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風俗嬢を対象とした相談事業やセカンドキャリア支援を行っている一般社団法人GrowAsPeople(以下GAP)へのインタビュー。前編では風俗嬢なら誰でも直面する「40歳の壁」についてお伺いしました。後編では、風俗嬢たちの具体的なサポート方法や、実際の風俗嬢200人への取材で分かった新たな事実などをお伺いします。

【前編はコチラ】風俗嬢が直面する「40歳の壁」――相談相手のいない夜の女の子たちのリアル

彼女たちの中に隠れた「しんどさ」を内科的に癒す

――精神面のサポートとして、どんな立ち位置で彼女たちに力を貸しているのですか?

角間惇一郎さん(以下、角間):性風俗に従事している女性たちはなんらかの事情や「しんどさ」を抱えている人が多いです。「私はリストラ」「私はシングルマザー」と、数えきれないくらい。彼女たちの状況をわかりやすく表現すると、「指をドアに挟んで、爪にできた青あざを、マニキュアを塗って隠しているような状態」とでも言いましょうか。つまり、元々抱えている問題や「しんどさ」を、「稼ぎがあるから」何とかしのげているんですね。でも、そのマニキュアがはがれてしまったら、もともと抱えていた問題はあらわになってしまう。この問題の解決方法は2つしかありません。そもそも怪我をさせないこと、もしくはマニキュアをしている間に治すこと。そもそも怪我をさせないのは、子どもを支援するNPO等「ドアにクッションを付ける」ような役割の団体の活動で、「マニキュアをしている間に内科的に癒す」のがうちの団体のセカンドキャリア支援だと思っています。

――「セカンドキャリア支援」が、結果的に彼女たちの内面を癒すということでしょうか?

角間:具体的に現役風俗嬢に参画してもらっているお仕事は、当団体の「収益事業」であるデザインの仕事やイベントコーディネートの仕事、映画のプロモーションなどです。風俗嬢の「セカンドキャリア」に最適な職業として以前から言われているのが介護職などですが、実際は、夜の世界からの固定化された「出口」を作ることは難しいと現場にいて感じています。だから、せめて本人たちの「学び」になる場をたくさん作ることで、徐々に変容してもらえれば、という風なスタンスで活動しています。

――確かに、イベントコーディネートや映画プロモーションなど、華やかで楽しそうなお仕事ですね。

角間:セカンドキャリア支援で難しく感じていることは、その事業におけるライバルが「買い物」や「パチンコ」であることなんです。平均的な風俗嬢は月収のほとんどを短期集中型で稼いでいるのですが、空いた時間でいろいろと考え込んでしまったり、買い物やホストクラブ通いに費やしたりする人も多いです。それなら、その時間を将来への何らかの準備になるよう有効に使って欲しい。しかし、今までの風俗嬢支援のあり方をなぞったような、「一緒にボランティア活動をしよう」というような活動では彼女たちを振り向かせることは難しいわけです。だから、右脳に何か刺激があるような、「ホストや買い物に勝てるような」ブランディングを展開する必要があるのです。なかなか、現実は難しいのですが……。

200人超の風俗嬢への取材でわかったこと

風俗嬢の平均収入は30万円 支援団体代表が200人に調査してわかった、彼女たちの「しんどさ」

――角間さんは、200人以上の風俗嬢へ直接インタビューをなさったとお聞きしました。取材によって新たに分かったことはありますか?

角間:驚いたのは、従事している女性たち自身が、風俗が「労働であるという自覚」があまりないということです。「現在の職業は?(立場は?)」と尋ねると「私は学生」「私はOL」「私は主婦」という風に答えるかたが散見されます。このことから「労働」ではなく「お金を稼ぐためのツール」としてとらえている印象を受けました。

他にも今回の調査で分かったことなのですが、風俗嬢の平均収入は約30万円、最頻値で40万円で、これを大体10日という短期間で稼ぎ出しているようです。とはいえ、これだけを聞いて楽に稼いでると思わない下さい。繰り返しますが誰にでもできる楽な仕事では決してないですから。ただ、ではなぜそれでも風俗でお金を稼ぐのかというと、“風俗が魅力的”というより“他のまともと言われる仕事があてにならない”という、社会のリアルに気がついてしまったからなのではないかと。他の仕事があてにならないのなら、「稼げる」というよりも「時間がある程度自由に使える」そのほうが合理的だということに気がついてしまっている。データ取得時にそんな回答が多かったです。

――思ったよりも平均収入額が少なくて驚きました。

角間:風俗嬢を対象としたネットアンケートを実施したとしても、回答してくれるのはネットリテラシーを持っており、ある種のプロ意識をもった人たちに限られてしまうので、バイアスがかかった情報になりがちです。こういった、バイアスのかかっていない風俗嬢の情報を出すのも、私たちのようにお店側から情報提供を受けることが出来る立場だからこそ可能となってきます。

風俗嬢たちに襲いかかる「リベンジポルノ」の問題

――彼女たちからのリアルな声を聞いたうえで、GAPではこれからどのような取り組みを展開される予定なのでしょうか?

角間:4年彼女たちの声に耳を傾けてきて、新たなニーズとして捉えているのが、「風俗嬢引退後の、ネット上にアップされた写真の削除」です。今年からは、このニーズを満たすための技術開発をやっていきたいと考えています。

風営法の取締により、現在日本では性風俗の広報はネット上、もしくは一部雑誌上でしかできません。雑誌は人気が低下していることもあり、どの風俗店も現在はネット上での広報活動に力を入れています。本人の合意の上なので、現役で働いているときに写真が上がっていることは問題ないのですが、問題は辞めた後。放っておいて消えるものではないので、一部の写真はネット上を漂い続けることになります。

――風俗をやめた後、写真がネット上に残ってしまうと、具体的にはどのような被害が考えられるのでしょうか?

角間:今は、昔と違って検索すると個人があっさりと調べられる時代ですよね。そうすると、これらの写真が「過去働いてたことをばらすぞ」というような、いわゆる「リベンジポルノ」のネタになってしまうのです。実際に、風俗嬢が本名を知られた元リピーター客にこのような脅迫を受けた例があります。

日本のNPOはもっと技術力を持つべき

――技術力を持つNPO、とても新しいと思います。

角間:ライターとストローの共通点はご存知ですか? どちらも障がい者が開発したんですよ。マッチで火をつけるためには両手で火をつけないといけないし、コップで水を飲むためには手がないといけなかったので、これらが生まれたのです。このように、なんらかの生きづらさを抱えている人が、みんなが使うことができる技術を開発する例は、実は多いです。それと同じように、風俗嬢の悩みにこたえながら、一般にも応用ができる技術を開発したいと考えています。従来のNPOの「課題解決」「人権」「相談」といったような、堅いイメージからは離れたいですね。

●一般社団法人GrowAsPeople

ケイヒルエミ