「駆け込み寺」は歌舞伎町の繁華街にある

「駆け込み寺」は歌舞伎町の繁華街にある

内閣府自殺対策推進室の調査によると、2013年の自殺者数は全国で2万7276人 。単純計算すると1日70人以上の人が自殺を選択していることになります。非常にショッキングな数字ですが、その背景あるDVやいじめ、借金問題といったトラブルは誰しもが抱えうる可能性があります。

「たった一人を救う」をモットーに設立された新宿歌舞伎町の「公益社団法人日本駆け込み寺」。ここには悩みを抱える人々からのさまざまな相談が日夜寄せられます。事務局の瀬沼靜子さんと、運営に携わる井上茉莉花さん に、どんな悩みが寄せられるのか、どのような対応をしているのかについて、お話を伺いました。

自分の経験を人のために生かしたい

――駆け込み寺の設立の背景について教えてください。

井上茉莉花さん(以下、井上):2002年に代表の玄が駆け込み寺の前身である「NPO法人日本ソーシャル・マイノリティ協会」を設立し、その後一般社団法人を経て2012年11月に「公益社団法人日本駆け込み寺」に名前を変えました。これまでに延べ2万件以上の相談を解決してきました。

――代表の玄秀盛氏は4人の父、4人の母がいるという複雑な家庭環境で育ち、その後はキャバレーの店長や葬儀屋などさまざまな職業につかれていたそうですね。それからボランティア活動を始めようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

瀬沼靜子さん(以下、瀬沼)
:2000年に白血病の保菌者であることが判明し、そのころふらっと立ち寄った本屋でたまたま「NPO」や「ボランティア」という文字が目に入ったようです。それ以降、今の自分にできることは何か、今までの経験を人のために生かせないか、ということだけを考え続け、2年後に法人を設立するに至ったそうです。

代表の玄秀盛氏

代表の玄秀盛氏

恋愛、金銭、家庭問題など30~50代女性の相談が多い

――駆け込み寺を訪れる相談者の男女比や年齢を教えてください。

瀬沼:男女比は3:7くらいで、特に30~50代の女性が多いです。

――具体的にはどのような相談が寄せられるのでしょうか。

瀬沼
:相談内容は、恋愛や金銭問題、対人関係に関するものなど、本当に多岐にわたります。つい最近はこんなものがありました。相談者は30代女性で、交際していた上司が破局後にストーカーとなり、数々のいやがらせを受けて会社に行けなくなってしまった、と。

また、家庭のある方ですとDVや家族の問題に関する悩みが多いですね。例えば子どもがひきこもりだとか、暴力を振るうとか。または親戚と相続に関して揉めているという事例などがあります。

――10~20代からの相談はありますか?

瀬沼:10~20代の女性からの相談ももちろんあります。内容は「個人情報をネットに晒された」というSNS関連のもの、「彼氏から連絡が来ない」といった恋愛相談もあります。また、場所が歌舞伎町ですので家出や売春に関する相談案件は途絶えません。

行政の窓口を紹介、無料の法律相談も

――解決に向けて具体的にどのようなお話をされるのでしょうか。

井上:相談者によっては第三者に話をすることで、ご自身で気持ちの整理ができる方もいますが、事案によっては行政や弁護士が必要になってくるので、適切な行政の窓口を提示して差し上げます。また、法律に関わるアドバイスを私どもがすることは禁止されているので、弁護士が必要な場合は法テラスへ案内します。ほかにも、元々ボランティアスタッフをしていた弁護士の方にご協力いただき、月に1度ここで無料の法律相談を行っております。

――相談を受けるのはなかなか大変なことだと思います。

瀬沼:悩んでいる当事者は、問題をものすごく大きなことだと感じているので本当に深刻な状態で相談にいらっしゃいます。でも、よく聞いてみると問題の根っこはみなシンプルで、あらゆる要素が複雑に絡み合って大きく見えてしまっているんです。ですので、私たちは相談者の話を聞いて、問題をほぐしてあげる役割だと思っています。

――解決しづらい相談というのは、どんなものでしょうか?

瀬沼:そうですね、いくらこちらが解決案を提示しても「でも……、だって……」と渋っていたり、「もし失敗したら責任取ってくれるんですか」と言われたりする場合ですね。

また、相談者が当事者ではなく、保護者という場合もです。解決するためには、できるだけ当事者に来てもらうようにしています。例えば引きこもりの子どもに悩んでいらっしゃる親御さん。この場合、親御さんの話を聞くだけでは根本的な解決には繋がりません。引きこもっている本人がここに来ることが最も重要です。これは非常に難しいことですが、本人に少しでも現状を打開したいという気持ちがあれば全力でお手伝いします。実際、50代で引きこもっていた方がここでのボランティアを始めてその後就職したりと、社会復帰を果たした方が過去にはたくさんいらっしゃいます。

土地柄かもしれませんが「ホストに大金をつぎ込む娘を何とかしたい」といった相談も少なくありません。しかしこれは先ほどの例と違って当事者自身がどうにかしたいと思っておらず本人の好きでやっていることなので、こういう場合は解決し難いところです。

>>>【後編はコチラ】被災地だからこそ、第三者に相談したい 歌舞伎町の「駆け込み寺」が聞く東北の心の声

井上こん