神奈川県海老名市の鶴指真澄市議が11月28日夜に、同性愛者について「生物の根底を変える異常動物」などと自身のツイッターに投稿していたことが分かり、ネット上で批判を集めた。鶴指議員は「不適切な表現だった」とツイートし、謝罪したが、未だ非難の声は収まらない。

2000人以上の老若男女にインタビューした亀山早苗さんは、発言について「この市議会委員に限らず自分が常識だと思っていることから外れた事物を受け入れられない人は多い」と分析する。(編集部)

同性愛者は「異常動物」!?

何ともインパクトのある言葉を発したものだ。市議会議員という立場にありながら。

神奈川県の某市議会議員が、「同性愛者は、生物の根底を変える異常動物」とツイッターに書いたという。当然のことながら、この差別発言は批判を浴び、議員は「酒に酔ってふざけて書いた」と弁明。これがまた、火に油を注ぐ結果となっている。

今の時代、下劣な差別発言だと怒る気持ちももちろんわかるが、私は「同性愛者は気持ち悪い」とちらりとでも感じている人は、実は少なくないと思う。

「男は女を好きに違いない」
「女は男を好きに違いない」
「男と女が生殖行動をともにするべき」

こういう思い込み、あるいは教育による刷り込みによる価値観をもっていれば、「同性愛」は、そんな「常識」からはみ出してしまう。差別してはいけないと思いながらも、「受け入れられない」と感じる人がいてもおかしくはない。

「同性愛者」と「普通の人」と考えるから差別が生まれる。そういうくくり方をしたいなら、「同性愛者」と「異性愛者」と「両性愛者」がいるのである。それは本人の指向によるものであって、他人がとやかく言うものではない。

“理解できない他者”はどこにでも存在する

かつて、両性愛者の友だちが嘆いていたことがあった。

「同性愛も異性愛も、相手の性別が決まっているという意味では同じなのよ。だけど私みたいな両性愛者は、どちらからもいじめられる。中途半端だって」

確かに。いちばん生きづらいのかもしれないなあと思ったものだ。

一時期、新宿二丁目でゲイバーの雇われママをしていたことがある。ゲイの方たちとも仲良くさせてもらった。彼らのうちのひとりが、私の不倫の本を読んでくれ、「ヘテロ(異性愛者)もけっこう大変なのね。恋愛で大変なのは私たちのほうだと思っていたけど、ヘテロも苦労してるんだって初めてわかった」と、にっこり笑ってくれたことがある。

彼らが異性愛者を理解できないように、異性愛者も同性愛者を理解できないことがたくさんあるのだ。

頭の固い人は、柔軟に対処するのはむずかしい

今回の市会議員は、昭和19年生まれの71歳。戦前の生まれだ。「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」という価値観を背負って生きてきたのかもしれない。「同性愛」は、彼にとって、正しいと信じてきた価値観を覆されるものなのだろう。人はそんなとき、恐怖感から攻撃的になる。柔軟に時代に対処できない頭の固い人物が市議会議員だったという悲哀はあるが、現実には彼だけではなく、同じように思っている国会議員なども少なくはないだろうと想像がつく。そのことに気づかせてくれたのは、この市議会議員の功績かもしれない。

ただ、この議員、想像力がなさすぎる。自分の孫やその子どもが同性愛者でないとは断言できないはず。そのとき、彼は血縁関係にある者に「おまえは異常動物だ」と言えるのだろうか。それとも血縁なら、黙って受け入れるのだろうか。そもそも、「生物の根底を変える」と言っているところをみると、彼にとって「カップル」とは生殖行動をする単位なのだろうと想像できる。生殖がともなわなければ、カップルは存在してはいけないのか。愛より生殖が上なのか、という疑問も出てくる。

この議員、こんなふうに物議をかもしてしまったのだから、同性愛者を市議会なり事務所なりに呼んで会談をしてみたらどうだろう。人は知らないことには恐怖心を抱き、ムダに攻撃したりもする。議員が同性愛者と話をし、少しでも理解できるところがあったなら、それをきちんと発信していけばいい。

机上の空論ではない、実体験を重ねる

子どものころから、「差別はいけない」という教育がきちんとなされるべきだと言う人もいる。もっともだ。「差別はいけない」と観念として教え込むより、「世の中にはいろいろな人がいて当然で、自分が尊重されたいように相手を尊重するべき」だということを、実体験から学んでいくしかないのだろうと思う。

花柳界があった土地では、昔から非嫡出子に寛容だった。クラスのうち半分近くがシングルマザーであれば、「お父さんのいない子」は、ごく普通に存在すると子どもでもわかる。ただ、今の時代は、それが少数であったとしても受け入れる寛容さが求められる。「数が多いから普通というわけではない」ということを頭だけでなく、気持ちで感じる必要があるのだ。

しかし、時代が進んでいけば、同性愛が当たり前になるかもしれないと私は想像する。今だって、男は男同士でつるんで酒を飲み、女は女子会で盛り上がっているではないか。人は同性と一緒にいるほうが基本的にラクだし楽しいのだ。理解し合えるのだから。子どもの問題さえクリアにできれば、同性同士で子育てしたいと言っている女友だちも少なくない。

え、まだ異性と結婚してるの?

そのうち、同性同士の婚姻がごく普通のことになったら、彼らは言うだろう。「え、まだ異性と結婚してるの? 人間としてどうよ。異常動物だね」と。価値観なんて、そんなものだ。自身が信じ込んでいる(あるいは刷り込まれている)価値観にとらわれているほど、つまらないことはない。

(亀山早苗)

亀山早苗

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