オモコロでデビューまずりん誕生秘話

©まずりん/講談社
「モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ」より引用

ゆるくてかわいいタッチの画風ながら、アラサー女性たちの抱える毒を痛快に描写する、ウェブ上の連載まんが『独身OLのすべて』。新作の公開があれば瞬く間にTwitterで拡散し、ファンによるNAVERまとめ(「ほのぼの痛快! WEB漫画「独身OLのすべて」が面白過ぎる」)も作られるなど、ネット界で愛されています。

作者の「まずりん」さんがどんな人なのか気になるところですが、顔写真や詳細なプロフィールの公開を行っていないこともあり、その存在は謎に包まれています。まずりんが描き出すゆるかわなキャラクターや、ニヒルな視点はいったいどこから来たの? ご本人に取材しました。

数年前までは「普通の会社員」

――まずりんさんのプロフィールを教えてください。

まずりんさん(以下、まずりん):ほかほかのアラサー(女)です。2010年10月に「オモコロ」のサイト上で初めてまんがを公開したときは、デザイン会社でデザイナー兼アートディレクターとして働いていました。業務が忙しく、当時はほぼ仕事と家の往復という毎日でした。

もともと「オモコロ」が好きで、あるとき前編集長のシモダテツヤさんのTwitterに「オモコロ最高です。いつも見てます」みたいな感じで軽くリプライを送ったところ、シモダさんからいきなり「スタッフになりませんか?」というメッセージが飛んできました。どうやら私のブログを見たらしいんですが……。当時はらくがきのようなイラストは描いていたものの、まんがを描いたことなんてなかったのでかなり不安でしたが、せっかくのお誘いでしたので、それから不定期で「オモコロ」でまんがを描くようになりました。

ブレイクのきっかけは?

――デビュー当初「オモコロ」では、犬のおまわりさん(いぬポリ)が登場する『ホンワカ村』や肉の気持ちを代弁した『くたばれロハス!おにくたん』など、ほんわかした雰囲気のギャグまんがを執筆されていますね。『独身OLのすべて』とは少し違った作風に感じました。

まずりん:最初は、そんなに毒を全面に出したマンガは描いてなかったんです。ちくりちくりくらいの毒は出してましたが、どちらかというとかわいい押しで。ところがある日、〆切までほとんど時間がとれなかったことがあったんです。ネタを考える時間がなく、普段自分が思ってることをネタにしたら、サクサクと筆が進んだんですよね。

――その回、私も読みました。2012年10月に公開された『独身OLのすべて』の第1回ですよね。すごい反響だったとか。

まずりん:おかげさまで、「オモコロ」がアクセス集中でダウンするという事態になりました。これまでと全く違う反響を見て、「ああ、みんな心の中ではこういう毒を持っているんだなあ」と思いました。

ネタの発想は「世のあざとい女」から

――『独身OLのすべて』では、独身女性3名が世の中に対して毒を吐く様子が痛快に描かれています。何を見てネタを思いつくのでしょうか。

まずりん:あざとい女を見たときですかね。ぶりっこな女とか、サークルクラッシャーな女とか、「私サバサバした女だし男に媚びないから」と女の前で宣言してるくせに実際は男の集団の中でチヤホヤされるのがだ~いすきみたいな女とか……。あざとい女を見つけたときに、これはネタになると感じます。

――確かに、あざとい女は見ていてイラッとします(笑)。まずりんさんの周囲にはどんな「あざとい女」がいたんですか?

まずりん:子どもの頃からたくさんいましたが、初めて深く実感したのは、大学に入って最初のゼミのコンパでしたね。

私は女子高出身なので、男性と何を喋っていいのかわからなかったんです。で、他にも女子高出身の女の子が2人いて、この2人もおんなじ感じだろうなーと思っていたら、まあ見事に手のひら返しというか、女子たちに背を向けて男としか会話せず、他の女の子がその2人に話しかけても、「は? いま男の子と喋ってんだけど? ジャマすんなよ」みたいな感じで軽くあしらうという。大学って、今まで抑圧されてた性欲が一気に爆発する場所なんでしょうね。そういうときに人間の本性が出るんだなあと思いました。

それまでその子たちとは結構行動を共にしていたのですが、そのコンパ以来その子たちはより男性とお近づきになれるグループで行動するようになり、疎遠になりました。その子たちの一人と私は同じ高校出身だったので、彼女が大学入学した瞬間にアイプチをしたことを知っている私の存在が邪魔だったのかも……。座敷女そっくりだったんですけどね、その子。私は同じように毒を吐く一人の友達とばっかり行動してた気がします。そういえば、今も毒を吐き合える女同士で飲みに行くのが大好きです。

――まずりんさんのまんがの面白さは「毒」と「ユーモア」のバランスにあると思います。「毒」だけでは後味の悪さが残りますが、まずりんさんのまんがには笑えるポイントがあるので読んだ後に痛快な気持ちになれるというか……。あざとい女を通じて「毒」を描く際に気を付けていることはありますか?

まずりん:あざとい女を批判しておいてなんですが、世の中にあざとくない女など、ほぼいないと思っています。自分もそうですが、あざとい女に対して毒を吐いてる女だって、絶対にあざとい部分はあるんですよね。
そこで、『独身OL~』の主人公3人は毒を吐くだけでなく、ときに仲間を出し抜いたりするなどのあざとさを持たせています。自分の事は棚に上げて他人に対して毒を吐くだけだとただのイヤなやつですからね。それは違うだろ、アタシ達みんな同じ穴のムジナだろ、と。その辺りで『独身OL~』の3人に共感するという方が多いようです。

【後編につづく】『独身OLのすべて』作者「まずりん」に聞く「ウェブのまんが家」の実情(後編)

まずりんさん

●まずりん
デザイナー兼まんが家兼イラストレーター。現在、講談社モーニング・アフタヌーン・イブニング合同サイト「モアイ」にて『独身OLのすべて』を隔週連載、「オモコロ」でも不定期で執筆中。ツイッターアカウントは@muzzlin。2014年3月20日には講談社より『独身OLのすべて』の単行本が発売予定。

山本 莉会/プレスラボ