『稼がない男。』著者・西園寺マキエさんインタビュー

いわゆる結婚適齢期の年代である女性が、フリーターの男性と付き合うのってアリですか?たいていの人は「なし!」と即答するか、そうでなくても躊躇するのでは。

しかし、そんな世の中の「常識」と異なる道を歩んでいるのが西園寺マキエさん。フリーライターである西園寺さんが、同い年の“フリーター彼氏”ヨシオさんと交際を始めたのは31歳のとき。それから17年の月日が流れました。アラフィフになった2人は今も仲良く交際中。

マキエさんは著書『稼がない男。』(同文舘出版)で、同年代がどんどん結婚していく中、周囲からは呆れたような目で見られることもあったと付き合い始めた当時の心境をつづっています。ですが、年齢を重ね、そろそろ50代が見えてきた年齢になると次第に「2人の関係がうらやましい」と言われることも少しずつ増えてきたのだそう。その理由はいったい何なのでしょうか? ある意味、「プア充」な生き方を地で行くとも言える2人。そんな2人の生活について、西園寺さんに聞きました。

フリーターとフリーライター、不安定なカップル

――お2人の収入はどれぐらいなのでしょうか?

西園寺マキエさん(以下、西園寺):ヨシオは公共団体が運営する運動場で監視員のアルバイト。手取り11万円(月)です。元々、早稲田大学を出て、有名広告代理店に入社しましたが、すぐに退社してしまいました。フリーターを選んだ理由を、本人は「儲けを追求することに罪悪感がある」からだと言っています。

私は、会社員を経験して「会社勤めが性に合わない」と感じ、文章を書くことが好きだったので30代からフリーライターになりました。ライターとしては30代半ばから月に30~40万円を稼げるようになりましたが、やはりフリーランスは不安定ですから、贅沢はできませんね。

――結婚はしていないということですが、同棲もされていない?

西園寺
:私は実家で母と2人暮らし。ヨシオは4万5,000円のアパート暮らし。近所に住んでいて、毎晩のようにヨシオがうちに晩酌をしにやって来る“通い婚”のような状態です。

「大の大人が、数万円のことに涙を流す状況が悲しかった」

――ヨシオさんと付き合って、「苦労」を感じたことはありましたか?

西園寺:実はそんなにないのですが、やっぱり低収入なので贅沢はできませんね。32歳のころ、家で2人で酔っ払って踊っていたら大切なパソコンを踏んで壊してしまったことがありました。修理代と、それまでコツコツ節約してきたことを考えたら泣けてきちゃって。大の大人が、数万円のことでうなだれている状況に悲しくなったことはありましたね。

――ヨシオさんに惹かれたポイントはどこですか?

西園寺
:もちろん、フリーターだからというわけではありません(笑)。ただ、ちょっとズレているというか、予想もしなかった人生観を聞くのが面白かったのかもしれません。自ら進んでフリーターを選んでいる人って、価値観が非凡で個性的な人が多いような気がします。ヨシオの「自分が儲けると、どこかで誰かが儲からなくなる」という倫理観や、「稼ぐより絵を描いて暮らしたい」という浮世離れした考え方の影響で、私も考え方が柔軟になりました。

同じフリーターでも“良し悪し”がある?

――ヨシオさんが“稼がない”のには理由があった、ということですね。それでもフリーターという点は気になりませんでしたか?

西園寺:付き合う前は私も結婚がしたかったから気になりました。彼と過ごしているうちに、稼ぎに関わらず人柄に惹かれていたのであまり気にならなくなりましたけど。フリーターの男性と付き合うならば、相手がなぜフリーターという働き方を選んだのか、納得できないと交際は難しいかもしれません。ただ、私も、100%理屈で納得するわけじゃないですよ。理屈だけで考えてしまったら老後の不安とか、いろいろ問題はありますから(笑)。長い時間話をして、理屈を越えたある種の信頼ができて一緒にいようと思えたなら、お付き合いもうまくいくのではないでしょうか。

――フリーター彼氏とうまくいくのはどんな女性だと思いますか?

西園寺:まず、適度に心配できる人。悲観的過ぎても、楽観的過ぎても共倒れしてしまいそうですから(笑)。あとは、不安定な状況を楽しめる人。彼から予想外の言葉が返ってきても、受け入れて楽しめないと続かない気がします。

――ヨシオさんと結婚したいとは思わないのですか?

西園寺:正直、昔はすごく結婚したかったのですが、ヨシオは「無理して結婚して、そのしわよせが来て疲れるより、今の気楽で幸せな生活ができればいい」という考えだったので、しないままに月日が過ぎていきました。ヨシオは、共通の友人達から結婚を催促されると、「結婚してなくてもオレはマキエを幸せにしてる」と言っていましたね。

今では、愛されているという確信はあるし、同居はしていないもののヨシオはほぼ毎晩私の家に会いに来てくれる。ウエディングドレスを着る夢は、2人で写真を撮ることで叶えてもらいましたし、指輪も交換したし(※筆者注:この日も左手薬指にはヨシオさんとのペアリングが)、40歳を過ぎた頃から、特に結婚したい理由はなくなっちゃいました。逆にヨシオは、今さら「結婚してもいいかも」って言い出してますけど、お互いあまり積極的ではないですね(笑)。

フリーターの男性を好きになったらどうする!?

――厚生労働省が平成24年度に発表したデータによると、近年では非正規で働く人口は労働者全体のうちの1/3を占めているそうです。不安定な職業や低収入などの男性と付き合っていくためのアドバイスをお願いします。

西園寺:フリーターの彼氏がおすすめというわけでは決してありません。やっぱり子どもを持ちたいと思ったら難しいでしょうから。私は子どももいなくて、通い婚だから自由気まま。なんだかいいとこ取りしてるなという世間に対する後ろめたさもあるので、そういうことを気にしないでいられる人がいいのではないでしょうか。

ただ、せっかく好きな人に出会ったのなら、社会的な理由だけで諦めるのはもったいないと思います。

――結婚したい、でもできないという葛藤はどう乗り越えたのでしょうか?

西園寺
:籍を入れなくても長い付き合いの中で信頼関係は築けているし、お金はないけど時間はたっぷりあるので、いつもお互いのことを語り合っているから仲がいい。きちんと結婚して子どもも持っている友人から「2人の関係がうらやましい」と言われることもあるのは、私たちがよく対話をしているからだと思います。この先も形にこだわらず、自分たちなりの関係を作っていければ幸せだと思っています。

全員におすすめはしないんですけど、私はフリーター彼氏と付き合ってみたら、思ったより人生が楽しくなりました。良くも悪くもイレギュラーなことばかりなので、自分の人生についても考えが深まりました。

普通に“稼いでいる男”とでは起こりえない体験ができるのが、デメリットでありメリット。フリーターだけど心から好きになってしまった人がいたら、世間の常識は無視してみるのも選択肢のひとつとして覚えておきましょう(ただし自己責任ですが……)。

●西園寺マキエ(さいおんじ・まきえ)
フリーライター。大学卒業後、大手OL、ハケンOL、零細企業OL、中小ブラック企業OLと様々な働き方を経験したあと、フリーライターに(2014年で19年目に突入)。中学・高校の同級生で、現在フリーターの彼氏「ヨシオ」と、31歳から交際。現在も結婚せずに仲良く関係を続行中。著書に『稼がない男。』(同文舘出版)。
ブログ 西園寺マキエの「フリーターの彼氏と幸せに生きられる?

田中 結/プレスラボ