フェアトレードブランド「ピープル・ツリー」代表 サフィア・ミニーさんインタビュー(前編)

SNSで「意識高い系」と揶揄されるのは日本だけ フェアトレードの欧米事情

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SNSで「意識高い系」と揶揄されるのは日本だけ フェアトレードの欧米事情

ファッションの世界で近年、よく聞かれるようになった「エシカル」や「フェアトレード」という言葉。「エシカル」=「倫理的な、道徳上の」と訳され、エシカルファッションとは、地球環境や社会課題に配慮した工程で作られたアイテムを指す。

それらを購入するのは「良い事」だと、なんとなくは分かっている。ただ、どこか他人事で、つい安価でトレンドにがっちりはまったファストファッションのお店に足を向けてしまう女性は多いのでは。

そんなファストファッションの裏に隠された生産者の人権問題や環境破壊といった“闇”にスポットを当てたドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』が渋谷アップリンクで公開中だ。単館上映ながらじわじわ支持を伸ばし、1日あたりの上映回数を増やしている。同作の製作に協力しているのが、フェアトレードブランドの先駆け的存在「ピープル・ツリー」代表のサフィア・ミニーさん。エシカルファッションを取り巻く潮流について、また、日本や欧米の消費者の意識の違いになどについて、お話を聞いた。

関連記事:ファストファッションは悪か? 『VOGUE』元編集者らが服への思いを語る

日本でも環境に対する意識が高まってきた

――1990年に来日され、翌91年にピープル・ツリーの母体である環境問題と国際協力に取り組むNGO「グローバル・ヴィレッジ」を設立されてからおよそ25年。環境に対する日本人の意識は当時と変わったと感じますか?

サフィア・ミニー代表(以下、サフィア):全然違いますね、意識が高くなりました。当時はものすごくムダの多い国でしたから(笑)。ちょうどバブルが弾けた頃で、ギフトへの過剰包装もそうですし、母国のイギリスではすごく大事に使い続けるようなステレオとか新品に近いものが道に捨てられていたりして、「どの先進国もこうなったら、地球はパンクする!」と日本に来て初めて意識しました。日本もイギリスも島国ですが、消費力はすごいですよね。

――でも、イギリスの方がエシカルファッションやフェアトレード(※1)に対する意識は断然高いですよね。2014年のフェアトレード商品の売り上げは、イギリスが約21億ユーロ、対して日本は約0.6億ユーロです(※2)。

サフィア:イギリスでは30年くらい前から、政府や協会によるフェアトレード商品へのサポートがあったからだと思います。日本は公的な助成金などほとんどないので、自力で運営しなくてはいけないフェアトレード団体は大変です。

※1:フェアトレード:開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指ざす「貿易のしくみ」(Fairtrade Internationalの定義より)

※2:国際フェアトレード認証ラベルを取得している商品が対象(参考リンク

「フェアトレードは自己満足」認識を変えるには

――日本では、フェアトレード商品はお金に余裕のある人が自己満足的に買うものだという見方をする人も少なからずいます。そんな層もいるなかで、フェアトレードの価値をどう伝えていけばいいでしょうか。

サフィア:通常のファッションブランドは、リビングウェイジ(一定の生活水準を送るための最低賃金)の保証もないし、環境をどんどん汚してる。一方で、オーガニックコットンを栽培から加工、流通まで徹底した管理をし、環境保護もしっかり続けたいと思うとかなりのコストがかかるので、私たちの商品はファストファッションのように安くはなりません。とはいえ、直接つくり手とつながっているため中間マージンがない分、手仕事の手間暇がかけられている割には手頃な価格帯での提供ができていると思います。

最近は、多国籍企業のファストファッションブランドが作ったトレンドに従うことに疑問を持って、環境を汚さず、公正な賃金を払って大事に作られたものを買いたいという人が日本でも増えていると思いますよ。ドイツはすごいんです。透明性のある商品しか買いたくないとか、20代からいろいろと意見を持っている人が多いですね。

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――意識の違いを感じますね。ファッションに限らず、日本人には「自分ひとりが頑張っても世の中は変わらない」と考える傾向が強い気がします。

サフィア:個人レベルでは力は限られているかも知れない。でも、100人、1000人、1万人がオーガニックコットンの商品を買うと、全然違ってきますよね。農家さんたちにとって、環境にとって、気候にとって。欧米では“I want to be part of the solution.”(問題を解決する側に立ちたい)という言い方もありますけど、自分がただの消費者になりたくない、大企業に騙されている側の人間になることに不安を感じている人が多いんです。

欧米では「多国籍企業に騙されてるのはかっこ悪い」

――日本では、例えばフェアトレード商品を買っただとか、オーガニックのこの食べ物が美味しいみたいなことをSNSに投稿したりすると、「意識高い系」などとネガティブなコメントをつけられてしまうこともあります。欧米ではどうでしょう?

サフィア:ないですね。逆に自分が多国籍企業に騙されてるってことの方がカッコ悪いという傾向があると思います。インスタグラムで「こんな古着買いました」とか、「お母さんのワンピースです」とか「ヴィンテージです」とか、“スタイリングさえ良ければ”そういうものをアップすることをむしろ好んでいる感じ。みんなが参加することで今のファッション業界を変えていきたいというファッションレボリューションが盛り上がってきていますよ。

“スタイリングさえよければ”——ミニーさんが言ったこのフレーズ。フェアトレードの商品が広く定着するかどうかは、ここがポイントになりそうだ。

【後編はこちら】社会的意義を振りかざしてもモノは売れない フェアトレードブランド代表の思い

■公開情報
『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』
監督:アンドリュー・モーガン プロデューサー:マイケル・ロス
製作総指揮:リヴィア・ファース、ルーシー・シーゲル
出演:サフィア・ミニー、ヴァンダナ・シヴァ、ステラ・マッカートニー
ティム・キャッサー、リック・リッジウェイ
配給:ユナイテッドピープル 特別協力:ピープル・ツリー 協力:Dr.Franken
2015年/アメリカ/93分

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