『産褥記 産んだらなんとかなりませんから!』(KADOKAWA)の著者であり、産後女性の心と身体をサポートするNPO法人マドレボニータの産後セルフケアインストラクター吉田紫磨子さんのインタビュー後編。

「産褥期」(さんじょくき)とは、産後6週間から8週間の時期のこと。前編では、吉田さんが実際に体験した壮絶な産褥期や、その乗り越え方を語ってもらった。後編では、吉田さんが所属するマドレボニータで行っている産後ケアや、夫がしたほうがいいサポート、またこれから妊娠・出産をしたいと考える女性が意識しておくべきことをうかがった。

【前編はこちら】“産んだらなんとかなる”はウソ 産後6週間の女性に降りかかる「産褥期」とは

出産の問題は「パートナーシップの問題」

――マドレボニータでは、どのようなことを生徒さんたちに教えているのでしょうか。

吉田紫磨子さん(以下、吉田):体を養生させ体力を回復させる産後1ヵ月(産褥期)は、パートナー、実家はもちろん、産後ヘルパーや産後ドゥーラ(産後支援の専門家)などに来てもらって家事をお願いしながら、養生に専念する必要があります。マドレボニータでは、産褥期が明けた産後2~6ヶ月の女性を対象に心身のヘルスケアを伝えています。骨盤周りに負担をかけないバランスボールを使った有酸素運動や、コミュニケーションワーク、セルフケアの3本柱です。全員産後女性なのでレッスン中も授乳やオムツ替えを安心して行って頂けますし、抱っこしながらエクササイズも行えます。

「産褥期」とは?

『産褥記 産んだらなんとかなりませんから!』(KADOKAWA)

また両親学級を開催し、夫婦間の問題にも直結する、産後女性が抱える問題、解決策についてお伝えしています。産後の三大クライシスである「母親の危機、乳児の危機、夫婦の危機」を中心に、産後うつ女性は診断された方だけでも年間に10万人いること、産後女性を保障する公的補助がほとんどないこと、虐待や離婚の件数、「子育て」が「孤育て」になってしまう要因などをお話します。

――そうしたリアルなお話をすると、皆さんの反応はいかがでしょう。

吉田:妊婦さんよりも男性の方から驚きの声が上がることが多いですね。「働き方を見直して、早く帰ろうと思いました」といった感想をもらうこともあります。子育てに向けてちゃんと備えるために、男性も情報を知って考えるということが大切です。脅しではありませんが、現実的に「産んだらどうにかなる」という問題ではありませんし、産んでみて大変なことになったとしても「知らなかった」という言い訳ができないわけですから。

育児プロジェクトにおいて夫はマネージャー

――これから妊娠、出産をしたい女性にとって必要なことはなんでしょうか。

吉田:パートナーとたくさん話し合うことですね。出産後も働くのか、育休をどれぐらい取るのか、パートナーの働き方はどうするのか、家事分担はどうするのか、子どもの保育、教育はどうするのかなど、経済的にも物理的にも事前に話し合って、共有することがとても大切です。実際、産んでみるとまた気持ちが変わるので、いつでも話し合う関係性でいてほしいです。

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吉田紫磨子さん

男性は妻が子どもを産んだら、「自分は稼いでくることが育児」だと捉えがちです。でも、産後の女性は心も体も大変な時。その時こそ男性の力が必要になってきます。よく聞かれる会話として、男性社員が上司に「妻が子どもを産みました」と報告したら「それじゃあ、もっともっと仕事頑張らないといけないな!」と返される……というものがありますけど、実際は産後の時期、育児の導入期に仕事に没頭してはダメなんです。個人的には、産後1年間は夫が定時退社できるような流れになることを望んでいます。働く女性が会社側に制度を求めることも必要かもしれませんが、夫婦が揃っている家庭における子育ては1人で行うものじゃない。男性の働き方の見直しが、より大切になってくるのです。

――具体的に夫がすべきサポートとはどんなことでしょう。

吉田:これは決して夫が家事・育児を全て行うべきと言っているわけではありません。産褥期の家事は、消化の良い食事作り、新生児がいる中での掃除、通常の3倍近い洗濯物など、スーパー主婦でも到底こなせないくらいの量があります。これらを夫がすべて行うというのは現実的に難しいし、疲弊してしまいます。私は、男女お互いのためにも実家だけでなく、友人や、産後ヘルパーや産後ドゥーラに委ねることが一番だと思っています。

そこで男性の役割としては、親や、友人、産後ヘルパーや産後ドゥーラなどに来てもらう日程のスケジュール管理や連絡、そしてお礼など、マネジメント業務を行ってほしいのです。友人を頼るって難しいかもしれませんが、「出産祝い」の代わりに「お惣菜やおにぎりを持って駆けつける」産褥ヘルプというのも、広めていきたいです。また近くに頼れる友人、親がいない場合、外注することをためらわないでほしい。母親が心身ともに健康になることは、育児への大きな投資です。そんな風に2人で支え合っていくことで、子育てってこんなに楽しいんだと感じられると思います。

■関連リンク
マドレボニータ公式サイト

石狩ジュンコ

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