インタビュー,旅行,おひとりさま,趣味

お盆休みが終わり、休暇の余韻に浸っている人がいる一方で、これから時期をずらした夏休みを予定している方もいるでしょう。

年に数回、時間とお金をかけた旅行に、誰と一緒に行きますか? リクルートライフスタイルの調査では、調査開始の2004年から「ひとり旅」が10年連続増加しています(参照:じゃらん宿泊旅行調査2015年)。また、多くの女性誌で「ひとり旅」特集が組まれ、『地球の歩き方』が女子のひとり旅ガイドブックを出版するなど、女性のひとり旅も注目されています。

そこで、「ひとり旅活性化委員会」を主宰、『女ひとり旅読本』シリーズを手掛けるフリー編集者・ライターの山田静さんに、ひとり旅が増加している理由、女性のひとり旅の利点についてお話を聞きました。

    高速バスが女性向けに進化してる

――ひとり旅をする人は増加しているのでしょうか。

山田静さん(以下、山田):女性に限定した旅行者の統計はないのですが、旅行市場が国内も海外も縮小している中で、旅のスタイルとしてひとり旅を希望する人は増えています(参照:第1回JTB総合研究所「旅行マーケットセミナー」第一部「旅行マーケットの現状」)。

――女性のひとり旅が人気なのは、可処分所得が高くて未婚の女性が増えていることも関係しているのでしょうか。

山田:そうですね。それが大前提としてあって、さらに女性が「ひとり旅」をしたくなる理由は2つあると思います。

ひとつは、ハード面。まず「足」が増えました。LCCがすごく増えて、4,000~5,000円で海外に行ける、あるいはキャンペーンを使えば1,000円で沖縄に行けたりもします。国内では高速バス利用者が増えています。規制強化のため、バスの便数自体は減っているんですが、例えば、「ウィラーバス」などは、女性客獲得に力を入れていて、女性の隣は女性と確約されている女性専用エリアの席があったり、シェードがあって個室風になったり、フルフラットになるシートもある。特に、ウィラーバスは新宿住友ビルにターミナルを持っていて、女性向けのパウダールームなどの設備があり、そこで着替えて出かけることもできます。

    ゲストハウスの増加とSNSで「孤独になりすぎない」

――高速バスに女性向けの設備が備わっているなら、もしかしたら新幹線より快適かもしれませんね。

山田:地方の就活生とか、仕事で利用する方もいますが、嵐のコンサートとか、ふらっとひとり旅にも気軽に利用できますよね。それから宿。ゲストハウスが増えて、ドミトリーだと2,000~3,000円、個室も5,000~6,000円ほどで利用できます。国内で有名なのはカオサンゲストハウス、サクラハウスですね。どちらも外国人旅行者向けに始まっているんですが、日本人が使ってもいいわけですよ。作務衣を着たスタッフが、その地方の漬物を出してくれたり、ビジネスホテルに泊まるよりも地域色があって楽しいですよ。そういったゲストハウスは、海外のバックパッカーの利用が多いので、インターネット環境も整っていたり、ひとり旅の受け皿が整っています。

――SNSの普及にも何か関係があるのでしょうか?

山田:インターネットでいうと、今はSNSがあるので、ひとり旅の最中でも孤独になりすぎません。「奈良にいま~す」とアップすれば、「いいね!」とみんなに羨ましがってもらえるし、その土地に詳しい人が見ていたら、「あそこにいいカフェがあるよ」と教えてくれたり。そういうハード面が充実してきたことが大きいかなと思います。

    “みんなと一緒”に疲れた女子

山田:2つめの理由は、気持ちの問題なんですが、ひとりで旅に出たい気持ち、わかりますか?

――友だちと一緒が面倒だとか?

山田:そうです。雑誌の「ひとり旅」「ひとり時間」特集のお手伝いをすることがあるんですが、特集の巻頭に、「ひとりなら、自分の思うように時間を使える。好きな席に座って、好きなものを好きなだけ食べて。なんて素敵」という文章が入るんですね。普段みんなそうしてないんだ、と(笑)。平日のお昼にしたって、“ぼっちメシ”が非難されるこのご時世、職場のみんなでランチに行かなくちゃいけない。しかも、みんながAランチを頼んだら、自分だけカツカレー大盛りを頼みにくい。旅行でも、本当は仏像が見たいのに、周囲の空気を読んじゃって言い出せなかったり。友達は嫌いじゃないんだけど、とにかく解放されたいという気持ちが年々高まっているんだと思います。

――ひとりになって、プラスSNSでちょうどいいんでしょうか。

山田:SNSには何を書いたっていいし、ほどよくみんなと繋がれますからね。若い人だけではなく、50代60代の主婦のひとり旅も増えているんですよ。

――子育てがひと段落している頃ですね。

山田:旅のお供に旦那もいらない。とにかくひとりになりたいんです。高齢の方向けに、旅館でもおひとり様プランが増えています。完全にひとりはハードルが高いなら、クラブツーリズムなどが、「ひとり参加限定ツアー」を企画しています。おひとり様が20人くらい集まるそうなんですが、何のしがらみもないその場限りの仲間だから、みなさん和気あいあいなんですって。

    実務と交流上手の女性はひとり旅向き

――女性はひとり旅に向いているのでしょうか。

山田:女性はひとり旅をすると、元気になる方が多いです。ひとりだと、自分の行動を全て自分の意志で決めるわけですから、日本ではそのこと自体が新鮮という女性も多いでしょう。

京都の八坂神社に行きたいから、現在地からの交通手段を調べて、一番お得なコースで行けたとか。おばんざいが食べたかったけど、ひとりでお店に入る勇気がなくて、結局京都でマックか……とか。会社のみんなと一緒にAランチを頼んで、それが美味しくなかったら、なんとなく他人のせいにしたくなりますけど、ひとり旅は、成功も失敗も全部自分ですから。失敗もそれはそれで面白いですし、ダイレクトな刺激、達成感を感じて元気になる女性は多いですね。

旅は宿選びから、チケット予約に始まり、細々とした実務の積み重ねで、女性はそれが得意な方が多いです。それから、海外だと顕著なんですが、男性のひとり旅に比べて、女性のひとり旅には、周囲の人が心配して声をかけてくれるんですよ。人によってはナンパだったりするかもしれませんが(笑)。そういうナンパを追い払うことができたり、ボラれたらお店の人とケンカしちゃったとか、そういう新しい自分も発見できます。

旅から戻って、以前と同じように職場のみんなに気を遣いながらランチに行っても、「私はみんなと同じじゃなくても大丈夫なんだ」というのがちょっとした自信につながると思います。

>>【後編はこちら】息が詰まる日常から抜け出すには「修行旅」が効く 2泊3日で元気になれる女ひとり旅【実践編】

(穂島秋桜)

●山田静(やまだ・しずか)
フリー編集者・ライター。『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)、『成功する海外ボランティア』(地球の歩き方)、『18歳から23歳までのひとり旅入門』(ジャパンタイムズ)など企画編集多数。旅行業界誌『週刊トラベルジャーナル』にメディア評「山田静のツレヅレなるままに」連載、ベトナム航空機内誌のbookコーナーなども担当。雑誌の旅企画、旅行動向調査や各種旅媒体など、旅に関わる幅広い仕事を手掛けている。1999年には、女子旅を元気にしたいとの想いから「ひとり旅活性化委員会」を結成。
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