『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』トークレポート(前編)

高橋源一郎×SEALDsがデモを振り返る「女性スピーチは未来への想像力がある」

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る
高橋源一郎×SEALDsがデモを振り返る「女性スピーチは未来への想像力がある」
高橋源一郎×SEALDsがデモを振り返る

奥から、高橋源一郎さん、奥田愛基さん、芝田万奈さん、牛田悦正さん

安保関連法案に反対する国会前のデモが大きな話題となった学生団体「SEALDs」のメンバーと、『僕らの民主主義なんだぜ』(朝日新聞出版)が10万部のベストセラーとなった作家であり、明治学院大学国際学部教授の高橋源一郎さんの対談集『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』(河出書房新社)が、発売1ヶ月で発行部数8万部を突破し、大きな注目を集めている。販売部数が伸びている、いちばんの理由は「SEALDsって、こんな人たちだったんだ!」という驚きではないだろうか。

本書に登場する「SEALDs」のメンバーは、明治学院大学4年の奥田愛基さんと牛田悦正さん、上智大学4年の芝田万奈さん。奥田さんはお父さんがNHKの番組『プロフェッショナル』で紹介されるほど有名なキリスト教の牧師で、貧困支援に情熱を注いでいる。それゆえ、自宅には行き場のない連続放火犯を招いたりすることもあったという、かなり特殊な家で育った。また、牛田さんは祖父がヤクザで半丁ゲームのイカサマ師で、父親もギャンブルにどっぷりはまり、3000万もの借金をつくり、ついには母親が出て行ってしまい、離婚。その後、父親と暮らしていたが癌でなくなり、一時は戸籍上孤児になるも、今はお母さんと暮らしている。一方、芝田さんは、ニューヨーク生まれ、5歳の時に日本へやってきて、高校生の時にお父さんの転勤で再びアメリカへ。そのままカルフォルニアの大学に2年通い、夏休みに日本に帰ってきたときに、福島県の小高を訪れ、原発から避難しているお母さんたちの研究を始め、2014年5月に日本へ帰国し、現在の上智大学へと編入している。

そんな生い立ちも、性格もバラバラな「SEALDs」の3人と高橋源一郎さんが、10/23に「ブックファースト 新宿店」で行なわれた出版記念イベントにそろって登場した。メディア向けの囲み取材も行なわれ、本を出版するまでの裏側、彼らの今、そして未来が語られた。『ウートピ』では当日のトークを前後半に分けてお届けする。

活動は「青春小説みたい」と評されることも

――現在、8万部以上売れていることについて、率直な感想をお願いします。

奥田愛基さん(以下奥田):本屋に自分たちの本が並んでいることに、喜んでいます。大学の生協に行ったら、安倍首相さんの『美しい国』(文藝春秋)の隣に置いてあって、驚きました(笑)。

牛田悦正さん(以下牛田):いやぁ、びっくりです。起きていることがすごすぎて、人ごとみたいな感じです。俺、すげー(笑)。

芝田万奈さん(以下芝田):あまり実感がないですね。

奥田:牛田君と一緒に活動するのは、大変だったんじゃないかとか、単純におもしろかったと、よく言われます。社会学者の古市憲寿さんからは、青春小説みたいだ、と。

芝田:わたしも、あのふたりと活動するのは、大変でしょ?とよく言われます(笑)。あとは、本の中で「まなちゃんが全然しゃべってない」とか友達に言われることもあるんですけど、いつもはもっと発言してるよね。

高橋源一郎さん(以下高橋):発言の配分に関しては、コーディネーターとして反省しています。3人がちゃんとしゃべることができるように配分したかったんですが、あの日、熱が38度以上あって、キャンセルしようかと思ったくらいでした。実は、途中からボーっとしてよく覚えてないんです。ごめん!本当なら、みんなの意見をもう少しまとめる形で聞きたかったんですが、最後は意識がなかったんです(笑)。

高橋源一郎×SEALDsがデモを振り返る

高橋源一郎さん

芝田:この本は、ものすごく急ピッチで作られた本なんです。

高橋:8月13日、8月14日の2日間で対談して、1ヶ月後には出たんですね。

奥田:しかも、安保関連法案のデモがすごい盛り上がっていた8/30ぐらいに文字直しをして。この時期に本出す事を、本当に後悔しました。

高橋:デモがいちばん忙しかった時期だったよね。

奥田:寝ないで校正作業をして、5回は「これ、無理じゃないですか?」と言いました。

芝田:頑張ってやったねぇ。

高橋:僕も話をいただいて、1ヶ月ぐらいで作るのは無理だと言ったんです。完全なものを作ろうと思ったら、時間をかけて、体調も整えて、準備もして。ああいう
本は、本当はもっときちんと準備をしてやるものなんです(笑)。

奥田:何の話をするかも、当日決めたよね。

高橋:そうだったね。でも、「SEALDs」は民主的な社会を守るための緊急行動だし、緊急出版はふさわしかったのかもしれないね。

奥田:自分たちの行き当たりばったり感が出ていますよね。結果的にいい本になったと思います(笑)。

――「SEALDs」に登場するメンバーは、奥田さん、牛田さん、芝田さんの3人で最初から決まっていたんですか?

