NPO法人「マドレボニータ」吉岡マコ×占い師・まついなつき 対談(前編)

“どん底キャリア”から浮上したシングルマザー「活躍できる場がないなら作るしかない」

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“どん底キャリア”から浮上したシングルマザー「活躍できる場がないなら作るしかない」

自分がやりたい仕事をしている会社が存在しない、子どもがいるから夜は働けない――仕事への悩みは立場によってさまざまです。何かに折り合いをつけて会社に所属し続けるのも一つの選択肢ですが、自分で“作り出す”という道もあります。

『みんなに必要な新しい仕事 東大卒25歳、無職のシングルマザー、マドレボニータを創業する』(小学館)の著者である吉岡マコさんは、そんな女性の一人です。大学院在学中だった1998年に24歳で出産し、のちにシングルマザーに。出産をきっかけに、産後女性の心身回復をめざす教室を運営するNPO法人「マドレボニータ」を立ち上げました。2015年の「Googleインパクトチャレンジ」でWomen Will賞を授賞し、5000万円の賞金を獲得したことでも知名度を高めた、注目の女性社会起業家です。11月18日には、下北沢「本屋B&B」にて、吉岡さんの出版記念イベントが開催されました。

吉岡さんとトークしたのは、占い師・まついなつきさん。3人の子どもを持つシングルマザーで、高校在学中から漫画の論評雑誌を編集、出版している小さな会社に出入りしていたことが縁で、フリーランスの漫画家、ライターの道へ。ベストセラーとなった、妊婦日記『笑う出産』の著者であり、40代で占い師にキャリアチェンジした経歴の持ち主。現在は占い師が集う、南阿佐ヶ谷にある占いの館「ウラナイ・ トナカイ」を運営されています。

おふたりは、お子さんが保育園からの同級生で、長年のママ友。そんな仲良しのおふたりが「仕事がないならつくればいい どん底からのキャリア論」をテーマに語りました。前編では、前述した吉岡さん著書の編集者・黒田泰子さんが司会をつとめ、どん底からのキャリア構築について話します。

会社に属さない働き方とは

黒田泰子さん(以下黒田):吉岡さんは、「マドレボニータ」という団体の代表ではありますが、最初はたったひとりで産後ケアの教室を始められました。まついさんは就職の道を選ばず、ずっとフリーランスでやってらして、現在は「ウラナイ・トナカイ」というお店をご自身で開かれました。そんなおふたりから見た、会社や組織に属さずに働く楽しさや、大変さを教えてください。

吉岡マコさん(以下吉岡):まついさんは、私にとって、「会社に属さずに働く働き方があるんだ」ということ生身で見せてくれた初めての人。その存在に励まされていました。本にも書いてありますが、1998年当時、乳飲み子を抱えて何のキャリアもない女の人が、どこかに雇ってもらい、力を発揮するという機会が本当になかったんですよね。ないならば、自分でそういう機会を作るしかない。そういう発想だったんです。けれど、身近にはそういうロールモデルがあまりいなくて、数少ないワーキングマザーのロールモデルといえば、公務員か、大企業の正社員か、研究者か、既存の“レール”の上で活躍しているかたが多かった。そんな中、自らそのレールを作っている人がいる。それだけで新鮮でした。

まついなつきさん(以下まつい):自らレールを作っている気は全然なくて、そもそも保健室の先生になろうと思っていましたから。でも、高校在学中から漫画の論評雑誌を編集、出版している小さな会社に出入りし、インタビューやカット描きを始めたら、お金がもらえて。元々、実家が自営なんですね。だから、根本的なところで、誰も面倒は見てくれないから、自分で何とかするしかないと思っていました。お金がないからああしようこうしよう、ではなくて、「何がおもしろいかな?」「こういうのができるかな?」とそれだけで。目の前のことがおもしろいと、それを伝えた。いだけで、働いているという意識はなかったです。当時、時代が良かったこともありますね。

吉岡:景気が良かったんですよねぇ。

まつい:私は漫画家になりたいとか、作家になりたいというよりも、「これをやってください」と言われることをやるってました。やったこともないのに、お店のアポイントをとって、雑誌の口絵4Pの取材に行ったり。今も、今度近所のお店と合同で行なうイベントで、あなたはアロママッサージね、あなたは水晶でリーディングしてくださいね、とか素敵なオファーがある中、「まついさんはおでんをお願いします」と言われ、わかりました、と(笑)。その場で大根やこんにゃくの原価計算をすぐ始める。占い師なのに。そういう感じで、言われることに対して応えていただけ。だから、マコさんがやっている産後ケアのような、どちらかというと社会的に必要な仕事というわけではなくて。マコさんは、もしもすでに産後ケアの仕事をやっている組織や会社があったら、そこに入っていたんだよね?

