ヨシダナギさんインタビュー

ヨシダナギさん、丸山ゴンザレスさん

9月10日放送の『クレイジージャーニー』(TBS系)に出演し、一躍話題の人となったアフリカの少数民族と一緒に写真を撮るフォトグラファーのヨシダナギさん。彼女がなぜアフリカにこだわり、写真を通して何を伝えていきたいのかは、前回のインタビューで掘り起こすことができました。しかし、彼女のアフリカに対する思いは、もっと深く心に根ざしたところにあるそうです。今回もジャーナリストの丸山ゴンザレス氏が聞き手となりお話を伺いました。

【前編はこちら】パンツまで脱いだら歓迎の舞が始まった 裸でアフリカ民族を撮り続ける女性写真家が伝えたいこと

アフリカのイメージが「飢餓」なのはおかしい

ヨシダナギインタビュー

丸山ゴンザレス(以下、丸山):『クレイジージャーニー』の反響、すごいですね。僕も番組を拝見したんですが、スタジオでも脱ぐんじゃないかと思ってドキドキしました(笑)。

ヨシダ ナギ(以下、ナギ):日本では基本NGみたいです。裸はあちらの正装なので「郷に入っては郷に従え」なので。

丸山:反響のなかで気になったのは、いまだにアフリカ=飢餓のイメージを強烈に持っている人がいることですね。

ナギ:エチオピアにかぎらずアフリカ全体に飢餓のイメージがあると思うのですが、行ってみると意外と少なかったです。

丸山:子供の頃に見たチャリティ番組とかでそういうイメージを植え付けられたように思うんですよね。

ナギ:私はそれがすごく嫌で。行ったこともない人がそういうことばかり言って、行った人もそういうことばかり発信するじゃないですか。ホントにごく一部なのに。そういうことは某団体とかが散々やっているので、私はそれとは違うアッパーなアフリカ人やアフリカの面白くて上向きな文化を伝えていければ、多少、アフリカに対するイメージを変えることができるんじゃないかなと思います。アフリカって本当は凄く面白いのにポジティブなことを伝える人が圧倒的に少なすぎるんですよね。

丸山:最近はコンゴのファッショニスタ集団サプールが注目されたりと、アフリカを見直す動きも出てきていますよね。

ナギ:でもまだ少なすぎますね。エチオピア航空の方が言っていたのですが、日本から年間2,500人の日本人しかエチオピアに渡航していないんですよ。「成田空港に就航したばかりだけど、なかなか大変」と嘆いていました。エチオピアの観光資源は世界一おいしいコーヒーと少数民族。世界遺産もあるのでポテンシャルは高いんです。あとは比較的日本人と気質の近い人の良さをアピールしていくしかないかなと思っています。

丸山:エチオピアという国自体を知らない人も多いですよね。

ナギ:年配の人がかろうじてアベベ(エチオピアの英雄と言われる長距離陸上選手。1960年のローマ五輪では裸足で走り、当時の世界新記録を樹立して優勝したことで知られる)を知っているくらいで。若い人はエチオピアがどこかも分からないって人が多いですよね。

全身ヨウジヤマモトで旅をします

ヨシダナギさんインタビュー

丸山:活動の一環として裸をモチーフのひとつにしていますが、逆に服に対しては特別な考えとかってあるんですか? アフリカでの活動を重ねていく中で、服で着飾ることやファッションについての価値観は変わりましたか?

ナギ:全くないです。私は基本的にはアフリカに行くときも日本にいるときと同じロングスカートやワンピースで行くんです。ヨウジヤマモトを着て行ったり(笑)。バックパッカーぽい格好が好きじゃないっていうのもあるんですが、場違いな格好でいると「何だ、コイツ? 何しに来たんだ!?」といった注目も浴びるので危機回避策にもなってます。

丸山:おっしゃっていることはよくわかります。アフリカに対する造詣が深いナギさんですが、子供の頃夢に描いたように、いまでもできることならアフリカ人になりたいのでしょうか? それともアフリカが好きな日本人でありたい?

ナギ:アフリカ人になりたいという思いは年々なくなってきました。見た目を変えることはできないし、国籍を変えても意味がないので。今は日本人としての発信力を活かして、アフリカ人の魅力を伝えていきたいと思っています。

丸山:アフリカに移住して向こうの人と同化したいという人の方が多いと思うのですが、むしろ何度も行っているからこそ自分との違いを受け止められるようになったということなんでしょうか?