牛田:僕は嫌だと言いました。

高橋:いつも嫌だと言っているよね、牛田くん(笑)。

牛田:本に載るほどの人物ではない、と断ったんです。でも、本の編集者がどうしてもと言うから、それじゃあ…・…みたいな感じで(笑)。

奥田:本当は確かもうひとりいたけど、当日空いていたのが、この3人だったんです。

高橋:その日しか全員がそろう日はなくて、そこで対談をしないと本が出なかったんだね。そういう意味では奇跡的な本です。

奥田:見事に生い立ちがバラバラなメンバーがそろったよね。僕も、ふたりのことをよく知らなかった。対談で話を聞きながら、「えー、マジっすか!?」みたいな。おじいちゃんが丁半ゲームのイカサマ師をして指がないとか、きわどいことも書いてるじゃん。戸籍上は孤児だったとか。よく最後まで消されないまま残って、出版されたよね。

女性のスピーチには未来への想像力がある

高橋源一郎×SEALDsがデモを振り返る

上智大学4年の芝田万奈さん

――今回、デモに若い女性が参加するということでも、注目度が高かったと思うんですが、女性だからこそできることはあると思いますか?

芝田:とくにないですね。ただ、女の子がいると、空気感が変わるかなとは思います。それを意識して行動したことはないですが、けどメディア的には女の子がデモをしていることへの珍しさが本当にあるんだなと。それだけ女性がこれまで前に出てこなかったのかも、とかは思いました。

奥田:最初にメディアによく出てたのは、紅子さんとか和香子の方が多かったよね。そもそも、紅子さんのスピーチがfacebookでシェアされて、それで「SEALDs」の名前が広がった。

高橋:本にも書いたけれど、スピーチは男性よりも女性の方がいい。リアリティがあるんだよね。

芝田:女性のスピーチを聞いていると、自分の子どもが生まれた時とか未来を想像して話すことが得意なのかな、と思います。ただ、わたしが7月の終わりにしたスピーチの中で日常に幸せを感じる時は、家に帰ってお母さんがいて、お母さんがごはんを作ってくれている時だ、と話したら大炎上して。

奥田:あ、「お母さん」が、ごはんを作るか問題(笑)。

芝田:そのことを想定していなかったわたしもすごく悪いんですけどね。twitterで批判されて、ネットも大炎上して、やだなーと思って、2ヶ月ぐらいtwitterをやめたこともありました。 わたしはお母さんが女性だろうと、男性であろうと、お父さんが男性であろうと、女性であろうと別にどっちでもいい。個人の自由で選べる社会であればいいなと思っています。ただ、そのことでポジティブにとらえれば、日本社会でセクシズム(女性蔑視)だと反応してくれる人がいることは、良かったなと思います。女性が何か発言すると、一定のことで絶対そういうことが言われる。嫌なことを言われ続けると、病んじゃうと思うんですが、それでも自分が間違っていると思うことに対して、「おかしい」と言い続けたい。だから、今はtwitterも復活して、くだらないツイートばかりだけど、気をつけて発信しています。

本にどんな反響があったか

20151109-kami3

奥から、奥田愛基さん、芝田万奈さん、牛田悦正さん

――本を出すということは、国会前で発言することと比べ、どう違うと思いますか?

牛田:国会前でスピーチするときは、その場にいる人たちに向けてですけれど、本は未来の人に届く、という風に考えています。

奥田:最近驚いたのは、安保法案に反対の人だけではなく、意外と賛成の人も、どっちでもいいみたいな人も本を読んでくれたみたいで、結果的に賛成や反対の意見は変わらないんですけど、民主主義が大事なことはわかった、と言ってくれる人が多かったです。北九州市の地元の友達も、後半は難しくて読めなかった、と言われましたけど買ってくれていました。それから、安保法案賛成派からは「俺たちも、もっと頑張らなきゃな」的なことも言われました(笑)。

芝田:賛成派もデモ、行くわみたいなこと?

奥田:「ありがとう」とかお礼言ったけど、よく考えたら意味わかんないですね。

高橋:みんなを元気づけたのかもしれないね(笑)。

【後編はこちら】「まだ終わってない。落胆もしてない」SEALDsが語る日本社会の未来

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

高橋源一郎×SEALDsがデモを振り返る「女性スピーチは未来への想像力がある」

関連する記事

編集部オススメ

多少の肌トラブルがあっても若さで乗り切れるのは20代まで。用賀ヒルサイドクリニック院長の鈴木稚子先生と一緒に、30代からは自己流の習慣を見直しましょう。

激務の通勤生活、今年で何年目? ふと気づけば、プライベートの暮らしは仕事に押しつぶされてぺちゃんこに。何のために頑張っているのかわからなくなることさえありますよね。「いつまでこんななんだろう」「働き方を変えたい」「でも方法が分からない」この連載では、そんな悩みや迷いをえいやっ!と乗り越えて、“ライフ”に“ワーク”をぐんと引き寄せてしまった彼女たちに話を伺います。

記事ランキング
人が回答しています