『はじめての不倫学』著者・坂爪真吾さん×『恋愛氷河期』著者・勝部元気さん対談(後編)

一夫一妻制がある限り、不倫は減らない 泥沼離婚を避けるために男女ができること

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一夫一妻制がある限り、不倫は減らない 泥沼離婚を避けるために男女ができること
不倫について議論すべき理由

坂爪真吾さん、勝部元気さん

女性の立場に寄り添って社会学的に恋愛を論じる勝部元気さんの『恋愛氷河期』(扶桑社)と、性の公共を追求する坂爪真吾さんの『はじめての不倫学 「社会問題」として考える』(光文社)をもとに、アラサー世代である両著者が不倫について語りつくす対談。後篇は、若年層の不倫観が変わってきているという話からはじまります。

>>【前編はこちら】不倫って本当にダメなこと? 夫婦が幸せに暮らせる社会のための不倫リテラシー

若年層は不倫に“非日常性”を求めない

ーー前篇でうかがった〈不倫ワクチン〉のお話は、「婚外恋愛としての不倫は泥沼化する」が前提となっていますね。『はじめての不倫学』でも、不倫の中毒性が指摘されていました。これは、いまの若年層にも当てはまるのでしょうか?

勝部元気さん(以下、勝)
:20代独身女性に、既婚者との交際に拒否感を持つ人が増えているという調査結果を見たことがあるのですが、いまの若者は不倫特有の中毒性やドラッグ性にそれほど惹かれていないように感じています。端的にいえば、草食化ですね。危険な恋愛におぼれてみたいとかドキドキしたいとか、そういう願望が薄れている代わりに、恋愛にもっとリアリズムを求める傾向があると私は見ています。

坂爪真吾さん(以下、坂)
:おっしゃるとおり、若い人は性そのものに過剰にコミットすることがなさそうです。対して、50~60代の恋愛観やセックス観はもっとキラッキラしているため、『~不倫学』を読んでもらった50代女性から、この本を読めば読むほど性との関わりがつまらなくなるという厳しい評価をいただきました。不倫の予防とはすなわち、性に付随するめくるめく要素をすべて封じ込めることでもあるので、その世代には無粋なものとして映るのでしょう。若い世代の不倫は、もっと日常化しています。ハイテンションで関わるものではなく、淡々としたものなんです。先日も週刊誌で〈郊外不倫〉としてカラオケボックスやラウンドワンでデートするカップルが特集されていましたが、非日常性を求めない感じが今日的だと感じました。

:かつては経済力のある人ほど不倫に近いイメージでしたが、いまや所得と不倫はリンクしないものになっていると思います。実際に不倫をしている人の話を聞いても、『ほんとうにお金がなくて』という層は一定数いますね。それよりも不倫する・しないは個人の事情のほうに傾いてきているように見えます。それがあるかぎり、不倫が減ることはないでしょう。

坂爪真吾さん

:ワクチンを提案して予防を講じつつも、実は僕も減ることがないというのは同意します。これだけガチッと一夫一妻制が敷かれているかぎり、減りえない。だからこそ無防備なままでいると、いきなり地雷的に不倫と遭遇してしまう。そうすると個人的にも社会的にも大切なものをいろいろと失うことになりかねないので、何かしら解決策を考える必要があります。そのためにもこんなに不倫に対して語彙がなく、語れもしない状況はマズすぎるわけで、もっと公の場で議論しようぜ! と言いたいわけです。

一夫一妻制によって思考停止していないか?

:不倫の問題を議論するときには、一夫一妻制そのものについても話し合いたいですね。一夫一妻制を否定するつもりはまったくないですが、みんなそれが当たり前で当然の理想だと思っているぶん、思考停止してしまっている人は多いと思うのです。このふたつをセットで掘り下げて、自分の価値観がどこにあるかを見極める必要があります。〈気〉が浮つくという個人的な感情の問題と、一対一のパートナーシップという関係性の問題についてどうバランスを取っていくのか、自分はどこまで一夫一婦制を徹底させたいのか……。それらを自覚したうえで、近い価値観を持った人同士で交際なり結婚なりするのがいちばんです。こうしたすり合わせがほとんどないまま結婚へと突っ走るから、不倫という地雷に行き当たって自爆することになるのだと思います。

ーー自分が不倫をほんとうのところどう捉えているのかというのは、考える機会もなければ、結婚前に話し合う機会もないですね。1対1で交際、結婚することが大前提になっています。