ナギ:そうですね。最近は嫌な側面にも目を向けるようになって、嫌いなところも含めて見ることができるようになりました。

アフリカの闇を知ったからこそ伝えたいアフリカの姿

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ナギ:例えば、言い方は極端ですが、アフリカ人って基本的に頭を使わないんですよ。「貧乏だから金が欲しい」って言うから仕事を紹介しても、「何で俺が毎日8時間も働かなきゃいけないんだ」と言ってやらないんです。一定のクオリティのものを作ってと頼んでも、クオリティの低いものを出してくるんですよ。「何で同じクオリティのものを作れないの?」と聞いても「何でそこまでしなきゃいけないの? どれも一緒じゃん」って全く異なるレベルのものを出してくるんです。「これでお金もらえると思うの?」と言ったところで「同じものを作る必要ある?」みたいな返答しかないんです。

「頭を使わないとこのままだよ。もうちょっと考えてみようと」と言っても「それなら身体を売った方がいい」という感じで安易な稼ぎ方や、努力せずに棚からぼた餅を期待している人が圧倒的に多いんです。最初はそれが物凄く嫌でした。エゴかもしれませんが、こちら側がどんなに彼らのことを考えて何かを与えようとしても、大半の人が面倒なことは放棄するという手段に出てしまうので。

2011年頃、NGOのボランティアとしてウガンダで最も貧しい北部の町に行ったことがあるのですが、その村に滞在している間、次々と村人が亡くなっていったんです。でも私、ネガティブなことは極力発信したくないんですよ。

丸山:ウガンダでは具体的にどのような活動をしていたんですか?

ナギ:ウガンダ最北端の貧困の町に日本人のおばさんが一人でボランティアで子供の教育ための図書館を運営していて、人手不足だということでホームステイがてらお手伝いにいきました。

現地に行って思ったのは汚職が酷いのと、子供たちが本の扱い方を知らないんです。「本を読もうね」と言って好きな本を選んでも、本を開いたりじっと座っていることができなくて、本を噛んじゃったりして、破って遊ぶんですよ。怒ってもまたそれをやる。「なんでこの子たちはこんなんなんだろう」と思っちゃいました。折り紙を教えようとして鶴を作ったのですが、普通なら「きれい! かわいい!」ってなるのに目の前で思いっきり破られてしまうんです。教育が一切行われていないので、本は開いて読むものということすら分からないんですよね。

その町には3週間滞在していたのですが、滞在中に住民がどんどん死んでいくんですよ。昨日一緒に過ごした子供が死んじゃって、原因はもちろん分からなくて。お母さんが狂ったように泣き崩れていて、みんな付き添うんですけど、翌日にはそのお母さんが笑って踊っているんですよ。もう周りの浮き沈みの早さについていけなくなってしまって……。それで、次の日違う人が死んでまたみんなで泣くんですけど、やっぱり翌日にはケロッとしているんですよね。命の重みというか考え方が全く違い過ぎて、私には理解できないというか、正直キツイなって思いました。

エチオピア人は最初は絶対遠慮するんです。一回だけ(笑)

丸山:アフリカには原始的な生活が残っているエリアもありますよね。

ナギ:個人的な願望を言うならば、原始的なアフリカはずっと残っていたらいいなとは思います。でもそれは私のエゴで、彼らが生活水準を上げたいと思えば、その文化はいつか廃れていってしまうだろうなとも思っていて、複雑な気持ちです。だから少数民族が残っているうちに写真を撮りたいです。あと、私は少数民族がいないところにも訪問しているんですが、それは普通の小さな田舎町に住んでいる普通の名もなきアフリカ人が大好きなんです。すんごく彼ら、面白くって。

丸山:両方込みなんですね。将来的にアフリカ人と結婚したいなとかは思ってますか?

ナギ:ないですが、子供を養子にするのはいいかなと思います。

丸山:アフリカの少数部族では求婚の際に牛をもらうという風習があるそうですが、ナギさんだったら牛などの動物をもらった経験もあるんじゃないですか?

