(左から)能町みね子氏、久保ミツロウ氏、ヒャダイン氏

(左から)能町みね子氏、久保ミツロウ氏、ヒャダイン氏

32年間にわたって放送された『笑っていいとも!』が終わりを迎え、「タモロス」症状を訴える人も増えている今日この頃。そんななか、タモリイズムを引き継ぐ番組として期待を寄せられているのが、4月4日に全国版SPが放送される『久保みねヒャダ こじらせナイト』だ。

そもそも、「こじらせ」という言葉を耳にするようになったのは、つい最近のこと。ライターの雨宮まみさんの著書『女子をこじらせて』に由来して、流行のファッション、モテに疎い女子を指した「こじらせ女子」という言葉は「2013ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされている。

同番組に出演しているのは、ドラマ・映画化されたことでも話題となった漫画『モテキ』の作者である久保ミツロウさん、エッセイストの能町みね子さん、音楽家のヒャダインこと前山田 健一さん。「こじらせ系クリエイター」ともいわれるこの3名が、妄想など独特の観点で世の中を捉えたトークを繰り広げる「文化的おしゃべりバラエティ」である。

現在、毎週土曜日25:35~25:55(フジテレビ系)という深夜の時間帯に放送されているが、それぞれの「こじらせ」をユーモアに昇華させたトークが共感を呼び、ファン層を広げている。そこで、番組の人気の秘密を探るべく、同番組プロデューサーであり演出を担当されている、木月洋介さんにお話を伺った。

きっかけは久保さんの「いいとも」出演

インタビューに応える木月洋介氏

インタビューに応える木月洋介氏

――2012年12月から不定期で放送されていた『久保ヒャダ こじらせナイト』ですが、現在能町さんを加え『久保みねヒャダ こじらせナイト』としてレギュラー化されています。番組が始まるきっかけはなんだったのでしょうか?

木月洋介さん(以下、木月):僕が『いいとも』月曜日の演出を担当していたとき、久保ミツロウさんが『ちょっと怪しい課外授業』のコーナーに登場してくれました。それまでずっと、テレビ出演は断られていましたが、「一度でいいからタモリさんに会いたい」ということで出て下さりました。タモリさんや千原ジュニアさんとの妄想恋愛ストーリーなどを展開するのですが、そのときの反響がすごかったこともあり、各局の番組が一斉に出演オファーをしたのですが、久保さんは全て断っていました。そこで、僕は久保さんが出演されているニッポン放送のラジオ番組の現場に毎週通ってお話をさせてもらい、久保さんの冠番組の企画を承諾して頂きました。「タレントが脱がされるときってこういう感じなのかしら」と言われましたけど(笑)。そういった訳で、番組は企画ありきではなく、久保さんの良さを出すにはどんな企画がいいかという発想から始まりました。

誰もがなんとなく抱いているイメージをさらっと言葉にできる分析力

――番組のなかでは、「こじらせトーク」や「こじらせソング」など、レベルの高い妄想トークが繰り広げられていますが、他のタレントさんにない魅力はなんでしょうか?

木月:番組のなかでも特に人気なのが「こじらせソング」なのですが、歌詞から読み取れることを深読みして解釈する3人のトークは、すべてその場で初めて繰り広げられているものです。最近では即興で作曲をする企画もありますが、これも台本はありません。これは3人が尊敬してやまない、タモリさんのイズムを彷彿させると僕が勝手に思っているのですが、あの予定調和の一切無いジャズセッション感と、そのスピード感たるや目を見張るものがありますね。3人ともクリエイターということもあって、何かを生み出す反射神経は並大抵ではないと思います。

――番組のなかで主にトークを引っ張っているのは、久保さんのような気がするのですが、木月さんから見た久保さんの「ここがすごい!」と思うポイントはどんなところでしょうか?

木月:誰もが納得できるというか、腑に落ちる名言が飛び出すところでしょうか。最初にすごいと思ったのは『いいとも』に出演したときに残した、「千原ジュニアはブログがつまらない女と結婚しそう」というコメント。これには「綺麗な女の子は大抵ブログが面白くない」「ジュニアさんは笑いには厳しいが、女性には笑いではなく結局、可愛さを求めていそう」という意味が込められています。スタッフ一同大爆笑で盛り上がり、じゃあジュニアさんと付き合ったらどうなりますか? ということで、妄想恋愛トークが広がっていきました。もちろん、久保さんはジュニアさんと面識はありませんが、誰もがなんとなく抱いているイメージをネガティブな表現ではなく、さらっと言葉にできる分析力がすごいと思います。

――番組では色々な名言も飛び出しますよね。

木月:番組内で生まれた名言のなかでも印象に残っているのは、ロンブー淳さんの結婚相手を「プロ彼女」、紅白歌合戦の司会を務めた際、しくじりながらも「可愛い」で許された「綾瀬はるかの帳消し力」などですね。「こういう言葉があると日常が豊かになる」「新しい視点や発見を手に入れられる」「ユーモアがあって前向きになれる」ということで、視聴者の方に共感とともに受け止めてもらえているのではないでしょうか。

「社長キャラ久保」「共感系能町」「殴られ系MCヒャダイン」が生み出すグルーブ感

インタビューに応える木月洋介氏

――毎回ゲストを呼ばず3人だけでトークをするというのは、バラエティのなかでも数えるほどですよね。

木月:決してテレビ慣れしているわけではない3人ですが、集まってトークをするとバランスがすごくいいので、誰かを入れる必要はないかなと思っています。久保さんはとにかく、妄想が暴走していくタイプでご本人曰く「社長キャラ」。話のスピードも早いので、時々追いつけないかもと思ったときに、共感型の能町さんが鋭いワードでまとめてくれたり、さりげなく説明をはさんでくれます。ヒャダインさんは、ふたりにマウントをとられながら、決して否定もしないし自分からグイグイ回しては行かない新しいタイプの「殴られ系MC」という分野を切り開いていっている気がします。この3人の絶妙な掛け合いによって、「こじらせ」が笑いに昇華していってると思います。

4月4日(金)には、いよいよ全国ネットで初放送となる同番組(当日はスペシャル版で23:00~23:45の放送)。これからも今のスタイルを変えずにやっていくそう。こじらせ枠を牽引するトップクリエイター「久保みねヒャダ」の3人が、今後テレビ界でどのよう旋風を巻き起こすのか。ちなみにスタッフは、ほぼ『いいとも』の担当者。タモロスの人もそうじゃない人も、きっと番組から目が離せなくなるはず。

末吉陽子