扶桑社『SPA!』編集部牧野早菜生さんインタビュー

『アラサーちゃん』担当編集に聞く 「週刊誌連載だから、時代を映す作品が生まれる」 

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『アラサーちゃん』担当編集に聞く 「週刊誌連載だから、時代を映す作品が生まれる」 

扶桑社の男性向け週刊誌『SPA!』編集部の牧野早菜生さんインタビュー後編。今回は、担当されている大ヒットシリーズ『アラサーちゃん』と、『SPA!』男性読者の関係性について伺います。

【前編はこちら】男性週刊誌は“女性蔑視”なのか 雑誌『SPA!』の女性編集者に聞く

『SPA!』の男性読者に受け入れられた『アラサーちゃん』

『アラサーちゃん無修正 4』書影

――女性の恋愛やSEXの本音を生々しく描き、ドラマ化もされた『アラサーちゃん』については連載当初から「これは売れる!」という確信はありましたか?

牧野:もちろん面白いとは思っていたんですが、男性誌でどこまで受け入れられるかなとも思っていました。女性がセックスのときにこんなことを考えているという生々しい話は、男性としては知りたくない部分でもあると思うので。ここまで言っちゃっていいのかなという不安はありましたけど、思いのほかすんなり受け入れてもらえてよかったです。単行本は女性読者が7~8割を占めているんですが、男性読者が多い雑誌のアンケートでも常に上位に入っているので、そこまで男性に受け入れられているのはすごくうれしいです。

――アラサーちゃんのヒットで『SPA!』の読者層が変わった、なんてことはあるんですか?

牧野:アラサーちゃんの影響で、っていうことがわかりやすくあったわけではないんですが、読者の男性の意識が変わった、というのはあるんじゃないかと思います。女性があまりセックスの本音とかを男性に言わないできたのは「男の人にはここまで言わないほうがいいんでしょう?」「どうせわかってもらえないし」と自主規制していたせいもあると思うんですけど、言ってみたら意外と受け入れてもらえるんだな、という感じですね。

――女性は女性で思い込みや固定観念があったのかもしれませんね。

マンガが週刊誌に掲載される意義

牧野:編集として、時代性を切り取ったマンガに携わっていきたいと思っているので、週刊誌の特集をやっていくなかでインプットされる情報を作家さんにお伝えして、それがフィクションとしてマンガに昇華されていくのは面白いし、ほかのマンガ雑誌にはない色が出せるんじゃないかなと思います。

奥田民生に憧れながら、青春と中年の狭間でもがく35歳の男性を描いた、渋谷直角さんの『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』は本当にいま、2015年の空気が出ていると思うんですが、『SPA!』でもたびたび特集してきた「アラフォー男性の懊悩」という要素を取り入れることで、より読者の共感を得られるのではないかと、連載前に著者の渋谷さんと打ち合わせをしました。

いい歳なのに突然初恋みたいな恋愛をしてみたり、不倫に狂ってしまったり、同級生が出世しているのに自分は……みたいにアラフォーの男性がブチ当たる壁、「ミッドライフ・クライシス」と呼ばれるものを特集したことがあるんですけど、その特集も参考資料として渋谷さんにお渡ししました。

『アラサーちゃん』担当編集者に聞く 男性週刊誌にマンガが掲載される意義

『アラサーちゃん』を読んで「女はこわい」とか「下品」と言う男の人もいるかもしれないけど、思いのほか「あっ、そうだったんだ」とか「気をつけよう」って思ってくれたり、男ウケと女として自我の狭間でぐじぐじ悩んでいる女の人のことを可愛いな、って思ってくれる男性がいたのも発見でしたね。

【関連記事はこちら】男のダメさとモテ女の悲哀 『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』著者・渋谷直角が語る

ゆくゆくは『独居老人ちゃん』までやりたい

『SPA!』編集部 牧野さん

――やはり『アラサーちゃん』のヒットは牧野さんのキャリアの中では大きい存在でしたか?

牧野:そうですね。担当した作品が映像化されたのも初めてでしたし、どんどん認知が広まっていくのも面白いです。何より、自分を含めてアラサーの女性が生きやすくなるような価値観を作者である峰なゆかさんがマンガというかたちで広めてくれて、そこに編集として携われたことがとてもうれしいです。

――ひとつのジャンルになった感じはありますよね。

牧野:男の人にセックスで不満に思っていることを言えない女性や、女子会でもお互いけん制してしまって本音で話せなかったっていう女性の意識が変わって「女友達にセックスの話をできるようになりました」とか「彼氏に不満を言えるようになりました」という読者の方からの感想をもらったりするので、啓蒙的な意味もあったのだとしたら光栄ですね。

時代の流れもあると思うけど、少し前までは「アラサー=おばさん」っていうネガティブなイメージが強かったのが、だんだん「アラサーの女の人ってかわいいよね」というポジティブな雰囲気になってきたのもうれしいです。でも、もうすぐ自分はアラサーじゃなくなっちゃうので……「アラフォーちゃん」とか、ゆくゆくは「独居老人ちゃん」までやりたいですね、なんて作者の峰さんと話しています。

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