新垣隆が語る、ゴーストライター事件の真実

撮影/ウートピ編集部

2014年2月に佐村河内守氏のゴーストライターであったことを告白した作曲家、ピアニストの新垣隆さんが『音楽という<真実>』(小学館)を上梓しました。

日本中を激震させたゴースト生活の顛末や、音楽に魅せられた新垣さんの幼少期から現在までをつづった話題の一冊です。

ゴーストライター生活をしていた時に感じていたことや、バラエティー番組への出演理由、恋愛観までをお話いただきました。

“ゴーストライター事件”の真実

――周りからの反応はいかがですか?

新垣隆さん(以下、新垣):読んでいただいた方には、音楽に関することに多く評価をしてくださっています。例の件で注目されていることもあると思うんですが、私の音楽家としての活動に興味を持っていただけたのは嬉しかったです。

――あのゴーストライター事件について、ご著書の中でも「断るチャンスはいくつかあった」と書かれていますが、それでも断らなかったのは?

新垣:しっかりと交渉しないといけない場面を怠ってしまったっていうのと、彼が「とにかくやってくれ」と強く迫ってくるので、受け続けてしまったんです。本当にイヤだったら逃げていたと思うんです。作曲家としていろんな要請を受けているその中の1つだったわけですから。それがすごくいびつな形で肥大化してしまって、結果的にこうなってしまった。これはもちろんダメなことなんですけど……。その時は、作曲依頼を受けるという仕事のひとつだったんです。

――それほど佐村河内さんからの依頼が刺激的だったんでしょうか?

新垣:依頼自体は、ほかの人だったら思いついてもやらないことを彼はやりたいと、実現させたいという、ありえないものだったんです。しかし、語弊がありますけど、そこには一抹の真実もあるわけです。彼個人の要請であっても、多くの人が潜在的に必要としていることを彼が代弁したというのもあったんじゃないかと思うんです。それがすごく悩ましいところなんですが……。

「簡単な依頼だからいい」と言いたくはないんですけども、彼の要請に難しいところがあったが故に、作品を作るという形でひとつの回答を出していたわけです。本当はそんなんじゃダメなんですが。

――ゴーストライターとして生きていた自分と、現在の自分を客観的に見ていかがでしょうか?

新垣:いろいろな意味で問題があり、不自然な形で作曲活動を続けていたのですが、そこから抜け出すことができたのは、私にとって非常に大きなことでした。昔から続けてきた音楽に関しては、演奏したり、曲を作ったりすることを以前と変わらずに続けられたのは何よりも嬉しいことですね。

バラエティー番組への出演は謝罪のひとつ

――最近ではバラエティー番組でも引っ張りだこですが、ご自身ではどのように感じていますか?

新垣:例の騒動を起こしてしまったので、もう公に活動はできないと思っていたんです。しかし、みなさまに支えられて音楽活動を再開できましたし、バラエティー番組などにも声をかけていただいて。自分自身で望んでいたわけではなかったですが、こういった形で擁護していただいて非常にありがたいことだと感じています。

――番組でイジられたりした時に、しっかりと応えていますよね。

新垣:そもそもあのような騒動を起こして、表に出てきたという経緯がありますので……。私が皆様に迷惑をかけてしまったので、ある程度の答え、責任を取るということもあります。音楽家としてまっとうに世間に出ていたら、違っていたのかもしれませんが。

――ちなみに、バラエティー番組への出演も断り切れなかったんでしょうか?

新垣:ええ、基本的にはそうですね。最初の段階では、あまり断ってはいけないかなと思っていたんです、謝罪的な意味も含めて。

「満員電車内で告白」恋愛は積極的な一面も

――本の中では恋愛についても書かれていましたよね。

新垣:はい(苦笑)。そういうコーナーもあったんですけども、あんまりどうってことないですね。本当にこんなこと言ってなんになるんだろうって思ったんですけども……。私の恋愛話なんてなんの参考にもならないですよね。

――長くお付き合いされていた女性がいたと書かれていましたが、アプローチは新垣さんから?

新垣:そうですね。その方はすごく音楽家として優秀であり、とても人として惹かれる部分があったんです。ほとんど病気のようにアタックして。今だったらおまわりさん行きみたいなこともあったような……。向こうが諦めて仕方なく付き合うっていう感じですね。

改めて思うと、新垣に対する佐村河内さんみたいなものですね。強引だったので。結局、彼が私にやっていたことを、自分も知らずのうちにやっていたっていうことかもしれません。多少、ジャンルは違いますけども。

――強引な新垣さんですか。ちょっとイメージがつきにくいですね。

新垣:満員電車の中でも平気で告白していましたからね。「私と付き合ってください」って。みんな呆れてたし、ただの迷惑ですよね。半年くらい思いを言い続けてお付き合いいたしました。30歳になる手前だったのですが、冷静な判断とかそういうものがなかったんですね。でも、そういうものだと思います、恋愛というものは。

新たなスタート地点へ

――現在は「ノー」と言えるように?

新垣:結局、あまり変わっていないんです。自分にできる範囲で、できるできないことを判断していきたいです。私は音楽家なので、作曲や演奏はできるけども、それ以外のことはできないという意思を持っておきたいです。

――では万が一、ドラマ出演の依頼が来た場合は?

新垣:やっぱりダメだと思います。できないですね。音楽を担当するということであれば可能性はあります。出演に関しても音楽のキャラクターだとしたら考える余地はありますね。もし依頼が来たときには迷ってしまいそうなので、来ないことを祈りたいです(笑)。

――今回、真実を語ってみて得たものはありますか?

新垣:騒動後、1年、2年かけてどういうことが自分の身に起きた、起こしてしまったのかを考えようと思っていたんです。それで本として出版してもらえるということで、今までの真相と真実はここにあるんです。書いたことによって、改めてこれから1からやり直せばいいと思えました。音楽に関することもそう、これからが新たな出発。スタート地点に立てたと感じております。

(船橋麻貴)

●新垣隆(にいがき・たかし)
1970年生まれ。作曲家、ピアニスト。桐朋学園大学音楽学部卒。現代音楽のホープとして活躍し、ピアニストとしての評価も高い。2014年2月、佐村河内守氏のゴーストライターだったことを公表し、話題を呼ぶ。それ以降、テレビ出演も多数。CDでは『N/Y』(吉田隆一氏とのデュオ)、『ロンド』(礒絵里子氏とのデュオ)などをリリース。
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