなかなか作れないですよね。ごく一部の人の世界で、社会全体に適応できるわけではない。たとえば、高校を卒業して、非正規の仕事を転々としている女性に「これからはキャリアですよ」と告げたってリアリティがない。

大多数は非正規雇用やシングルマザーで貧困も社会問題化しているわけです。グローバルエリートとかクリエイティブクラスの話ではなく、普通の人はどうするのかを考えていかなくてはいけませんよね。

自分で「セーフティネット」を生み出すには?

――個人の能力を磨く努力が必要ということで片付けられがちですよね。

佐々木:現実的な解決策というのは存在しにくいですよね。いま色々なものが過度期で、どんな大企業も傾く時代ですから、就活に成功したからといって安心かというとそんなこともないわけです。10年20年後には、会社がどうなるか誰も分からない。そうなってくると、正社員かどうかはもはや関係なくて、むしろ自分のなかでいかにセーフティーネットを作るかということが大事になるのと思います。

佐々木俊尚さんインタビュー(後編)

佐々木俊尚さん

――セーフティーネットとは具体的にどのようなものでしょうか?

佐々木:仕事の多様性を持つということですね。たとえば、戦前は小商い(こあきない)を当たり前のようにやっていたんです。「夏はわらじを編んで、冬は焼き芋を売る」みたいに、ひとりがさまざまな仕事をしていました。それが戦後、企業社会になって一つの企業に全部依存して食べていくというモデルが定着し成功した。しかし、それは極めて一時的で半世紀も続いてない枠組みにも関わらず、あまりにもうまくいったので皆引きずられている。いまの日本の60代や70代の指導者層は、その枠組みの恩恵を受けた人たちです。そういう人たちは口を開けば、「今時の若い者は辛抱が足りない」と言いますが、辛抱し続けて何十年も勤める方が異常なことっていうのに気付かなければいけないですよね。

女性の働き方も同じで、戦前は共働きが普通でしたし、職住近接だったので子どもとも一日中一緒にいる。その辺りで子どもを遊ばせながら仕事をしていたので、育児の悩みもそんなになかったんです。

今後、新しい働き方の枠組みが定着していく

――育児を取るか、仕事を取るか究極の選択を迫られることもないわけですよね。

佐々木:そうですね。いまだと、30代になると出産のターニングポイントが近づいてきて、焦りはじめるわけですよね。そして仕事か育児かという二者択一を迫られることがほとんどですが、理想を言えば子育てもして家で美味しいものもちゃんと作って食べる、そして仕事もしっかりしていて、収入もいいという状態は不可能ではないと思います。

リーマンショック以前は女性の働き方というと、典型的なキャリアウーマン志向しかなかったですが、この5年くらいで変わってきました。自宅でゆるく働きながらもちゃんと業績もあげている、そんな女性たちが徐々に出てきました。彼女たちの存在が注目され、社会に定着すること、新しい働き方の枠組みも定着してくるのではないでしょうか。

将来、大事なのは「いかに職住接近できるか」

――住まいや暮らし方も異なることも大きいのでしょうか?

佐々木:江戸時代の長屋は井戸や洗い場が路地にあって、プライベートでもなくパブリックでもない空間があるなか皆で暮らしていました。しかし、我々は産業革命以降にそうした中間領域をなくしてしまった。夫婦の空間をあまりにも閉じてしまって、二人きりのものを必死で守らなくてはならないという発想になりました。

パブリック空間があった頃は外部とつながることができるので、子育てなども手伝ってもらえますし、食事のおすそわけなんてことも普通にあったわけです。家庭が開かれてより気楽なものだったんですね。ただ、最近日本は徐々に共同体的を取り戻そうとしているようにも感じます。シェアハウスの浸透も一例ではないでしょうか。

まずは、将来的にはいかに職住接近できるか、さらにいうと職場に子供を連れてきてもおかしくない状況を作るというのが結構大事なんじゃないかと思います。

――制度が整っても遠慮なく連れてこられるかというと、ハードルが高そうですよね。

佐々木:会社が子どもを連れてきてもいいですよという制度を作ったとしても、きっと空気を読んで連れて行かないですよね。たとえば、営業先に電話をしたときに子供がぎゃーぎゃー泣いていたら、失礼かもしれませんがどの会社にも赤ちゃんがいたら気にしなくなりますよね。制度を変えるだけでなく、我々自身も文化を変えていくしかないと思います。

そして、繰り返しになるようですが、自助努力の部分としてセーフティーネットを張っていくことです。3万円ビジネスのような小さなビジネスでも、積み重ねれば結構な収入になったりするので、そういう意味では今はネットが繋がっていればできる仕事もたくさんあるので、いい時代かもしれないですね。そして、困ったときに助け合えるような、つながりをたくさん持つ努力することが本当に大事になってくると思います。

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