「恋届」は少子化対策?政策に違和感

千葉県流山市が2月14日に受付を開始した「恋届」は、一か月で受付4000件を超える反響になっている。婚姻届に似た用紙に恋人の名前や出会いの場所などを記して市役所に届け出て、「今、恋をしている」ことを証明してもらうもの。普段役所で見かけることの少ない10代のカップルが参加する姿も見られ、若い世代の恋愛を後押しする市のアイデアは好評のようだ。

恋愛、結婚、出産という理想のライフコース

しかし「恋届」には当初、疑問の声が上がっていたことも事実。それはこの企画が「少子化対策の一環」とされていたことにある。つまり、恋愛の先に結婚、出産というライフコースを、自治体が個人に期待していることになるからだ。

日本がさらなる少子化に向かうこと、それが社会保障や経済規模の維持を脅かすことは誰にでも予想できる。「少子化対策」そのものは、むしろ喫緊の課題のはず。それでも「恋届」に違和感が持たれたのは、政治が個人に「出産」を期待する、もっといえば特定の生き方を理想として掲げるような意図が見え隠れしたからだ。

批判相次ぐ少子化対策

そうした政策は、「恋届」が初めてではない。近年の政策を振り返ってみよう。

●女性手帳
2013年に話題になった「女性手帳」は晩婚・晩産に歯止めをかける狙いで、女性の身体のメカニズムや人生設計について啓発する内容が記載され、市民に配布される予定だった。これには、「女性の生き方に政府が干渉するのか」などの批判が相次ぎ、結果立ち消えになった。

●「街コン」支援
同じく少子化対策の一環として、自民党の議員らは「街コン」支援を掲げて「婚活・街コン推進議員連盟」を立ち上げた。3月14日には「婚活・街コン推進サミット」を開き、100社以上の街コン業者や自治体などが参加した。発案当初から「コンパに税金を投入するのか」と批判されたが、政府はこの施策を推進している。

これらから見えるのは、「“適齢期”に結婚、出産」という生き方を、政治がごく自然に市民に期待するいびつさだ。「婚活・街コン推進サミット」では、「2020年代までに未婚率の半減や合計特殊出生率を2.0以上にする」という大目標が宣言されたが、政治が「コンパ」に介入してまで、特定の生き方へと国民を駆り立てているように見えても仕方ない。

問題は、子供を産む女性の生き方だけではない。核家族化や晩婚化、離婚の増加、非正規雇用の激増など、男女共に労働観や結婚観を含めて流動化するライフスタイルを、行政に理解してもらうために、私たちももっと声をあげていかなければならないのではないだろうか。

(文=克樹カオル)