出生率向上の成果も 東京都北区の育児支援と、虐待を防ぐオレンジリボン運動

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出生率向上の成果も 東京都北区の育児支援と、虐待を防ぐオレンジリボン運動

毎日のように報道される児童虐待のニュース。平成26年度に厚生労働省が発表した速報値では、児童相談所が対応した養護相談のうち児童虐待相談の対応件数は8万8931 件。前年度と比較すると1万5166 件(20.5%)増加している。このデータはあくまでも氷山の一角であり、表面化していない虐待が存在することは想像に難くない。

11月は虐待防止の「オレンジリボン月間」

そうしたなか、NPO法人児童虐待防止全国ネットワークが中心となり、企業や地方自治体などが推進している虐待防止の市民運動『オレンジリボン運動』を全国的に展開。子どもへの虐待がない社会の実現を訴えるオレンジリボン運動では、毎年11月は児童虐待防止推進月間(オレンジリボンキャンペーン)と位置づけ、全国で講演会などのイベントが実施されている。

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平成16年9月に栃木県小山市で3歳と4歳の兄弟が虐待を受けた末、川に投げられ殺害された事件をうけて始まった「オレンジリボン運動」のポスター。この運動を象徴するリボンのオレンジ色は、里親家庭で育った子どもたちが「子どもたちの明るい未来を示す色」として選んだといわれている

なかでも、オレンジリボン運動に賛同し、自治体として工夫しながら、さまざまな虐待防止のキャンペーンを展開しているのが東京都北区である。

子育て支援に力を入れる東京都北区

じつは、東京23区のなかでも少子高齢化が進んでいた北区。現在は、「子育てするなら北区が一番」をスローガンに、さまざまな子育て支援策を実施している。その成果もあってか、平成15年に区の過去最低を記録した「0.95」という合計特殊出生率(女性一人が一生のうちに産む子どもの数)が、平成25年には「1.18」まで回復。また、就学前児童の保護者を対象にした子育てニーズ調査では、今後も「北区で子育てをしたいか」という項目に対しては約9割が「はい」と回答している。

その北区は自治体としてオレンジリボン運動をどのように展開しているのか、「北区役所子ども家庭部子ども家庭支援センター」の笹岡主査に話を聞いた。

「北区社会福祉協議会と共催で行っている『オレンジリボンキャンペーン』では、商店街や民生委員、保育士を目指す学生の皆さんの協力を得て、一緒にオレンジのジャンパーを着て、児童虐待防止の啓発グッズを路上で渡しながら、児童虐待の現状、またしつけと虐待の違いを子どもがどう感じるか、大人の立場で考えるしつけで暴力を許してはいけないという話を区民の皆様にお伝えしています。昨年は、『十条銀座商店街』初めて実施して、今年は『霜降銀座商店街』も加わり展開しています」(以下同)

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過去に行われた『オレンジリボンキャンペーン』の様子。11月16日(月)には、十条銀座商店街でオレンジリボンや、児童虐待防止啓発グッズの配布が行われる(画像提供:北区子ども家庭支援センター)

また、キャンペーン期間中は、区内在住で育児中の人や子育て支援に興味関心のある人に向けた講演会も実施。11月14日(土)には、『ルポ虐待――大阪二児置き去り死事件』(ちくま新書)を執筆した杉山春氏による児童虐待防止啓発講演会『あなたが気付くあなたが救えるあなたが支える子どもの未来』や、28日(土)には虐待を受けた子どもを保護する里親の体験発表会『あたたかい家庭で暮らしたい~家族と一緒に暮らせない子どもたち~』も行われ、虐待の現状について知ることのできる機会を設けている。

地域の気配りが虐待を救う一歩になる

当事者だけでなく、コミュニティで虐待を防いでいこうと取り組む北区。オレンジリボン運動の意義について、笹岡主査は次のように語る。

「『児童虐待の防止等に関する法律』(※)が成立して今年の11月で15年が経ちますが、頬が腫れているお子さんが見かけたり、お子さんを罵倒するようなお母さんの声が聞こえるという気づきを通告する窓口として、子ども家庭支援センターに連絡していただくケースも増えています。通告というと子どもを虐待している当事者を、犯罪者にするというようなイメージがありますが、児童虐待なのかどうか、見つけた人が決めることではないです。職員が必要に応じて子育ての悩みを聞き適切な支援をしていきますので、子どもと親を助ける最初の一歩なんです。地域の方々が目配り気配りをすることによって、虐待から救えるんです。通告者の秘密は守られますし、匿名で通告することも可能ですので、まずは連絡を入れてほしいと考えています。そういう意味でも、地域住民の顔が見える場で、オレンジリボン運動を展開することに意味があるのです」
※「児童虐待の防止等に関する法律」が成立したのは2000年5月、施行は同年11月。この防止法の特徴は、超党派による議員立法であるという点で、議員の熱意や民間の声を吸い上げる形での立法という点である。この立法により、第二条に「児童虐待の定義」が初めて定められ、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の四種類とした。また、父母や児童養護施設の施設長など『保護者』による虐待を定義することで、施設内暴力の抑止力になることも目指した。

虐待する親が抱える問題

児童虐待は実親によって行われるケースが9割を占める。そうした親たちの背景には、子育ての悩み、周囲からの孤立、家庭の不和、親自身が虐待を受けて育った、経済的な問題などがあることは見過ごすことはできない。ストレスや葛藤を抱えながら助けを求められない親を非難するのではなく、コミュニティが支援していくことが必要である。北区の場合は子育て支援に力を入れており、産前1カ月前・産後4カ月の子どもがいる家庭に支援者がいないとき、家事支援育児支援の補助を行う『安心ママヘルパー事業』や、一時的に養育することが困難になったときに子どもを施設で預かる『子どもショートステイ・子どもトワイライトステイ事業』を実施。包括的な支援で育児中の家庭を支えている。

かつての日本は、地域ぐるみで子どもを育てようという共通意識が根付いていたが、地域のつながりが薄れる現在、第三者が他人の子育てに関心を持つことは、はばかられる風潮にある。しかし、地域で育児を支えていこうという意識は、虐待から子どもを救う力となり、不幸な事態を防ぐ第一歩となるのではないだろうか。

■関連リンク
オレンジリボン運動
11月14日(土)開催:『あなたが気付くあなたが救えるあなたが支える子どもの未来』
11月28日(土)開催:『あたたかい家庭で暮らしたい~家族と一緒に暮らせない子どもたち~』

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