所得格差が広がる現代の日本。なかでも、働く単身女性の3人に1人は年収112万円以下の貧困状態にあるといわれている。そうしたなか、貧困に苦しむ女性が、最後に生活をつなぐ場所として選ぶといわれるのが「風俗産業」。最悪の状態から保護する職場、いわゆるセーフティーネットと呼ばれる一方、セックスワークに従事する女性たちの心理的、肉体的リスクは決して軽いものではない。

セックスワークの内情について社会的な理解を推し進めていこうと、一般社団法人ホワイトハンズによって開催されたのが、「セックスワーク・サミット2015」。このイベントでは、若年生活困窮者の支援をしている臨床心理士の鈴木晶子氏や、風俗業界未経験ながら“レベルの低さ日本一”をうたう「地雷専門店」を開業し成功に導いた「鶯谷デッドボール」の代表などが登壇し、支援者と当事者へのインタビューやディスカッションが行われた。

前編では、鶯谷デッドボール代表が語る「働く女性たちやお店の実情」についてレポートする。

「地雷専門店」の実態とは?

「鶯谷デッドボール」は、2014年にフジテレビで放送され、第23回FNSドキュメンタリー大賞を受賞した番組「刹那を生きる女たち 最後のセーフティーネット」に登場したことでも話題となったデリバリーヘルス。激安風俗をウリにしている同店では、他店で不採用になる、いわゆる“地雷”と呼ばれる女性たちを雇いながらも、売り上げを伸ばしていることで注目されている。さまざまな事情を持つ女性が働いているが、“支援”が目的ではなく、「あくまでも商売」と代表は言う。

――風俗業は素人だったところから地雷専門店を立ち上げ、さまざまな女性と会うなかでどんな人間関係を築かれたのでしょうか?

鶯谷デッドボール代表(以下、代表):最初は、面接に来るといきなり足を組んでタバコを吸い出して、すごい世界に来てしまったなと(笑)。常識で計り知れないところがあり過ぎて、単なる非常識な女性たちだと思っていました。でも、育った環境とかこれまで生きてきた境遇を色々聞いて、よくよく知っていくと、メンタルヘルスや家庭環境の問題を抱えていることが分かりました。朝起きて「おはよう」と普通に出勤してくるのが難しい子たちが最終的にここに流れ着いているんだなということが分かって、考え方と接し方が変わっていきましたね。あと、面接のときには、薬の服用や通院歴などを聞くようにしています。

――風俗では、一般的に薬の服用や通院歴は聞かない気がするのですが。

代表:普通はそうですよね。でも、女の子によっては、病気を隠したり朝起きられなかったりして欠勤したいときに、嘘つくようになるんです。一週間のうちに家族が3人くらい死ぬときもあって、何人死んでるんだっていう(笑)。そういう嘘を積み重ねていくうちに、ある日何も言わずに退店してしまうんです。なので、打ち明けにくいメンタルヘルスのことであっても、うちは理解がありますよと最初に示すことによって、調子が悪いときは正直に言ってもらって休む、それで長期在籍していただくという環境を作りたいと思っているので、聞くようにしています。

アットホームな雰囲気を作っている

――デッドボールは、長期在籍の女性が多いですよね?

代表:最長ですと6年間が7、8人くらいいますね。長期在籍が多いのは何でも話せるアットホームな雰囲気を作っているからだと思います。私自身、店員が偉くて女の子が下っていう関係性は好まなかったので、雰囲気作りがいい方向に作用したのかなと。あと、女の子は売れる売れない子がいて、収入の格差や取り組みが違う子が混在しているんですが、そこを隠すようなことをしてしまうとギスギスしてしまうので、面接段階で「収入の格差が出てくる」というのは明確に伝えて隠さないようにしています。隠してしまうと女性同士の軋轢が生まれてしまうので。

――賃金の差があって、ギャップがあるということも話されていると。

代表:風俗の面接は見た目から入りますが、話しているときのコミュニケーション力もみています。それに応じて値段を振り分けるんですけど、本人の取り組み次第で支払い金額が上がっていくというシステムを採用しています。サービスに応じて1万円、8000円、6000円とコースを分けているのですが、どのコースであれば女性が働きやすいか稼ぎやすいかで判断してやっています。女性なので、価格の差別は敏感で最初は苦労しましたけど、いまはそれが当たり前という感じです。

――女性たちにとっては、容姿の程度を宣告されることになるわけですが、その辺りのデリケートな問題はどうされているんですか?

代表:最近は「デッドボール」のカラーが浸透しているので、面接にくる段階で自分の立ち位置を分かってくれていることがわりと多いですね。女性の方から、自分に見合ったコースを申告してくることが増えています。でも浸透するまでは、大変でやり続けるしかなかったですね。このお店に在籍してやり続けるんであれば、納得してくれと。こちらとしては、履歴書と法的な身分証があれば即採用ですが、(正直に話して納得してもらうという意味では)逆面接かもしれないですね。

あとは、容姿を見ると普通のお店で働けるなと思うような女性なんですけど、自己評価が低い女性もいます。最近お店の名前が売れるようになってから、「他店で不採用になりたくないから、確実に採用してくれるデッドボールを選びました」というケースが増えていますね。

結果を出しても自己評価の低さは変わらない

――自己評価は働くなかで上がっていくものでしょうか?

代表:結果がついてきて支払いの料金が上がっていっても、自己評価が低いことは変わらないですね。

――風俗嬢のお金の管理についても苦労されていると聞きますが。

代表:手にしたお金を計画的に使うという習慣がない女性が大半なんです。お客様からいただいたお金をお店に持って帰る前にパチンコ店にいって使ってしまうとか。帰りの電車賃の1000円しかないのに、待機時間に1円パチンコに行ってすってしまうとか。理解不能な行動は多々ありますね。

――そういうときにはどうするんですか?

代表:怒りますよね(笑)。もう二度とするなよと。でも、彼女たちにとってはそれが常識になってしまっているのでそれでクビとかはないですね。ただ、生活レベルでお金の使い方が改善されるかというと、かなり難しいです。

【中編はこちら】風俗で働く女性に必要な支援とは 無料法律相談会「風テラス」実施のワケ

末吉陽子

この記事を読んだ人は答えてね!
人が回答しています