自由気ままで心地いいけど、ちょっと切ない人気イラスト&エッセイ「ひとりぐらし」シリーズの著者・たかぎなおこさん。上京してひとり暮らし18年めとなる今年、その集大成ともいえる『ひとりぐらしも何年め?』(KADOKAWA)を発表しました。

ひとり暮らし歴が長くなると、始めた当初とは違って新鮮味も失われがちです。そんな中、たかぎさんはどのようにひとり暮らしを乗り切ってきたのでしょうか? 前編では、たかぎさんに上京当初の気持ちや作家デビューするまでの苦労を伺いました。

たかぎなおこインタビュー

『ひとりぐらしも何年め?』(KADOKAWA)

上京したのは間違いじゃないかと迷う日々

――18年前に、東京でひとり暮らしを始めた時のお気持ちを覚えていますか?

たかぎなおこ(以下、たかぎ)
:はるか昔で……忘れちゃいましたね(笑)。でも振り返ってみると、お金がないことが一番大変でした。24歳で上京したんですけど、たいした貯金もなかったですし、仕事も決まってた訳でもないので、バイトを探しながら生活してました。地元の三重を離れたという寂しい気持ちもありましたけど、上京したのは間違いじゃなかったかなという不安と、今月の家賃を払えるのかというお金の心配が大きかったです。

――そもそも夢を叶えるために上京したんですか?

たかぎ:三重にいたときは、名古屋のデザイン会社に就職したけど1年半で辞めちゃったんです。それで、今後の人生どうしようって悩んで、また名古屋で仕事を探そうとか、もう全然違う職種に就こうかとも考えたのですが、絵の勉強をずっとしてきたし、「思い切って上京してたら人生変わっていたかもしれない」って、後悔している自分の姿を想像したら、失敗してもいいから上京してやれるだけやってみようって思いました。だから、ポジティブな気持ちというよりは、後悔したくない一心で上京を決めました。

――それくらい絵を諦められない思いが強かったんですね。

たかぎ:そうですね、本当に特技が絵くらいしかなくて。中学生の時から絵を仕事にしたいなって思って、それで学校にも行かせてもらってましたから。絵以外にやりたいことも特技もなかったので、それならもうちょっとがんばってみようって感じでした。

――上京後はどんな生活をしてたんですか?

たかぎ:ひとり暮らしって、本当にお金がかかるんですよね。なんにもしてなくても、どんどん毎月お金が消えてって。それで生活が大変で、とにかくバイトしてましたね。最初の頃は、あまりにも決まった仕事をやっちゃうと、その生活に慣れて満足しちゃうんじゃないかという不安があって、短期の仕事で食いつないでいくことにしました。1日に2件バイトを入れて朝から昼まで働いて、帰ってきて絵を描いて、また夜にバイトに行ってました。今思えば、若かったなって思いますね。そんな生活を今の私がやったらヨボヨボになっちゃいます(笑)。

節約の日々とFAXレター

――本当にひとり暮らしってお金かかるんですよね。となると、節約が基本になりますよね。

たかぎ:今回の本の表紙裏に、当時友達に送ったFAXレターを載せているんですけど、「13800円のママチャリを買おうか死ぬほど悩んだけど、まだ買ってません」「刺身が高くて手が届かない。いつも見つめるだけ」「着払いで荷物が届いたけど、持ち合わせの小銭がなくて宅配の人もおつりを持ってなくて、なくなく50円玉貯金から出した」とか、ビンボー臭いエピソードが満載ですね。今見るとああ〜たしかにそんな生活だったなあ〜と。

――たかぎ先生の日常エピソードが満載のFAXレター、とても面白く読ませていただきました。本を買ったときにこういうおまけがついていると嬉しいです。当時、ひとり暮らし当初で一番大変だったことはなんですか?

たかぎ:先が全く見えなくて…。もし諦めて三重に帰るとしても、その期限をいつまでにするのかが決められませんでした。自分がどの辺りで納得できるのかがわからなかったです。それはずっと悩んでましたね。両親にも心配されて「東京なんて合ってないんじゃないの?」って。心配かけて悪いことをしてるなって罪悪感みたいなものはずっとありました。

転機となった『150cmライフ。』出版

――そんなバイト生活はどのくらい続いたんですか?

たかぎ:『150cmライフ。』っていう本の依頼がきたのが、ひとり暮らしを始めて5年目のときで、その本が出てすぐに次の本の企画も決まり、その頃バイトを辞めました。なのでバイト生活をしていたのは24歳から29歳になる直前くらいまでです。

『150cmライフ。』(KADOKAWA)

――24~29歳というと、女性としては絶妙な時期ですよね。不安とか焦りはありませんでしたか?

たかぎ:地元の友達は結婚していったし、東京に来て2年くらいは頑張ろうと思ってたんですけど、2年が瞬く間に何もなく過ぎていって……。あともう2年頑張ろうか、いや30歳までは頑張ろうか、と、じわじわと自分の制限を上げていきましたね。28歳の時に出版のお話しをいただいたんですけど、それまでは不安でいっぱい。その話をいただいた時も、これでやっていけるとは思ってなく、たまたま来た仕事のひとつだと思ってました。元々、本を出したいと思っていたわけじゃなくて、イラストでやっていきたいと思っていたので、夢が叶ったという気持ちでもなかったんです。

――現在はマンガの執筆をメインでやられていて、当初の夢、イラストレーターの仕事とは形が違いますよね。ご自身ではどのように受け止めていますか?

たかぎ:思い描いていた方向とは少し違ったけど、依頼をいただいていざやってみたら、やりがいがある仕事だったし、意外に自分に合ってる気がして、こういう方向もあったんだな〜と思いました。今ではあのとき出版の依頼をいただいたことをとても感謝しています。

【前編はこちら】ひとり暮らし歴18年 漫画家・たかぎなおこが語る“ネガティブ”な原動力

(船橋麻貴)

たかぎ・なおこ 1974年三重県生まれ。イラストレーター。2003年、『150cmライフ。』でデビュー。著書に『ひとりたび1~2年生』『まんぷくローカルマラソン旅』『ローカル線で温泉ひとりたび』(以上、KADOKAWA/メディアファクトリー)、『ひとり暮らしな日々。』(主婦と生活社)、『浮き草デイズ』『うちの犬(ムク)、知りませんか?』『はらぺこ万歳! 家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん』(以上、文藝春秋)など。最新刊は『ひとりぐらしも何年め?』(KADOKAWA)。公式サイト:「ホクソエム」
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