主夫芸人・中村シュフさんインタビュー(後編)

「シュフ業」は男性のサバイバル能力を上げる 専業主夫芸人が語る、これからの家族のあり方

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「シュフ業」は男性のサバイバル能力を上げる 専業主夫芸人が語る、これからの家族のあり方
主夫芸人が語るこれからの家族のあり方

中村シュフさん

日頃は「専業主夫」として家庭を守り、またパートでは「主夫芸人」として、活動している中村シュフさん。近年、男女ともに増加しているという「専業シュフ」願望や、これからの夫婦や家庭のあり方について話を聞いてみました。

>>【前編はこちら】男が家事をやったら偉いのか? 専業主夫になった芸人が語る、仕事と家庭を両立する難しさ

「シュフ=楽」だと思うのは違う

――近年、専業主婦になりたい女性が増加傾向にあると言われています。女性だけでなく、若い男性の中にも専業主夫を希望する人がいるなんて話も聞きますが、このような風潮をどう思われますか?

中村シュフさん(以下、中村):実際、後輩芸人に「僕も専業主夫になりたいんです! どうしたらなれますか?」なんて相談されることがあります。専業シュフ志向がダメだとは思わないけど、ただ、「楽そうだから」なりたいんだとしたら、ちょっと心配ですね。

楽したいから、っていう気持ちだとしたら理想(夢、イメージ)と現実とのギャップで新入社員が3か月でやめちゃうのと同じように「シュフもやめたくなっちゃうんじゃないの?」って思ってしまうから。家庭の中の「シュフ」という役割を3か月でやめてしまったら、離婚に繋がることもあるし、また自分が働くってなると家族の形態をガラっとかえることになるし、それはすごくエネルギーの要ることですから。

――シュフ業はそんなに甘くはないと。

中村:そもそもみんなシュフの仕事って知っているようで知らないだろうから、伝えられたら、というのが僕の活動でもあるので、そういう後輩には「シュフってこういうことなんだよ」ってすごく話すし、僕の本も渡します。専業シュフっていうのは1つの選択肢でしかないんで、いいとか悪いではないけど、安易に「シュフ=楽」だと思ってなるのは違うなって思います。

シュフって職業でもありますけど、全員が持っている能力、職能だと僕は考えているのでたとえば奥さんが家で家事10、旦那さんは外で働いて家事0で成り立っている、それで家族が幸せならその家庭は問題ないんです。奥さんが7、旦那さんが3負担して、その家族が幸せならそれでいい。職業や性別で分けちゃうとどうしても固定的になってしまうので、その家でみんなで賄えるように家事全体をシェアしていければいいと思います。

夫婦はコンビで働いて、コンビで家事をしている

――ウートピでは以前、「男性の生きづらさについて」というテーマを扱いました。
男性は平日の日中は会社にいるもの、と思われているために住宅街にいる男性が不審者扱いされるという現象が起こっているようです。中村さんも著書の中で、「平日の昼間に公園にいると不思議がられる」とおっしゃっていましたが、「男性、お父さん=外で稼ぐ人」「女性、お母さん=家にいて家事育児をする人」という長く続いている価値観はこれから先変化していくと思われますか?

中村:「男性=外」「女性=家」って別に昔からある日本の伝統ではないんですよね。戦後とか、高度成長期にその価値観が便利だったから根付いただけで、本来は時代ごとにダイナミックに変わっていくもので、その都度時代に一番いい形を選ぶのが大事です。

でも、「変化する」っていうことを「昔はダメだった」って受け取られないようにした方がいいんじゃないかなって思います。前を否定するのではなくて、「前はこうだったけど、今に合わせてこういうのもある」って思いたいですよね。だから10対0でもいいし、7対3でもいい、「男性は外、女性は家」でいい人たちはいいんです。だけどその人たちがそうじゃない人たちを否定する必要はない。でも、やっぱり男性が家事やシュフ業のことを正しく・詳しく知ると価値観が変わっていくのかもしれません。

――「男性がシュフ業を知ると価値観が変わる」とは?

中村:たとえば定年退職して、奥さんに先立たれた旦那さんが家事をやってみて、初めてその大変さに気付くけど、その前に気付いてほしいんですよ。この本は夫婦向けにも書いていますけど、男性のサバイバル能力を上げる本でもあるんです。男性にはプライドもあるし、「家族を養っていくぞ」って思うのも素敵なことなんですけど、夫婦っていうのは「コンビで働いて、コンビで家事をしている」っていうイメージなんです。

お父さんが働きに行くためにはご飯もあったかい布団もお風呂も必要だし、子どもを育てるためにはお父さんの稼ぎが必要だし。だから1人でっていうことではなくて、夫婦で、家族全員でいい方向にするために全員でよく話し合って変化して、活動していく。それが他人と違っていてもいい、うちがこれならいい、っていうのが大事で、そうじゃないと他のモデルケースに寄せすぎてひずみが生じてしまうこともあるから、自分たちのスタイルを築いて自信を持っていくことが大事だと思います。

何をもって幸せ、って考えたときに僕は自分の家族と親戚縁者くらいが仲良ければいいなっていうミニマムで考えているんで、僕がシュフという形を誰かが批判しようが気にすることはないと思っています。

――批判されたりすることはあるんですか?

中村:このスタイルを批判されることはないけれど、今の社会システムだとどうしても昼間の公園で不審者扱いされたりとか、児童館とか行ってもお母さん方に警戒されているかも、っていうのはありますよね。生きづらいとかまではいかないですけど。だからといってそういう人を募って「デモを起こすか!」なんてつもりは全然ないですよ。

こんな本を書いたけど、「これから主夫を増やそうぜ!」とか「男性はもっと女性の手伝いをしてください!」と言いたいわけではなくて、選択肢が広がったらいいな、くらいの気持ちです。

でも最近、僕の母親が同世代の友人にこの本を配ると、結婚前の娘さんや息子さんに渡してくれているみたいなんですよ。だから結婚前とか、同棲中の男性にも読んでもらえると嬉しいですね。

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