日々の納期、朝活、飲み会に友人の結婚式、美容院にFacebookのチェック、デート、両親の生存確認電話……。これ以上ほかの要素が入る隙はないほど、現代女子の“日々のコマ”は埋まっている。でも、ふと、そんな我々の頭を横切る、「子ども」という存在。

今は欲しくないけど、いつかは…。仕事で成果を出したら…。夫が昇進したときには、絶対…。子どもを持つ“いつか”を意識しつつ、確実に忍び寄る妊娠・出産のリミットに怯える人も多いだろう。

そんな妊娠・出産予備軍の皆さんにぜひ読んで欲しい1冊が、漫画家・古泉智浩さんによる『うちの子になりなよ』だ(イースト・プレス/11月15日刊行)。一見は4コマ漫画&日記で綴られる、ほのぼのとした子育て記の本書。だがしかし、古泉夫妻が育てている赤ちゃんは実の子ではなく、里子なのだ。6年で600万円を費やしたという不妊治療を経て里親になった古泉氏に、男目線の子育てや妊活、そして里親制度について聞いた。

古泉智浩が語る男性目線の不妊治療

『うちの子になりなよ』(古泉智浩著/イースト・プレス)

「女性の働きやすい社会」は少子化対策にならない

――古泉さんの本は赤ちゃんを育てることの喜びにあふれていて、とても子どもが欲しくなりました。厚労省の施策より、本書の方が少子化対策に有効だと思います!

古泉智浩さん(以下、古泉):実は僕もそう思ってるんですよ~。少子化対策にはほんとムカついてて。不妊治療に対する補助もまったくない(※1)ですし、国民健康保険の対象に入れるべきだと常日頃思っています。毎回治療費に何十万円もかかって、気がついたらうちは6年で600万円に膨れ上がっていました。ほんと、不妊治療って成果がないとなにも残らないんですよ。ただただ徒労で、損しかない。

あと、「女性が働きやすい社会を」みたいな主張も、少子化対策にとっては本当になに言ってんだって感じですよ。女の人が働きやすくなればなるほど、子どもなんか欲しくなくなるに決まってるじゃないですか。僕の周りにいるパートの女性は、家計のために、お金のために働いているという人がほとんど。もちろん働きたい人は働けばよいと思うんですが、働かずに済むなら働きたくないと思っている人が多いのが現状だと思います。だから女性の仕事を補助するんじゃなくて、女の人が働かなくても子育てができるように、旦那の給料を3割増にしたほうがよっぽど少子化対策になると思います。

――仕事が好きで働いている人はまだいいですけど、共働きしなければ貧困に陥ってしまうケースもありますからね。古泉さんが子づくりしようと思ったきっかけはなんだったんですか?

古泉:僕、今育てている里子以外に、妻とは別の人との間に実の子どももいるんです。でもその子は色々な理由があって離れて暮らしているんですが(編注:この辺りの事情は本書に詳しい)、その実子を見た途端に急激に子どもが欲しくなったんです。

それと40歳くらい、厄年を過ぎた辺りから自分自身の感性がすごく鈍ってきたことを感じて、体力もやる気も、いろんなものがガクンと落ちたんです。感受性もないのに好きなことだけやっていると、死にたくなってくるんですよ(笑)。なんのために生きているのか、お金を稼ぐ意味も見出だせない。でも、それを繋ぎ止めてくれる存在が子どもなのかなって思ったんです。自分の代わりに、どんどん泣いて笑って楽しんでくれるような、そんな存在が欲しかったんです。

古泉智浩が語る男性目線の不妊治療

漫画家・古泉智浩さん

「40代で妊娠した芸能人」で、判断を曇らせないで

――それで、今の奥様と不妊治療に踏み切ったんですね。失礼を承知でお聞きしたいのですが、実子がいらっしゃるということは、古泉さんの精子には問題がないということですよね…?

古泉:不妊治療をはじめたときにはすでに40歳を過ぎていたので、精子の量や運動量が普通のセックスで妊娠できるものではなくなっていたんです。また、治療の初期段階で人工授精をやり過ぎたことを、今はとても反省しています。妻の体に負担をかけてしまったと。ちなみにそのとき妻は32歳くらいでしたが、皆さんには極力、20代のうちの子づくりをおすすめしたいですね。

――本書の中で、「不妊治療は期限や金額を決めて行うべし」とありましたが、具体的にはどのくらいをリミットと考えればいいでしょう?

古泉:妊活の末に40代で出産した芸能人とかいるじゃないですか。そういう成功例に振り回されて、「私もまだイケる!」みたいな根拠のない自信を持ってしまいがちですけど、あれは本当にダメだと思います。報道されていないだけで、妊娠に失敗した人もたくさんいる。なので、35歳くらいをひとつの区切りと考えて取り組んだほうがいいと思います。それこそ不妊症(※2)かなと思ったら、20代でもすぐにお医者さんに行ってほしいです。

――個人的な興味でお聞きしたいんですが、男性にとって子づくりのセックスと性欲でするセックスって、全然違うものですか。

古泉:全然違いますね。今も実子を諦めてはいないので排卵日をねらってしてますけど、子づくりじゃなかったらとっくにセックスレスですよ(笑)。こっちの弾も限られていますから、無駄撃ちするわけにいかないです。

※1:地域により助成有無、内容は異なるので、ぜひお住まいの行政のHPを参照してください。
※2:これまで不妊症は「避妊をせず、健康な男女が2年間セックスをして妊娠できない場合」と定義されてきたが、今年8月、日本産婦人科学会がこの期間を「1年」に短縮するという発表があった。

【後編はこちら】実親が迎えに来る可能性もある 漫画家・古泉智浩が伝える里親の実情

(小泉なつみ)

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)
1969年生まれ。ヤングマガジンちばてつや賞大賞受賞。代表作『ジンバルロック』『チェリーボーイズ』『ワイルド・ ナイツ』、原作漫画『青春★金属バット』、『ライフ・イズ・デッド』『死んだ目をした少年』が映画化。DVD『渚のマーメイド』原作・脚本担当。ブログ:古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』
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