吉岡:国連とかね、そういうところがやっていれば、そこの職員になっていたかもしれない。

シングルマザーが語る“どん底”からの浮上

左:吉岡マコ 右:まついなつき

「夜は働けない」事情が仕事のきっかけに

まつい:マコさんの仕事は、世の中に本当になかった仕事なので、自分でやるしかない。そこがマコさん、狂ってると思う(笑)。普通、世の中にこういう仕事ないなぁ、と思ったらやろうとは思わない。世の中にこういう仕事ないんだぁ、残念、終わりなんです。

吉岡:ほかに活躍できる場があるなら、そこに行きたかったですよ。でも、なかった。

まつい:わたしは初級占星術講座の講師として教える仕事もしているんですが、生徒さんがメキメキと腕を上げて、すばらしい技術が身につく。もうどこでも通用するよ、と言って、占いのお店に面接に行くと、みんな落ちてくるんですよ。

吉岡:なんでですか?

まつい:子どもがいるから、夜に働けない。占いの店は夕方からのところが多いから。だから昼12時に開いて、子どものお迎えの時間に間に合うように、18時に帰ってもいいという店を自分で作った。

吉岡:できるだけ午前中からお昼に仕事をしたいんですよね。この本にも書いたのですが、わたしは学生時代、塾講師で時給5000円もらっていて、稼ぐのはちょろいと甘く考えていました。でも、子どもが生まれてからは、夜、子どもと一緒にごはんを食べて、読み聞かせして寝るという生活がしたかった。そのために、朝と昼間だけしっかり働く仕事をしようとすると、機会は限られてきてしまう。それで、自分で何か始めるとしたら、昼間にターゲットになる人が誰だろう、と思って浮かんだのが、私と同じように赤ちゃんを抱えた人だった。そこらのスタートですね。そのあたりはまついさんと似ていますね。

キャリアの“どん底”から、どう浮上した?

黒田:ご自身がキャリア的にどん底で、どうやって浮上しましたか?

吉岡:最初のご質問で「会社や組織に属さず働く楽しさや、大変さを教えてください」とありましたが、今、わたしはNPO法人「マドレボニータ 」の法人格を持った組織を作ってしまったので、組織に属して働いていることになります。法人としては9期目に入ったところです。組織は、良さもありますけれど、本当に大変ですね。属さずに個人レベルでやっていたほうが、全然ラクです。組織にすると、いろいろな方が大勢関わり、それを回していくためのスキルが必要です。

でも、わたしにはそのスキルがなくて、それが本当にしんどいなと思ったのが、去年です。どうやって浮上したかというと、世の中には管理体制を整えていくことが天職みたいな、組織を回すのが上手な人がいるんですね。そういう方に、いかにジョインしてもらうか。組織をやっていくなら、それに尽きると思っています。

社会起業家になりたい、という人は大勢いますけれど、個人では絶対にできないので、自分ができないことをできる人に、いかに情熱を持って、ジョインしてもらえるか。いい条件を提示して入ってもらうのではなくて、本当にやりたいことが合致して、その人のビジョンと自分たちのビジョンが合致してともに働く。でも、それは自分の手腕というよりも、運とかいろんな流れとかがあると思います。

「ビジョン」は修正しながら作ってきた

まつい:マコさんがうらやましいよね。産後ケアを、お産しているお母さんのみならず、世界で暮らしている人たちのために、「産後にはリハビリが必要だ」という、きちんとしたビジョンがあるじゃないですか。でも、私にはビジョンがないので、常に目先の自転車操業。

吉岡:ビジョンは一朝一夕で作ったものではなくて、いろいろ修正しながら作ってきたものでもあるんですよ。たとえば、すべての人に産後ケアを届けたいとおもったときに、年間出生数である100万人の母に「マドレボニータ 」のプログラムそのものを受けてもらうことは実質、無理なんですよ。でも、無理と言ったら、みんながっかりしますよね? では何をもって「すべての母に産後ケアを」と定義するか、たとえば、母子手帳に産後のことが掲載されるようになれば、事実上、全ての人に産後ケアの知識が広まると謳えるかなとか、そういうことをすごく考えて、ディスカッションして、そのうえで中期経営計画を立てたりしてきました。

まつい:わたしが横で簡単にいいな~、なんてマコさんを羨ましがるような簡単なものではない。

吉岡:そうです(笑)。わたしが歯切れ悪いと、器が小さいとか言われたりとか、何も言ってないのに「マドレは選ばれた人のものなんでしょ」「自分磨きですか~?」とか誤解されたり。そういう陰口は、直接じゃなくて、間接的に聞いたりするから、お返事ができない。そういう悔しい思いもしています。

【後編はこちら】 このまま今の会社に甘えていいのか…キャリアアップに不安を感じたときにすること

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