子育てエッセイ『うちの子になりなよ』発売記念インタビュー(後編)

実親が迎えに来る可能性も 漫画家・古泉智浩が伝える里親の実情

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実親が迎えに来る可能性も 漫画家・古泉智浩が伝える里親の実情

600万円をかけた不妊治療の後、里子を引き取る決断をした漫画家の古泉智浩さんへのインタビュー後編。その子育ての模様と里親制度について赤裸々に綴った『うちの子になりなよ』(イースト・プレス/11月15日刊行)で、古泉さんが伝えたかった“里親”の実態とは?

【前編はこちら】600万円の不妊治療を経て里親に―『うちの子になりなよ』著者・古泉智浩が語る

古泉智浩が語る男性目線の不妊治療

『うちの子になりなよ』(古泉智浩著/イースト・プレス)

里子は、実親から“預かっている”だけ

――不妊治療の果てに里子を預かったということですが、里親制度の存在を知ったきっかけはなんだったのでしょう。

古泉智浩さん(以下、古泉):僕の友人で、お付き合いしている彼女とその連れ子と一緒に住んでいた人がいるんですけど、相手の女性が子どもを置いて突然失踪してしまったんです。でも友人は血の繋がっていないその子を実の子のようにかわいがっていて、「法律相談に行ってその子を自分の籍に入れたいと思っている」って話をしていたんです。僕、そのことにすごいびっくりして、まるで聖人みたいな人だなって思ったんです。その後、自分も離れて暮らしている実子と会ってから子どもが欲しくて仕方なくなって、里親研修を受けることにしました。

――本書の中で「里子と養子は違う」とありましたが、その差を教えていただけますでしょうか。

古泉:簡単に言うと、里子はある一定期間、実の親から預かるだけで、養子はその子を自分の籍に入れ、本当の親子になることです。そのどちらにするのかは実親が子どもを養子として出すのか、里子として出すのかによって決まるんですが、今うちにいる子は里子として出された子どもだった、ということです。里親には養育権はありますが、親権はありません。

――ということは今、古泉さんのお家にいるお子さんも、ゆくゆくは実親の元に戻ってしまうということでしょうか……?

古泉:その可能性はあります。ただ、実の親が引き取りに来る可能性は低いと、里親の先輩からは聞いています。しかしそれでもやっぱり怖いですから、5歳までに今の子を養子に入れて本当の親子になりたいと思っています。そのためには実親の許諾をもらった上で、裁判所の判決を仰がなければいけないんですが、最近の判例では訴えを退けられて、里子として預かっていた子どもを実親に取り返されてしまったというケースもあったそうです。ただその里親さんは、里子の養育をはじめて1年もたたないうちに養子にしたいという申請をしていたようなので、自分たちは焦らず、じっくりと子どもとの絆を深めていって、実親が迎えにきても、子どもが自分たちをえらんでくれるくらいまで関係性を作ったうえで養子縁組をしたいと思っています。

――古泉さんご夫妻が心から里子のお子さんをかわいがっていることが伝わってきたのですが、里親になる前、実の子どもではない他人の子をかわいがれるのか、不安はありませんでしたか。

古泉:今でも実子がほしくないかといったら嘘になるんですけど、すぐ目の前にいて自分になついてくれる子どもが本当にかわいくてたまらないんです。でも、やっぱり里子に会うまではすごく不安でしたね。里子は子どもを中心にした制度で、預かる側の里親は子どもの性別や年齡も選べません。おまけにうちはNICU(新生児集中治療室)に入っていた子だったので、もしかしたらなにか障害を持っているんじゃないか……という不安も正直ありました。おかげさまで今は健康に育っていますが、預かるどうかの決断をした時は、「もう五体満足でなくてもいいから、一刻も早く子どもが欲しい」という感じでしたね。

今はなんとか子育てもできているし、本当にかわいいと思えているので、里子を育てることに自信もついてきていたんですが、最近深い挫折を味わいまして……。

漫画家・古泉智浩が語る里親の実情

別の里子をかわいいと思えなかった

古泉:つい先日児童相談所から、もうひとり赤ちゃんを預かってくれないかと連絡があったんです。うちの子よりも少し年下で、「その年齢の子育てを経験したばかりだし、たぶん大丈夫だろう」と軽く考えて預かることにしたんです。そうしたらその子がめちゃくちゃでっかい赤ちゃんで表情や感情表現にも乏しく、おならばっかりするんです。そのとき、「あ、かわいくないなあ」って思っちゃったんですよ。どんな子がきてもかわいいと思えるだろうと考えていたのに、そんな風に感じてしまった自分にすごくショックを受けてしまって。

結局その子は一時的に預かるという話だったこともあり、児童相談所の方が別の里親さんを見つけて引き取っていったんですけど、我々一家にとっては自信を喪失する出来事でした。次の引き受け先が決まった途端、寂しくなって急激にかわいらしく感じるようになり、別れ際は情が移ってしまって泣いてしまいました。あまりに現金で自分が嫌になりました。

――そんなご経験も踏まえ、今後里親や養子縁組を考える人に向けてアドバイスはありますか?

古泉:この本は、里親入門の決定版になったらいいなと思って書いたんです。子どもを持つ準備なんていつまでたってもできないし、準備不足を気にしていたらずっと子どもなんてできません。なので、里親や養子、子づくりも含め、本当に子どもが欲しいのなら、後先は考えなくてもいいと僕は思っています。また不妊治療中の方であれば、もしものことを考えて平行して里親研修を受講するのもおすすめです。団体や地域によっても異なりますが、里親登録に年齢制限がある場合も。なので、ぜひ早めに行動してほしいです。

(小泉なつみ)

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