大蔵映画株式会社 映像部部長・斎藤豪計さんインタビュー

「日本のピンク映画は繊細さと味がある」製作関係者が語る再興のきざし

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「日本のピンク映画は繊細さと味がある」製作関係者が語る再興のきざし

ピンク映画は若年層を取り込めるか

「ピンク映画」とは、映画製作会社によって製作された、性描写(濡れ場)を第一義とする劇場公開用映画。低予算、短期間で製作されるものの、作家性の強い若手映画監督と、制作会社側が求める性描写がぶつかり合うことで生まれる作品は、クオリティとしても文化としても日本独特のものとして隆盛を誇った。1970年代から1980年代前半にかけては特に数多くの作品が製作されたが1990年代に入るとAVの普及により衰退。10年前で国内に100館以上あったと言われるピンク映画館も、今では半分以下に減少している。

そんなピンク映画に、いま新たな動きが見られているという。1960年代にピンク映画第1号とも言われる『肉体市場』を製作し、今なお日本のピンク映画製作において重要なポジションにいる大蔵映画株式会社の映像部部長である斎藤豪計さんに、ピンク映画の現状や新たに見られている大きな動き、今後の可能性などについてお話を伺った。

デジタル化で見据える海外進出

――大蔵映画さんは昔からピンク映画をたくさん製作されていますが、ピンク映画全盛期と比べると業界の規模はどのように変化しているのでしょうか。

斎藤豪計さん(以下、斎藤):ピーク時は年間で230本以上製作されていたピンク映画ですが、今では40本にまで縮小しています。ピンク映画を専門で製作、配給する映画会社もうちを含めてあと数社にまでなりました。もっともっとピンク映画の良さを知ってもらうために色々と攻めた企画をやっているんですが、古くから劇場に足を運んでいるお客様も高齢化していますし、「ピンク映画」がどんなものかもわからない若い人が多いのも現状です。

ピンク映画の現状と未来

――昨年12月までは、デジタルではなくフィルムで製作されていたとか。

斎藤:そうなんです。なかなかデジタルに移行できずに世間のデジタル化になかなか追いつけなかったのも、ピンク映画を活性化できずにいた要因でした。しかし、昨年末にデジタル化できたということで今後は海外での上映やテレビ放送も視野に入れて動いていく予定です。日本のピンク映画は、海外のポルノ作品にはない繊細さや味があって、クオリティを評価する声は一部ではあるんです。海外で話題になることで、逆輸入という形で日本でもピンク映画に興味を持ってもらう若い人が増えることも、これから狙っていることの1つです。

AVとも一般映画とも、相乗効果があるのがピンク映画

―― 一昔前は、ピンク映画と言えば若手監督の登竜門のような存在だったと聞きますが、今でもそうしたことはありますか。

斎藤:滝田洋二郎監督や、故・若松孝二監督、周防正行監督など作家性の強い映画監督が、一般映画に進出前に技術や表現を学びながら活躍していました。しかし、最近ではこういったピンク映画で下積みを積んでから一般映画を監督するような流れはあまり見られません。

むしろ、映画としての規模は大きくても、会社や権利関係などさまざまな制約の中で自分の作りたいものがなかなか作りづらいという側面もある一般映画から、濡れ場をしっかり作品の中に入れておけばあとは自分の表現したいものをある程度自由に作れるピンク映画を視野に入れる監督も出てきています。「自分が作りたいものが作れればピンクだろうと関係ないよ」と言ってくださる監督は多いです。もちろん、双方に良さがあるので著名な監督がどちらも行き来する流れがこれからもっと起きれば、「この監督、ピンク映画も撮っていたんだ、見てみたいな」「この監督の一般映画はどんな作品だろう」と相乗効果で魅力を知ってもらえたらベストですね。

――女優さんに関してはどうでしょう。

斎藤:ピンク映画に出演される女優さんはほとんどがAV女優さんですが、ピンク映画はあくまで映画なのでAVではあまりすることのないセリフの言い回しや表情などの演技も求められます。濡れ場だけでなくドラマに必要な演技をやってみたいAV女優さんは大変多く、ピンク映画に出演したいという方は多いです。女優さん同士の横のつながりもありますから、誰かがピンク映画に出演して演技が評判になったということが互いに刺激になっているという話も聞きます。

――PCやテレビの画面でしか見たことがないAV女優さんの姿をスクリーンで見ることができるのはピンク映画の特権ですよね。

斎藤:そうですね。劇場では、自分が好きな女優さんの今まで見たことがなかった表情を見られて感動したというファンの方からの声がとても多いです。今は、AV女優さんの認知度や影響力がとても強い。彼女たちが出演してくれることで、ピンク映画のクオリティも話題力も高まりますし、彼女たちもAVではできない演技ができる。こちらでも、そうした相乗効果になっているんです。

女性の鑑賞客も多い

――ピンク映画の女性人気については、どのような現状でしょうか。

斎藤:実は以前から、一般映画館でレイトショーとしてピンク映画が上映されるとなった際には、女性のお客様が多く詰めかけるというのはよくありました。ピンク映画専門館で見るのはやはりハードルが高いけれども、ピンク映画には興味がある。そんな女性たちがたくさんいることは業界でも注目していたんです。もちろん、これは女性だけでなくピンク映画を観たことがない若い男性にも言えることです。

――一般映画館での新しい取り組みを始められたんですよね。

斎藤:今年の8月に「OP PICTURES+」という企画をスタートしました。ピンク映画は、鑑賞者の年齢制限が18歳以上でR18作品なのですが、それよりも性描写を抑えて15歳以上なら鑑賞可能なR15作品を作り、新宿にある映画館「テアトル新宿」さんで2週間のレイトショーを行いました。上映する場所も作品自体も敷居を下げることで、ピンク映画に興味を持ってもらいやすくしたんです。上映してみるとやっぱり満員御礼で、ピンク映画の可能性や手ごたえを感じましたね。

この「OP PICTURES+」は、製作の時点で同じタイトルでR18用、R15用と2本作っています。R18用よりも濡れ場が少ないR15用は、ドラマの部分を増やしているので1つのタイトルですが、異なる作品として見比べることも楽しめるようになっています。これはデジタル化しないとできないことでした。次回の「OP PICTURES+」も、年明けに上映できるよう現在企画中ですが、もっともっと女性や若いお客様に来てもらえるのではないかと期待しています。

■関連リンク
「OP PICTURES+」オフィシャルサイト

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