講演会「自分らしい性を生きる~LGBTIの『私』が命をかける理由~」レポート(前編)

「LBGTI同士も対立がある」活動家が語る、アフリカの同性愛と性差別の現状

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「LBGTI同士も対立がある」活動家が語る、アフリカの同性愛と性差別の現状

アフリカの同性愛と性差別の現状

今年2015年は、「LGBT」(※1)の権利にまつわるいくつかの進歩的なニュースが、国内外を駆け巡った年でもあります。なかでも、6月にアメリカの連邦最高裁判所が、同性婚を合憲と認める判断を下し世界中から注目を浴びました。日本でも4月に渋谷区で、同性カップルを結婚に相当する関係と認める、「同性パートナーシップ条例」が施行されるなど、LGBTの権利向上を期待できる動きがみられています。

各国に根強く残るLGBT差別

一方で、世界に目を向けると、LGBTに不寛容な国と地域も依然として存在。とくにアフリカでは、現在34カ国が同性愛を法律で禁じており、スーダンやナイジェリア北部などでは、死刑に処せられる可能性もあるといいます。また、市民の同性愛嫌悪も根強く、LGBTを標的にした犯罪(ヘイトクライム)も多発。レズビアンやトランスジェンダーの女性の性的指向や性自認の「矯正」を口実にしたレイプ被害も深刻視されています。

さらに、2012年にはジンバブエのムガベ現大統領が、同性愛者に対し「犬や豚にも劣る」と発言、波紋を広げました。こうしたなか、弾圧の危険にさらされながらも、同性愛憎悪が引き金となる犯罪の撲滅や、差別的な法律の改正を目指して活動する人たちもいます。その一人が、現在南アフリカを拠点にする活動家、ファドツァイ・ミュパルツァ氏。女性として生まれ、自らの性的指向と性自認を「クィア」(※2)とするファドツァイ氏から見た、アフリカの同性愛、そして性差別の現状について語る講演会が、国際人権団体アムネスティ日本の主催で10月17日に開催されました。


(※1)レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーといったセクシュアル・マイノリティの総称。「LGBT」のほかにもインターセックス(性染色体や生殖器の形態等が典型的な性別と断定しにくい人)を含め、「LGBTI」と表現されることもある。
(※2)多数派とみなされる性の規範からはずれる人。略称は「Q」。

LGBTI同士にも対立がある

1979年に、ジンバブエで生まれ育ったというファドツァイ氏。「LBGTI」や支援者への政府による弾圧が激しい同国で2002年から10年間にわたり活動を続けるなか、「LGBTI」の権利向上のために活動する組織内においても、古くから根付く価値観による差別が存在すると指摘します。

「たとえば、ジンバブエで活動しているGALZ(Gays and Lesbians of Zimbabwe)という団体では、ゲイが目立っており、レズビアンやバイ セクシュアルの女性は、組織の中で居心地の悪さを感じているように思います。組織の外からのプレッシャーにさらされているなかで、なぜこうした対立が生じてしまうのだろうと考えたとき、理由は『家父長制度』にあると気がつきました。家父長制度というのは、コミュニティのなかで権威を持っているのは男性であるという考え方に基づいています。

ゲイであっても男性であるということは変わらないため、LGBTIというコミュニティのなかでも家父長制を引きずり、女性を抑圧することがありました。女性があるべき女性としての役割を果たし、行動するように求められていることが非常に明確になりました。私たちは性的指向に対する差別だけでなく、性別至上主義や黒人女性として受ける差別にもさらされているんだ、ということが分かりました」(ファドツァイ氏、以下同)

セクシュアル・マイノリティが組織する団体においても、レズビアンやバイセクシュアルの女性たちは複合的な差別と戦わなくてはいけなかったといいます。また、現在アフリカ・レズビアン連合に所属し、国連に対して政策提言も行うファドツァイ氏ですが、こうした矛盾とも受け取れる問題が、グローバルな組織においても起きていることを懸念しています。

アフリカの同性愛と性差別の現状

ファドツァイ・ミュパルツァ氏

「こうした問題は国民の人権を擁護するべき機関でも起きています。たとえば、2011年6月に国連人権理事会は、性的指向と性自認に基づく人権侵害に明確に焦点をあてた決議を採択しましたが、今までにプラスになることは全く行っていないと思います。また、アフリカ人権委員会でも昨年、セクシュアル・マイノリティへの暴力や差別をなくすための決議が採択されましたが、委員会に加盟しているスーダンは人権活動家を脅したり、威嚇することで悪名高い国でもあります。このように人権機関のなかでも、特定の集団の権利の方が、他の集団の権利より重要視されるという状況があるのです。これはより広い社会においてもいえることで、さまざまな差別や暴力的な行為が行われる背景には、私たち人間が“彼ら”と“私たち”という隔たりがあるのだと思います」

そうしたなかでも、アフリカではプラスの変化は確実に訪れているようです。たとえば、モザンビークは植民地時代に「同性愛は自然の摂理に反する」として制定された刑法を129年ぶりに刑見直し、同性愛を非犯罪化しています。

セクシュアル・マイノリティへの差別が色濃く残るアフリカの国々にとっても、2015年はLGBTIの権利向上への道が開けた年だといえるのかもしれません。

【後編はこちら】宗教で“同性愛嫌悪”を取り除く――世界はLGBTI差別をどう克服していくか

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