:たとえば自分の性自認(自分は男性/女性であるという自己認識のこと)に違和感がある男性がそれを封印して結婚し、何十年も経ってから抑えきれなくなる……。という例もありますね。封印していた時間が長ければ長いほど、いきなり解放させると自分だけでなくパートナーや家族、取り巻く人たちすべてにとって危機的なものとなります。関係の根本を揺るがすほどのズレについて認識、開示することは、早いに越したことはありません。早い段階で自分の価値観と向き合い、自己開示して、理解しあえる者同士で結婚すれば、最悪の自体は回避しやすくなります。

セクシャリティとは違いますが、不倫する・しないも性におけるひとつの傾向と考えると、交際前からじゃんじゃん話しあい、自分の価値観を相手に披露していくべきなのは、同じだと思うです。また、不倫否定派の人なら、なぜ自分が不倫をそんなに受け入れられないのか、そう思うきっかけが何かあったんじゃないか……と立ち止まって自分自身を俯瞰しながら熟考してほしいんです。そうした客観性が身につくと、この問題としっかり向き合えるし、不倫リテラシーも備わると思います。

:その場合、だいたいの人は結婚する前ではなく、結婚した後に客観視しできるようになるという問題がありますね。そうなると〈不倫ダメ、絶対!〉な人と、そうでない人が結婚してしまっていることもあるわけですから、手遅れなのですが……。不倫を考えるうえでポリアモリー(複数恋愛)やオープンマリッジを採り上げましたが、結婚や恋愛のスタイルも多様性が大事なのはいうまでもないことです。だけど、そこで多様性に適応できない人についてはなかなか議論されることがないんですよ。実は、不倫を頭ごなしに否定する人ほど、何かしら問題を抱えているのかもしれませんね。

不倫を避けるには「夫と自分が対等であること」が重要

ーーウートピ読者の中心層であるアラサー独身女性は、不倫について何を考えておけばいいでしょう? いま既婚者と不倫をする可能性もありますし、将来結婚したとき夫が、もしくは自分が不倫をするのではないかという懸念もあります。

:不倫肯定派は社会的地位や経済力がある人が多くて、彼らは言葉巧みかつ饒舌に不倫をポエム化、ストーリー化します。正直なところ彼らによる不倫ワクチン論の悪用も心配です。そうすると無防備な否定派は対抗できなくて、感情論をぶちまけるしかなくなります。私は基本的には不倫否定派ですが、ただ感情で『不倫は許せない!』『道徳的にダメだからダメ』と叫ぶのではなく、社会構造の問題だったり、男女間に横たわるアンフェアの問題から考えたいと思っています。不倫肯定派の男性は『恋するのは自然なことで自由であるべきだ』とよくいいますが、男女が経済的、社会的に対等でない社会状況で彼らに安易な自由を認めることは、不倫したい男性のエゴイズムを利するだけです。将来結婚や出産を望むアラサー独身女性も、まさに既婚者男性と不倫することでアンフェアを被りやすい状況にいますよね。そういう人こそ理論武装をして、安易に不倫に流されないようにしてほしいです。

勝部元気さん

:そして、これは私の『恋愛氷河期』でも強調しているところですが、男女関係において経済力などの傾斜がありすぎると、相手に対する純粋な感情よりも経済力や家庭的であることなどの性別役割の意識で異性を見るようになり、その余波として外に感情の発露としての不倫を求める気持ちが強まります。つまり、結婚後の不倫を避けるためには、正規のパートナーに平等であることをしっかり求めていくのが最善の方法なんです。そのためにも女性にはもっと経済力をつけて生涯所得を保持してほしいし、従来的な恋愛観、結婚観、男女観に縛られないでほしい。そうして女性がエンパワーメントされて男性と対等になれば、いまの夫と合わないなら別れて、より価値観の近いほかの男性とパートナーシップを結ぼう、ということへのハードルも下がりますよね。男女間がよい意味でもっと流動的になるんです。ポジティブかつ流動的にパートナーを変えられる社会なら、男性のエゴイスティックな不倫が減るはずですし、自分自身もまたパートナーに求めるものを不倫という形でアウトソーシングする必要は少なくなるはずです。

:恋愛や結婚がうまくいく人は、恋愛や結婚をしなくても生きていける人だと思います。お互いが経済的にも精神的にも自立しているからです。でもこれって怖い話ですよね、だったら結婚なんてしなくていいという話になってしまいます。不倫も同じ矛盾をはらんでいて、『はじめての不倫学』の取材をとおして〈婚外関係をうまくマネジメントできる人は、結婚生活がうまくいっている人である〉と実感しました。だったら不倫なんてしなければいいのに……。そのジレンマにどう取り組んでいくかが僕の今後の課題ですし、アラサー女性のみなさんにも一緒に考えてほしいです。

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