扶桑社『SPA!』編集部牧野早菜生さんインタビュー

男性週刊誌は“女性蔑視”なのか 雑誌『SPA!』の女性編集者に聞く

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男性週刊誌は“女性蔑視”なのか  雑誌『SPA!』の女性編集者に聞く

SPA!最新号(11/17発売)書影

グラビア、エロ系記事、スクープ……欲望が渦巻く男性週刊誌。電車の中吊り広告を見て、センセーショナルな見出しにドキッとすることも。また、それを作っている現場も男社会なんだろうな……と思うのではないでしょうか。

牧野早菜生さん(扶桑社)は、女性の恋愛やセックスの本音を描いた『SPA!』の人気連載マンガ『アラサーちゃん』を担当する女性編集者。その他も、数々の企画をこなす牧野さんに、男性週刊誌で女性が働く意義について伺ってきました。

扶桑社「SPA』!編集部の牧野早菜生さん

扶桑社『SPA!』編集部の牧野早菜生さん

男性週刊誌だから活かせる「女性」の視点

――週刊誌、しかも男性がメイン読者の雑誌の編集というと、男性と肩を並べて仕事をして、ものすごく多忙……というイメージですが、実際はどうですか?

牧野早菜生さん(以下、牧野):『SPA!』は張り込みやスクープをやっている週刊誌ではなくて、基本的に企画ものをやっているので、自分でペースを作ってやっていけば毎日徹夜とかにはならないですね。男性が多い職場ということはあまり意識したことはなくて、女性も極端に少ないわけではないのでそんなに珍しい人数構成の部署でもないんですよ。女性が男性向けの週刊誌を作っている特殊性はあると思いますけど。

――男性向けの週刊誌を作るうえで、牧野さんが魅力的だと感じていたり、やりがいだと思っているのはどんなところでしょうか。

牧野:「アラサーちゃん」に象徴されているんですが、女性が男性に対して言えないでいるセックスの本音だったり、コミュニケーションするうえでイヤだと思っていること、こういう男性の言動はげんなりする!と思っていることなんかを、単純に責め立てるのではなくて、企画という形でちょっと面白く世に出せることですかね。

記事を目にした男性が「あっ、そうだったんだ!」と思ってくれたり、女性が「男性に面と向かって言ったら怒られたり引かれたりするんじゃないかと思っていたことも、言えばちゃんとわかってくれるんだ」って気付いたりしてくれるとうれしいなと思います。働いている女性だったら、恋愛やセックスの局面だけでなく、仕事上のコミュニケーションでも男女間の齟齬を感じていると思うんですが、そういった齟齬を解消していく一助になれるのかな、女性がやることでより効果的な企画になるのかな、と思っています。

日常の不満から企画を作る

――特集名には牧野さんの本音や個人的に感じていることも反映されているんですか?

牧野:そうですね。個人的に生活していて思ったことから企画を出していくことが割と多いです。普段飲んでいて「こんなおじさんイヤだ!」「酔うとすぐ学歴の話ばっかりする男とか最悪!」「SNSで読みもしない記事を『あとで読む』とかいってRTするヤツなんなの!」など、思ったことをそのまま企画書に書いて「こういう例に象徴されるような、イタいおじさんの言動について特集したい」と提案したりします。

最新号の特集内容

最新号の特集内容

自分のなかに「おじさん」を飼ってしまう

――男性週刊誌を担当されて、価値観が変わったということってありますか?

牧野:イタいおじさんを非難する特集を作っていたはずが、たまに自分がイタいおじさんみたいな言動をしていたりします……。たとえば、女性の仕事相手に夜中に突然呼び出されて飲みに行った編集部の男性の話を聞いて「なになに、ヤったの?」って聞いちゃったことがあって。逆の立場で私が男性の仕事相手に夜中に呼び出されてカラオケに行ったって話をしたとして、男性から「ヤったの?」って聞かれたらすごくイヤだし「セクハラだ!」って思うのに「平気でセクハラみたいなことを言ってた! 自分って最低だ!」と、とても反省しました。

――読者イメージが自分の中に内在化するってことですかね。自分の中に「おじさん」を飼わないとって。

牧野:そうなんですよ、男性的視点を内面化するって部分があります。読者イメージというよりは「こうなってはいけないおじさん」のイメージに自分自身がなっているときがある。でも実は男性が多い職場で働いていたり、取引先が男性ばかりの女性にはあるあるなのかなって思います。私のようにうっかり逆セクハラ発言をしてしまうようなバカはいないでしょうが……男性的視点を内面化させることで、意識的にセクハラ的なものに鈍感になって、仕事をしやすくするというか。

――心の中に「無神経なおじさん」ゾーンがあって、たまに顔を出しちゃうってことでしょうか。

牧野:それはありますね。ただ、完全におじさんマインドになってしまうと私が『SPA!』編集部にいる意味がないんですよね。あくまで女性が男性に対してこう思う、とか女性が考えているセックスの本音っていうのはこうだよ、っていう視点が男性週刊誌に入っているから意味があるので、私がおじさん化して、完全におじさんマインドな企画を出すんだとしたら、男性が出したほうが面白いし、意味がないんです。

だから、女性としての視点を担保し続けることに意味があると編集部の上の人も考えているんじゃないかなと思っています。

男性週刊誌は“女性を消費”している?

――言い方は悪いけど、男性週刊誌は女性を消費するような記事が掲載されていたりしますが、それに女性として腹が立つようなことはありますか? また、男性はそういう企画に対してノリノリなんでしょうか?

牧野:そういう部分もあるかもしれないけれど、完全に女性を消費するような見せ方をしたら男性も引いてしまうと思うんです。私が「男性はこんなふうにがっつり女性を消費するような見せ方をしたほうがおもしろいんだよね?」と、変に先回りしてえげつなくえげつなく企画を構成すると、男性から「やりすぎだよ!」「それは違うよ!」と指摘されることもありました。

――女性を消費しているわけではない、具体的にはどういう点においてでしょうか?

牧野:たとえば「ブスだけどエロイ女」っていう企画をやるように任されたことがあるんですが、タイトルだけだとひどい内容ですよね。だけど「ブス=バカにする、こき下ろす」ってことではなくて、「いわゆる一般的な美人というわけではないけど、色気がある女性っていうのはどういうものだろう?」と、肯定的に分析する内容として構成したんです。単純に女性をこき下ろすだけだと男性だって読んでいて嫌な気持ちになるだけだし、出ている女性だって楽しくないし。

女性が思っているほど“週刊誌イズム”みたいなものは冷たいものではないと思っていて。男性は単純に「かわいい女のコのちょっとエロい写真がみたい」とか、「え、口説き方次第でオレも棚ボタセックスにありつけるかも?」といった気持ちで記事を読むけど、行動に移せる男性はそんなにいなくて、実際は誌面に出ている女のコを男同士で指差し合って「オレはこのコがいい!」って言いながら飲んだりとか、そんなもんなんですよ。アラフォーになっても中学生のときと変わらない(笑)。それが女性を消費しているのか、っていうと違うと思うんです。

――男性同士もわかっててやってるホモソーシャルみたいなものかもしれないですね。

【後編はこちら】『アラサーちゃん』担当編集者に聞く 男性週刊誌にマンガが掲載される意義

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