ナギ:長老にプロポーズされたときに「あげる」と言われたんですけど、もらっても送料の方が高いから……(笑)。ニワトリはもらったことがありますね。さばいて食べちゃいましたけど。面白いエピソードを挙げればきりがないですけど、私からすれば日本人と大差ない部分もいっぱいあるように思うんですよね。

丸山:日本人に似ているということですか?

ナギ:日本人から見るとアフリカ人は基本的に遠慮をしないし、言い方は悪いですけど図々しい面が多々あるんですよね。でも、エチオピア人は「かわいいね」って誉めると「かわいくないよ、私なんて」って日本人みたいに謙遜するんです。他の国の人なら「私が可愛いことくらい知ってるー!」って感じなんですけど(笑)。

エチオピアで貧しい子たちが凄く良くしてくれたのでご飯をご馳走したんですが、皆よく食べるので絶対足りないだろうなと思って「おかわりどうぞ」と言ったら「いいよいいよ、ナギが食べなよ」って、自分たちは手をつけないんです。だから「いいよ、食べてよ」ともう一度私が言うと「え……いいの?」という感じで、一旦遠慮するんです。1回だけ(笑)。他の国なら我先に食べますけどね。でも、遠慮しないアフリカ人もまた私は大好きですけど。

いつかアフリカに恩返しができると思う

ヨシダナギインタビュー

丸山:ナギさんは20代をアフリカに費やしてきたわけですが、これから30歳を迎えるにあたってこの先どうしようと考えていますか?

ナギ:機会があれば南米にも行ってみたいと思っています。いまは資金もスポンサーも足りないんですけど、最終的にやってみたいのは、アフリカの人たちが自力で生計を立てられる基盤を作りたいんです。学校を作るのではなく、教育インフラを整えて大人も子供も一からきちんとした教育をうけられる機会があればなって。都市化の影響で少数民族が持っている文化がどんどん失われていますが、彼らの文化こそ実はお金になるんじゃないかと思うんです。

フィリピンにカオハガン島という島があるのですが、日本人の老夫婦が無人島を買って自分たちの宿を開いて水道や電気を整えて、そこに住む人の医療費や生活費なんかを全部タダにしているんです。その代わり秩序や生活のルールを守ってもらって、奥さんは彼らにアイランドキルト(島民が作るキルト)を教える。年に1、2回日本に帰国したときにそれを販売して、売上を彼らの医療費などにまわす。

丸山:意外と地道な稼ぎ方ですね。

ナギ:でもそれが本になったりして日本からも観光客が来るようになって、宿で働く人も出てきているので食いっぱぐれる人がいないんですよ。こういう環境をアフリカで作れたら、治安も良くなるし、より高い水準の教育をうけることもできるだろうし。私はもともとコミュ障で性格も暗かったんですが、アフリカと関わってきたことで変われたので、彼らに恩返しがしたいんです。

丸山:その夢を実現するならまずはどの国から?

ナギ:最初にやりたいのはエチオピアかな。過去に10回行っていっていることもあり、思い入れも強いので、とりあえずエチオピアで試してうまくいったら他の国で。

丸山:ネットを中心にナギさんの活動に注目が集まっていますが、自分の中での変化はありますか?

ナギ:いい意味で人との縁が増えたかなと思います。最初は漠然といつかアフリカに恩返しがしたいけどできるかなという思いがあったのですが、このままいったらできるんじゃないかと確信に変わりつつあります。

丸山:30歳って世の中の女性にとってはキャリアとか結婚とか、ある種の折り返し地点と言われることもあると思うのですが、ナギさんにとってはどうですか?

ナギ:通過点かな。折り返し地点とは思ってないです。結婚はしてみたいけどあまり気にしていないですね。

(編集部)

●ヨシダ ナギ
1986年生まれ。フォトグラファー。独学で写真を学び、2009年、幼少期より強烈な憧れを抱くアフリカでの撮影をスタート。以来、アフリカをはじめとする途上国の秘境、僻地で現地の民族を写真に撮り様々な媒体で発表する。公式サイト

●丸山ゴンザレス(まるやま・ごんざれす)
1977年生まれ。犯罪ジャーナリスト、旅行作家、編集者。海外の文化、歴史、危険地帯に造詣が深く、アジアやアフリカを中心に取材旅行を重ね、雑誌や書籍などに旅行記を発表している。また、「丸山佑介」の名義で裏社会に関する著書も発表している。ゴンザレスレポート
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