『「魔性の女」に美女はいない』岩井志麻子インタビュー

岩井志麻子が語る“魔性の女”論「ばびろんまつこはただの頑張り屋さん」

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岩井志麻子が語る“魔性の女”論「ばびろんまつこはただの頑張り屋さん」

「魔性の女」。それは女性なら一度は憧れてしまう響きかもしれません。しかし『「魔性の女」に美女はいない (小学館新書)』を読むと、イメージしていた「魔性の女」像がガラリと変わるでしょう。その中には、「魔性」であるからこそ死を引き寄せた魔性の女たちが紹介されています。しかし、男を狂わせた彼女たちは、かならずしも美女ではありませんでした。

ばびろんまつこ、木嶋佳苗、上田美由紀………世間を賑わせたあのニュースや話題のあの人は果たして「魔性の女」だったのか? 「魔性の女」があなたの好きな人に近づいてしまったら?

『「魔性の女」に美女はいない』著者である岩井志麻子さんに「魔性」とは何かというお話を伺ってきました。

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岩井志麻子さん

ばびろんまつこは「魔性の女」ではない

ーー志麻子さんが、レギュラー出演されているTOKYO MX「5時に夢中」で「美人に対しては嫉妬心は感じないけど、そうじゃない女がモテているとすごく嫉妬する」というようなことをおっしゃっていたのが印象に残っています。『「魔性の女」に美女はいない』にはそういう想いが込められているのかなと感じました。

岩井志麻子(以下、岩井):だってアンジェリーナ・ジョリーに対して何の感情も持たないじゃないですか。「すごーい、綺麗ー、素敵ー」って全部棒読みですよ。

最近話題になっていたばびろんまつこ(※1)さんは私のなかでは「魔性の女」じゃないんですよね。彼女は金持ちのおじさんたちをいいように操ってお金を巻き上げたわけじゃなくて、自分でせっせと詐欺をしていたんですよ。全然褒め言葉じゃないけど、「頑張り屋さん」だなあって思いましたね。そして彼女は可愛いといえば可愛いけど、芸能人になれるほどではない。そんな「身近感」が女の心を引き寄せるのかも知れませんね。

※1 ツイッターで「ハイパーエリートニート」を称し、華麗なセレブ生活で注目を集めていた『キラキラ女子』。偽ブランドジュエリーをネットオークションで販売するなどの詐欺罪で2015年10月逮捕される。

「魔性の女」は「一番モテる場所」を知っている

ーー『「魔性の女」に美女はいない』に出てくる女性たちはタイトルの通り、総じて一般的な美女、というわけではありませんよね。だけど、男性を翻弄し、人生を破滅させてしまうほどの力を持っている彼女たちに何か共通するものはありましたか? 何が彼女たちをそこまで「魔性」にしてしまったのでしょうか?

岩井:人って相性というか組み合わせだと思うんですね。

たとえば死刑判決を受けた上田美由紀(※2)という「魔性の女」は犯行当時、ホステスの平均年齢が65歳いくような鳥取のスナックに勤めていたんです。その時彼女は30代半ば。30代半ばの女がそんなところにいれば輝くに決まっている、つまり彼女は自分が一番モテる場所を知っていたんです。ちょっと勘違いしたりうぬぼれたりしたらもっと高級店や金持ちの男が来る店に行ってみようとか考えるけど、そんなところに行ったらブスと言われたりバカにされてモテないってことを分かっている。

自分がモテる場所を知っていることが「魔性」なのか、それとも「堅実」なのかというと謎なんですけど。

ーー「身の程を知っている」ということでしょうか。

岩井:これで失敗したのが、福田和子(※3)という無期懲役を受けて獄中死した女です。殺人の末に長い間全国を逃亡していたんですが、行く先々で男を作って金を調達しているんです。もちろんそれは「魔性」でしょうけど、確実に騙せる男のところに行っている。

彼女が最初にいた店はトラック野郎やガテン系の男たちが集まる店で、そこでは彼女はモテていたんだけど、そこから高級クラブに行くとネクタイを締めた『先生』と呼ばれるような客たちから大不評を受ける。そしてその店でナンバーワン美人ホステスに嫉妬を燃やしてしまう。

逆に、そのナンバーワンホステスが和子が昔いた店にいたら、「何だよあんなお高く止まった女」と男たちから敬遠されて、魅力を発揮できなかったんじゃないかと思うんですよね。だからみんな自分がいるべきところにいたらよかったのに、ということになってしまうんですけど。

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「自分は“魔性の女”とは呼ばれたことがない」と岩井志麻子さん

※2 2004年から2009年にかけて鳥取県鳥取市で起こった連続不審死事件で2人を殺害した罪で起訴された。2012年に死刑求刑された。
※3 1982年に愛媛県松山市でホステスを殺害した後、1997年に逮捕されるまで逃亡し続けた殺人犯。2005年服役中に病死した。

「魔性の女」は「いい女」に勝る、最高の称号

ーー本著に登場する「魔性の女」は男性の地位やお金、立場に執着しているんだけど、みんな極悪人というわけではなくて、どこか「普通」の部分を持ち合わせているような印象を受けました。

岩井:本当にあくどい女っていうのは男は踏み台でしかしないから、男に夢中になったりしないんですよ。吉永小百合さん主演の「天国の駅」という映画にもなったんですが、戦後初の女性死刑囚の小林カウ(※4)という女性がいました。彼女の場合は第1の目的が旅館を乗っ取って経営者になりたいということで、男は道具でしかなかったんです。殺人の実行者になった男も、旅館の持ち主の男も色仕掛けで落とすんだけど、目的は男じゃなくて、自分が経営者になること。これはちょっと男っぽいというか「悪女」というより「悪党」ですね。これが本当の「魔性」かもしれない。

そもそも「魔性」って一番に言い出したのって誰なんでしょうね? 「魔性」って女にとったら最高の称号というか、単なる「美人」とか「いい女」とかじゃないんですよ。美人と呼ばれるには装いとかお化粧とかでなれるし、いい女っていうのもざっくりしているから誰かにとっては「いい女」にはなれる。だけど「魔性の女」って称号を得るには周りで誰か1人くらい死んでないとね(笑)

ーー志麻子さん自身が「魔性の女」になりかけたことや、呼ばれたことはありますか?

岩井:一回もないですね、悪党くらいはあっても(笑)

※4 1960年から61年にかけて、栃木県の塩原温泉郷のホテル経営者夫婦を殺した罪で逮捕される。1970年に死刑が執行された。

【後編はこちら】“魔性の女”に彼氏を奪われたらどうすればいい? 岩井志麻子が考える

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