カルキ・ケクランさんインタビュー

『マルガリータで乾杯を!』より(C)All Rights Reserved c Copyright 2014 by Viacom18 Media Private Limited and Ishaan Talkies

「インド映画」と言えば、日本でもヒットした『ムトゥ 踊るマハラジャ』のように、マッチョなヒーローが大活躍し、その周りでセクシーな美女たちが露出度の高い衣装をまとって歌い踊るというイメージ。それがここ数年変化を見せ始め、『マダム・イン・ニューヨーク』(12)のように、女性を主人公に据え、ドラマで見せる良質な作品が増えている。製作本数で米国を上回り世界最大規模となったインドの映画産業、通称“ボリウッド”は今、変革期の只中にある。

そんなボリウッドから、魅力的なヒロインが日本にやって来た。10月24日公開『マルガリータで乾杯を!』の主演女優、カルキ・ケクランさん(31)。彼女の肌は抜けるように白い。実はカルキさん、インド生まれ・インド育ちのフランス人。民族の壁を越え、インド人女性の役まで幅広くこなす、ボリウッドでも非常にユニークな存在だ。

「肌は白いけれど、心は褐色」

——生まれ育ちはインドですが、ご両親はフランス人。カルキさんご自身のアイデンティティとしては?

カルキ・ケクランさん(以下、カルキ):もちろん私はフランス人ではありますが、フランスには住んだことがないし、自分の国だという感覚はあまりないんです。家族も友人もみなインドにいるので、心は常にインドにある。「肌は白いけれど、心は褐色」だといつも言っています(笑)。

-インドの映画業界で仕事をしていて、肌の色や民族が違うことで経験したメリット・デメリットは?

カルキ:メリットとしては、インドの人は色白の肌が好きなので、それを理由に役を獲得できたこともあるかもしれません。でも、この仕事を始めた頃は、「言葉は話せる?」「スパイスは好き?」みたいな質問をよくされましたし(笑)、監督からは私をキャスティングするイメージができないと言われたこともあります。やはり、最初の頃にもらえたのは、ハーフや完全な外国人の役。今では、私がインドに根付いた人間で、ヒンディー語が話せることも認知されたので、苦労はなくなりました。インドでも北部パンジャーブ地方の人は色白だったりするので、『マルガリータで乾杯を!』もそうですが、最近はインド人としてのキャスティングが多いですね。

ボリウッドは独立した女性を受け入れてくれる社会

-2012年にはデリーで集団強姦事件が起きるなど、報道を見ているとどうしても、インド社会は女性蔑視が根深く、保守的だという印象を持ちます。インドで生活をされていて、女性差別や人種差別を受けた経験は?

カルキ:映画業界について言うと、特にそういった差別は感じません。ボリウッドは独立した女性を受け入れてくれる社会で、目標を持っている女性であれば、それを尊重してくれる空気があります。ただ、社会全体としては、道を歩いていても男性からジロジロ見られますし、男性に声をかけられたり、人混みで掴まれたりした経験もたくさんあります。社会全体が麻痺しているような気がしますね。でも、そういった情況とは闘っていかなくちゃならないし、実際、女性たちが立ち上がってレイプ事件などへの抗議運動なども盛んになっています。事前に防止する空気が次第に生まれていると感じます。

インドではまだ、女性の多様性が理解されていない

カルキ・ケクランさんインタビュー

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-ボリウッド映画というと、セクシーな女性が歌い踊るシーンが多いですが、インドの女性たちもああした描写を純粋に楽しんでいるのでしょうか?

カルキ:やはりあのような映画を見ると、社会が反映されているなと感じます。もちろん、インドでは結婚式でも皆が歌い踊って楽しむ文化なので、ダンスをすることも、セクシーに見せることも否定するわけではありません。ただ、それが映画をヒットさせるための売り物として扱われているという意味で、今後変えていかなくてはいけないと思います。女性というのは、母であり、妻であり、性的関心を引き起こす存在でもあり、娘でもある。つまり、いろんな役割をひっくるめて、それが女性。その多様性がインドではまだあまり理解されていないと感じます。
女性が売り物として扱われているのであれば、男性を同じように扱ってもいいですよね(笑)。映画の中で服を脱いでいく……みたいな。

——『マジック・マイク』のように?

カルキ:それ誰?

——男性ストリッパーが主役の映画です。

カルキ:あとで検索してみるわ!(スタッフがPCで『マジック・マイク XXL』のホームページ画面を見せる)ワォ! 私たちにも、こういうのが必要よ(笑)。

【後編はこちら】女性が“ヒーローのお飾り”に終わらない作品が増えてきた 変わりつつあるインド映画と社会

■作品情報
マルガリータで乾杯を!
脚本・監督:ショナリ・ボース
出演:カルキ・ケクラン、レーヴァティほか
配給:彩プロ
2014年/インド/100分
10月24日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
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●カルキ・ケクラン(Kalki Koechlin)
1984年1月10日、フランス人の両親のもと南インドのポンディシェリーで生まれる。高原の町ウーティ近くの村で育ち、中等教育を終えてロンドン大学に進学。演劇を学び、劇団に入って活躍する。インドに戻り、2009年のデビュー作『デーヴD』で注目を浴びる。日本でも映画祭上映された『人生は一度だけ』(11)や『シャンハイ』(12)、今年8月に公開された『若さは向こう見ず』(13)などで演技派としての地位を確立。プライベートでは11年に『デーヴD』のアヌラーグ・カシャプ監督と結婚したが、13年に別離宣言。

新田理恵

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