非正規雇用の女性は増加の一途を辿っている。総務省統計局「労働力調査」によると、2014年には働く女性全体の非正規雇用率が過去最高の56.7%を記録した。「非正規職女性=パート主婦」と連想されがちだが、実はこの10年で、結婚をしていない「シングル女性」の割合が2倍に増えているという。

そうしたなか、横浜市男女共同参画推進協会と大阪市男女共同参画のまち創生協会、福岡女子大学の野依智子教授らが、今年10月、非正規職で働くシングル女性の社会的支援に向けて、35歳から54歳の非正規シングル女性を対象にWEBのアンケート調査を実施、261名から有効回答を得たという。今後、グループインタビューなどを経て、来年1月以降に回答を発表し、2016年2月6日に報告会を予定している。非正規シングル女性に対象をしぼった調査を実施した背景について、調査を担当する植野ルナさんに話をうかがった。

非正規シングル女性の半数は貧困状態

――この度、非正規シングル女性の実態調査を行われた背景について教えてください。

植野ルナさん(以下、植野):横浜市男女共同参画推進協会では、これまでも女性の就労支援のために様々な講座などを実施してきました。当協会が設立された1988年頃は女性の再就職に力を入れており、その後、働き続ける女性、育休からの復帰、若い無業女性など、色々な層に向けて支援をしてきたのですが、そのなかで非正規シングル女性の存在を知っていながらも、支援がないままでした。同じシングルでも、母子家庭の女性には支援があるのですが、子どもの有無によって支援が受けられるか、受けられないかが変わってくるんです。

行政のなかでも、非正規シングル女性の存在自体が、あまり見えていないと感じていました。私自身が就職氷河期世代で最初は非正規で就職したこともあり、非正規のまま結婚をせずに年齢を重ねた女性が、どのような状況に置かれるかを考えることも多かったのですが、“働く女性”の支援といったときに非正規シングル女性が対象層として想定されていないのは、変だなと思う部分がありました。ただ、どういう支援をしたらいいのか分からないということもあって、調査にいたったという経緯です。

――非正規シングル女性への支援の必要性は、どのようなところからお感じになられますか?

植野:労働政策研究・研修機構の調査によると、壮年期にあたる35歳から44歳の非正規シングル女性の半数は貧困状態にあるといわれています。これは若年層よりも高い比率です。非正規のままだとスキルを積めないので、給料が上がっていかず、より貧困になっていくというのが示されていると思います。その一方で、全国にある男女共同参画センターで非正規シングル女性の支援事業を探してみても、ほぼ皆無でした。今後非正規シングルの女性が増えていくことが予想できるなかで、何かしらの社会的支援が必要なのではないかと感じています。

意識の根底に「女性は結婚すれば養ってもらえる」

――非正規労働全体の問題について指摘されることはあっても、非正規シングル女性の抱える課題を明らかにしようという動きはこれまでありませんでしたよね。

植野:そうですね。公的な調査は行われていて、働く女性の非正規雇用の割合は毎年増え続けています。ただ、「なぜ非正規で働いているのか」という問いに対し、男性は「正規で働ける職場がなかったから」が回答の上位ですが、女性は「働ける時間を自由に選べるから」が1位になってくる。そうしたことからも、「女性は自分から望んで非正規で働いている」という印象を持たれがちなんですよね。ネット上の意見を見てみても、「パート主婦が大半なんだから問題ない」と書かれることも多いようです。

――なかには、非正規雇用を不本意だという女性も存在するはずですよね。

植野:ヒアリング調査やWEB調査では、「正社員として働ける会社がなかったから」という理由が最も多く、しかたなく非正規として働いているという声が多かったですね。なかには、正社員で働いていても過重労働で体を壊してしまったという人もいました。正社員として過重労働で体を壊すのか、非正規として給料が低いまま働くのか、究極の選択を迫られているように思います。

――女性は結婚して男性に養ってもらうから、非正規で給料が低くても問題ないという考え方が根底にあるのでしょうか。

植野:社会の中に、そのような考え方があると思います。でも、実際は結婚するかどうか分からないですよね。女性の10人に1人は結婚しないといわれていて、今後も未婚率は上がることが予想されています。「女性は結婚するだろう」「子どもを産むだろう」という想定で、世の中の仕組みができてしまっていて、「女性は正規雇用でなくてもよい」「給料が低くても問題ない」とされがちです。それで上手く回っていた時代はあったのかもしれません。しかし、その結果として、非正規職シングル女性がセーフティネットからこぼれ落ちているように思います。

【後編はこちら】非正規の独身女性「親が死んだら暮らしていけない」 調査で判明した彼女たちの不安

■関連リンク
非正規職シングル女子のしごとと暮らしの研究

末吉陽子

この記事を読んだ人は答えてね!
人が回答しています