タグ
2014/03/29

全身整形後、ホテルで過ごす女性たち

顔に包帯を巻き付けられ、ベッドに座り込む一人の女性。一見、ケガでもしたのかと疑ってしまいそうになるが、実は彼女、ホテルの一室で整形後の傷が癒えるのを、一人ただ待っているのである。

この写真を撮影したのは韓国出身のジ・イェオ。現在、ブルックリンを拠点に活動する写真家だ。彼女は同じ韓国女性の整形手術直後に密着し、“美の回復部屋”(Beauty Recovery Room)というタイトルで写真シリーズを制作した。被写体の女性たちが見せる衝撃的な姿に、多くの人々が驚きの声を上げている。

    「欧米人っぽくなりたい!」と一度に数か所整形

多くの女性が一度に数か所の整形手術を行い、術後の体が癒えるまでどこかにひっそり隠れている。イェオが撮影した女性の一人は、小顔手術、全身の脂肪吸引のみならず、その3週間前に豊胸手術、さらに3週間前には、二重手術と鼻の整形をしているそうだ。半年間で16か所とは驚くべきことであるが、「これは韓国では全く普通のことですよ」とイェオは語る。

なぜ、彼女たちはそこまでして“美しく”なりたいのだろうか。日本と同様に韓国でも、メディアが女性の美の基準に大きく影響を与えている。そして特に「欧米人のようになりたい」という強い願望が、韓国人女性たちを取り巻いている。彼女たちの整形のゴールは、“いかにアジア人らしさを失くすか”、そして“欧米人に近づけるか”なのである。結果、美の追求が加熱し、女性たちは整形という選択肢に走り始めた。

    手術直後に撮影されたリアルな整形女性の姿

実はイェオ自身も、以前整形手術を考えたことがある。その時の自分が壊れていく経験をもとに、整形する女性たちを被写体に写真を撮ることを決めたそうだ。「私も全身の整形手術を受ける予定でした。しかし診察を重ねていくごとに、その手術の行程を全く説明されていないことに気がついたんです。誰もリスクについて説明してくれませんでしたし、麻酔をかけることすら教えてくれませんでした。(あのまま施術をしていれば)死ぬところでした」と当時の経験を話す。

整形手術を思いとどまったイェオは、クリニックが手術直後の写真を一枚も公開していないことに気がつく。そして写真を通じてその現実を調査しようと決め、直接患者たちにコンタクトを取った。撮影させてもらう代わりに彼女は、一人で過ごす患者たちの身の回りの世話や送り迎えをしたそうだ。 孤独な女性たちに寄り添うことで、そのリアルな姿をキャプチャーすることに成功したのである。

    “美しさ”が与えた自信で過去と決別

孤独に押し潰れそうになりながら、ホテルの一室で美しくなるのを待っていた彼女たちは、傷が回復するにつれて様々な変化を見せた。整形後の彼女たちは、手術を受ける前は嫌っていたカメラをポジティブに捉えるようになり、さらには自信に満ちあふれた表情を見せ始めたそうだ。

しかしながら撮影後は、彼女たちと連絡を取ることができなくなった。「多くの女性が3か月から半年くらいすると、電話やメールに一切答えてくれなくなりました。新しい人生を新たな外見で歩み始めて、過去のことはきっと思い出したくなかったんでしょうね」とイェオは話す。

今まで整形女性を捉えた写真といえば術後の変化ばかりに注目が行き、そのプロセスが全く排除されているものばかりだった。しかし、イェオが映し出したのは美しさを求め、メスを入れた女性たちのリアルな姿だ。そんな女性たちの変化を隣で見つめたイェオの写真には、彼女たちの不安と共に新たな人生への希望も含まれている。

MihoNamba