局部切断事件の原因は、男のコンプレックス? 専門ライターが分析する

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局部切断事件の原因は、男のコンプレックス? 専門ライターが分析する
プロボクサーで法科大学院生の男性が、弁護士男性の局部を切り落とし、トイレに流す――2015年の夏の盛り、そんな衝撃的な事件が発生した。調べが進むにつれてこの容疑者の妻と弁護士の不倫関係も明らかになった。東京地裁で2015年11月26日に行われた第2回公判では、二人の関係の詳細に焦点が当たっている。

男性の局部を切り落としたことから“男・阿部定事件※”とも呼ばれるこの事件。真面目な良い人間と周囲から評判だったという容疑者を、ここまでの凶行に及ばせた原因は何なのか?

長年、数多くの不倫経験者に取材を重ね、『妻たちのお菓子な恋: 平日午後3時、おやつの時間に手がのびる(主婦と生活社)』『不倫の恋で苦しむ男たち(新潮社)』等の著書を持つ亀山早苗さんは、この事件をどう見るか。容疑者男性の心理を推測する。(編集部)

※阿部定事件(あべさだじけん)は、阿部定が1936年(昭和11年)5月18日に性交中に愛人の男性を扼殺し、局部を切り取り、持ち歩いて逃げた事件。その猟奇性と、定の愛人への執着の強さから、当時の庶民の興味を強く惹いた。

不倫された夫の恨みは通常妻に向かう

妻の不倫相手を殴り、意識朦朧としたところを園芸鋏で局部を切断し、それをトイレに流したという事件の第二回公判がおこなわれた。この事件の第一報を聞いたときは驚いた。不倫に関しては、長いこと取材を続けているが、妻が夫の浮気を知ったとき、その恨みが相手の女性にいくのはよくあることだ。愛人の元へ乗り込んでいって罵ったり殴ったりするのも珍しくはない。

夫が妻の浮気を知ったとき、多くは妻に対して怒りが向く。まれに相手の男を呼び出す夫もいるが、その場合は相手の社会的地位を脅かすような言葉を投げつけるのがせいぜいで、めったに暴力沙汰にはならない。男は、「浮気をする男」には、心の隅で共感をもってしまうからかもしれないと思っていた。

だが、この事件は、妻の「セクハラされていた」という言葉を信じ込み、一気に相手の男に向かっていった。保身のための妻のウソを、そのまま本当だと思い込んだのだろうか。あるいは、ウソだとわかりながらも、怒りの持って行き場がなく(妻とは別れたくなかったのかもしれない)、相手の男に向けるしかなかったのか。

妻を批判する声も多い。だが、男に当てはめてみればいい。「浮気してる?」と聞かれて「してます」とは言えないものだ。「してない」と言うしかない。さらに問い詰められたら、男の場合、「オレが信用できないのか」と開きなおるが、女性の場合はどうにもならなくなったら「セクハラされていた」という言い訳をすることもあるだろう。配偶者を傷つけたくない、あるいは保身のため。浮気した者はウソをつく。当然のことである。

阿部定事件とこの事件の違い

この事件を「平成の阿部定事件」と称する声も聞くが、それは違う。阿部定は、相手の男を好きだったから、他の女のあそこに自分の愛する男のペニスが入るのが耐えられなかったから、死後、切り落として懐に大事に入れていたのだ。愛情ゆえの切断と(しかも死後)、憎悪ゆえの切断(しかも生きている状態で)とはまったく違う。

被告を追いつめた男のコンプレックス

元プロボクサーという肩書きがついているが、この事件の被告は、実際にプロとして試合をしたことはないという。逮捕時の肩書きは、法科大学院生だ。弁護士になるのが夢で、物静か、熱心に勉強に励んでいたらしい。年齢は25歳。妻も20代。実情はよくわからないが、妻が今回の事件の舞台となった弁護士事務所で働いていたというのだから、主たる生計は妻の給料だったのだろうか。

ここからはあくまでも想像と個人的見解である。妻の不倫相手は、自分が夢と語る弁護士。40代。20代の自分より女には慣れているだろう。もしかしたら、自分よりセックスにおいて女性に歓喜を与えることができたかもしれない。被告は、そんなふうには考えなかっただろうか。そこに大きなコンプレックスは生まれなかっただろうか。

25歳、学生。来年、司法試験を受けるはずだったようだが、受かるとは限らない。結婚していながら、言い換えれば無職である。被告の精神状態は追いつめられてはいなかったか。

殴ったあと、一気に下半身に向かっているところに、「男としての」コンプレックスが感じられてならない。園芸鋏を買おうと手にしたとき、彼にはすでに相手の男の「男としてのすべて」が集約された局部を、切り取ってやろうという気持ちがあったのではないか。

よくも悪くも、男はペニスに支配されがちな生きものである。

そこにその男のアイデンティティがあるともいえる。そこさえ切ってしまえば、この男がどんなに仕事上、優秀であろうと、人間的にいい人であろうと、男としては自分より下だ、と彼が思ったとしても不思議はない。いいとか悪いとかの問題ではない。

男性は下半身に重きを置きすぎる

あるとき、知り合いの男が言った。「大学時代、仲良くしていたグループの中で、いつもみんなからいじられているヤツがいたんだ。そいつ、どんなにいじられてもヘラヘラしてる。あるとき、みんなで旅行に行って風呂に入ったら、ほんっとにびっくりした。そいつのアソコのでかいこと。彼をいじっていた俺ら、みんな黙り込んだもん。男として負けたって全員、へこんだよ」ペニスがよりどころになってしまう男たちの心理は、女にはわからない。

もしも、この事件の被告が、性的に自信をもっていなかったら……? 妻を歓喜させたかもしれないペニスを切断するしかない、男としてのアイデンティティを一気に失わせるにはそれしかないと思いつめても不思議はない。

(亀山早苗)

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