映画『ミケランジェロ・プロジェクト』買付・配給会社インタビュー(後編)

戦争の“コンテンツとしてのエンタメ化”には意義がある 映画が人々に果たす役割は

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る
戦争の“コンテンツとしてのエンタメ化”には意義がある 映画が人々に果たす役割は
“戦争エンタメ”の意義は何か

映画『ミケランジェロ・プロジェクト』より

『世界一受けたい授業』(日本テレビ/2015年10月24日放送)にて、ナチスから名画を守った男たちの戦いが取り上げられた。話し手は、映画『ミケランジェロ・プロジェクト』(11月6日公開)の原作である『ミケランジェロ・プロジェクト ナチスから美術品を守った男たち』を手がけたロバート・M・エドゼル氏だ。今回『ウートピ』では、同映画の日本における買付・配給を担当する株式会社プレシディオの南野修一氏に話をうかがった。後編では、日本映画を作りづらい日本の現状や、映画が果たす役割とは何なのかを聞いた。

【前編はこちら】歴史を変えた男たち ナチスから美術品を守った「モニュメンツ・メン」とは

戦争映画を作りづらい日本の現状

――買付のために海外の映画祭に行かれることが多いと思いますが、海外の戦争映画と比較した時に日本の戦争映画について思うことはありますか。

南野修一氏(以下、南野):昔から「時代劇と戦争映画はお金がかかる」と言われていて、自国だけの公開で収益を回収しなければならないとなると戦争映画は積極的に製作されない現状があります。一方、ハリウッドでは自国の映画市場が大きい上に世界各国で公開されます。当然予算もかけられるのでがっつり戦争映画を製作できるという側面がありますね。

――内容面ではどうでしょう。

南野:戦争に勝利したのか敗北したのか、甚大な被害が出たのかどうなのかという歴史認識も違いが出る要因だと思いますが、それにしても日本が描く日本の戦争映画の多くは暗くて真面目な、おかたい作品が多いですよね。謝り下手だし開き直り下手なお国柄もあって、戦争に関わった人を英雄化してエンターテイメントにすることなどとても難しい。アメリカが何より凄いのは、映画が政府のプロパガンダにもなればエンタメとして消費する土壌もあるので、本作のように明るいノリの戦争映画が作れるということなんです。これはドイツにも言えることで、第二次世界大戦で日本と似たような境遇だったにも関わらず、その後ヒトラーは多くの映画で描かれてきていますし、コンテンツとして完全にエンタメ化ができている。決して戦争を軽んじるのではなく映画は映画、歴史は歴史と分けることができているんですが、日本ではまだそこまでに行けていないというのが大きいと思います。

“戦争エンタメ”の意義は何か

株式会社プレシディオ・南野修一氏

映画は関心を持つための入り口を広げるもの

――確かに映画以外でも、日本で戦争について表現されるものは、痛々しさ、悲惨さを切々と伝えるものが多いのでとっつきにくさはありますよね。

南野:エドゼルさんが「戦争でも美術品でも、一番問題なのは無関心ということ」とおっしゃっていて、本当にそうだなと思いました。戦争や歴史など社会的な問題について、自ら関心を持って悲惨さばかりを考えることは日常の中ではなかなかできないですよね。もちろん真剣に考えなくてはいけないトピックなのですが、かと言って「考えなさい!」と難しいテーマをダイレクトな形で与えられた時に余裕がある人もなかなかいない。そうなると、関心を持つまでの道のりが遠くなってしまいがちです。

でも、「なんか明るくて楽しそうな映画だな」と思って気軽に観たことで、「第二次世界大戦ってなんだろう」「戦争ってなんだろう」と考えるきっかけになる。関心への入口を誰もが入りやすいように広げることはアプローチとしてすごく良いことですし、映画の持つエンタメの要素がその役割を担うべきです。日本では戦争経験者の方々を考慮したり、思想が入ってきたりなどするので、特に戦争をテーマにした表現でそうした動きをなかなかできないのが現状ですが、日本映画界がそのような方向に向かうことで、人々の戦争への関心も高まっていくのではないかと思っています。

“戦争エンタメ”の意義は何か

映画『ミケランジェロ・プロジェクト』より

■公開情報
『ミケランジェロ・プロジェクト』
11月6日(金)より全国ロードショー
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ジョージ・クルーニー 、 グラント・ヘスロフ
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ビル・マーレイ ほか
©2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

戦争の“コンテンツとしてのエンタメ化”には意義がある 映画が人々に果たす役割は

関連する記事

編集部オススメ

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング
人が回答しています